造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受入れるためには、国土交通省から「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける必要があります。
他の分野に比べて、造船・舶用工業分野の手続について解説された記事は少なく、事業者さんからご相談をいただくことが多いです。
そこで、「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続きについて、特定技能制度に特化した行政書士がわかりやすく解説します。
目次
造船・舶用工業分野で特定技能1号を受入れるには
特定技能外国人を受入れるには、外国人が満たすべき基準の他に、受入れ機関が満たさなくてはいけない基準があります。
まずは、特定技能外国人の受入れ機関となるための要件を解説しましょう。
受入れ機関の要件
造船・舶用工業分野で特定技能外国人の受入れ機関となるには、以下の5つの基準を全て満たす必要があります。
- 国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」の構成員になること
- 協議会に対して必要な協力をおこなうこと
- 国土交通省またはその委託を受けたものがおこなう調査または指導に対し、必要な協力を行うこと
- 登録支援機関に外国人の支援を委託する場合は、上記1〜3に該当する登録支援機関に委託すること
- 造船・舶用工業分野の業務を行っているかどうか、国土交通省が確認をおこなうこと
今回解説する「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続きは、この要件の5について証明するための手続きです。
外国人受け入れの流れ
つづいて、特定技能外国人を受入れる流れを、国内に在留している外国人のケースでご紹介します。
① 外国人と受入れ機関が、特定技能雇用契約を締結
② 受入れ機関と登録支援機関が委託契約を締結(支援を委託する場合のみ)
③ 外国人が事前ガイダンスを受講・健康診断を受診
④ 1号特定技能外国人支援計画を策定
⑤ 造船・舶用工業事業者の確認申請
⑥ 外国人が(または申請等取次者として承認を受けた受入れ機関が)地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可を申請
⑦ 審査通過後、地方出入国在留管理局から「在留資格変更許可」を受け、在留カードの交付を受ける
⑧ 在留資格の変更後、各種支援の実施
⑨ 就労開始
なお、登録支援機関に支援を委託しない場合は、受入機関自身で③ガイダンスの実施、④支援計画の策定、⑧支援の実施をおこなう必要があります。
ここで解説する「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続きというのは、⑤にあたる確認申請のことです。
確認がおこなわれると「確認通知書」が交付されますが、⑥の在留資格変更申請の際に確認通知書の写しの提出が必要になりますので、早めに手続きしておくとよいでしょう。
「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続き
では、ここからは本題の「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続きの方法について解説していきます。
この手続きは「国土交通省海事局船舶産業課」に必要書類を郵送して申請おこないます。
造船・舶用工業分野に係る事業を営む者とは
手続きをおこなうには「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」でなくてはいけないので、以下の項目のいずれかに該当する許認可を受けている必要があります。
造船業
① 造船法(昭和25年法律第129号)第6条第1項第1号又は第2号の届出を行 っている者
② 小型船造船業法(昭和41年法律第119号)第4条の登録を受けている者
③ 上記①又は②の者からの委託を現に受けて船体の一部の製造又は修繕を行う者
舶用工業(造船業に該当する者を除く)
① 造船法第6条第1項第3号又は第4号の届出を行っている者
② 船舶安全法(昭和8年法律第11号)第6条の2の事業場の認定を受けている者
③ 船舶安全法第6条の3の整備規程の認可を受けている者
④ 船舶安全法第6条の3の事業場の認定を受けている者
⑤ 船舶安全法第6条の4の型式承認を受けている者
⑥ 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)の規 定に基づき、上記②から⑤までに相当する制度の適用を受けている者
⑦ 工業標準化法(昭和24年法律第185号)第19条第1項の規定に基づき、部 門記号Fに分類される鉱工業品に係る日本工業規格について登録を受けた者の認 証を受けている者
⑧ 船舶安全法第2条第1項に掲げる事項に係る物件(構成部品等を含む。)の製造又 資料3 は修繕を行う者
⑨ 造船造機統計調査規則(昭和25年運輸省令第14号)第5条第2号に規定する 船舶用機関又は船舶用品(構成部品等を含む。)の製造又は修繕を行う者であって 同規則に基づき調査票の提出を行っているもの
⑩ 上記以外で、①から⑨までに規定する者に準ずるものとして国土交通省海事局船 舶産業課長が認める者
申請に必要な書類
「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」のいずれかに該当しているのを確認したら、手続きのための書類を準備します。
必要書類は申請書の他、造船・舶用工業を営んでいると証明するための登記事項証明書などが必要ですが、事業の種類によって添付する書類が異なるため一つずつ解説していきましょう。
登記事項証明書
登記事項証明書とは、会社の商号(会社名)、本店所在地、事業目的、会社設立日、資本金額など、会社の基本的な情報が記載された書類です。
かつて、登記簿という紙の帳簿に記載した登記事項を複写したものを「登記簿謄本」と呼んでいましたが、電子データ化された現在は「登記事項証明書」というのが正式名称です。
交付請求の方法は、
- 最寄の登記所または法務局証明サービスセンターの窓口
- 郵送
- オンライン
請求した証明書の受け取りは、
- 最寄の登記所または法務局証明サービスセンターの窓口
- 自宅や会社へ郵送
初めてオンライン申請をおこなう場合は申請者情報の登録が必要ですが、登録から交付請求までの所要時間は10分ほどですので、法務局へ行く時間がない、という方は郵送やオンラインを利用すると便利です。
その他の添付書類 造船業の③に該当する場合
「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」の造船業の③に該当する場合は、別途、請負契約書等の写しが必要です。
造船法の届出を行っている者又は小型船造船業法の登録を受けている者との間の、 船体の一部の製造等に係る請負契約書の写し(数次の請負契約により、船体の一部 の製造等を行っている場合にあっては、造船法の届出を行っている者又は小型船 造船業法の登録を受けている者から確認申請者に至るまでの各請負契約書の写し)
その他の添付書類 舶用工業の⑧⑩に該当する場合
「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」の舶用工業の⑧⑩に該当する場合は、別途、売買契約書の写しや有価証券報告書等が必要です。
- 造船法の届出を行っている者又は小型船造船業法の登録を受けている者との間の、製造する製品(船舶の用に供されるものに限る。)に係る売買契約書の写し(数次の売買契約により、製造する製品(船舶の用に供されるものに限る。)の供給を行っている場合にあっては、造船法の届出を行っている者又は小型船造船業法の登録を受けている者から確認申請者に至るまでの各売買契約書の写し)
- 確認申請者が現に第2(2)⑧又は⑩に規定する事業を営んでいることがわかる定款又は有価証券報告書
確認申請書
様式第1号の確認申請書に必要事項を記入します。
【様式第1号】造船・舶用工業事業者の確認申請書のダウンロードはこちら。
申請書の1は、先ほど「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者」として造船業または舶用工業の許認可を受ける必要があるとお伝えした事業の分類から、該当するものを記入します。
2には事業内容を記入、3は事業の分類で「造船業の③」「舶用工業の⑧ ⑩」に該当する場合のみ、必要な添付書類について記入します。
造船・舶用工業事業者の確認申請手続き
- 確認申請書
- 登記事項証明書
- その他必要書類(該当する場合のみ)
必要書類をそろえたら、国土交通省海事局船舶産業課長に直接郵送します。
提出先住所
〒100-8918
東京都千代田区霞が関2-1-3
国土交通省海事局船舶産業課
造船・舶用工業事業者の確認通知書の交付
確認申請書を提出し船舶産業課長が「造船・舶用工業事業者である」ことの確認をおこなうと、確認通知書が交付されます。
この確認通知書の写しは、特定技能の在留資格を申請する際に地方出入国在留管理局に提出する書類の一つです。
国内外の外国人を新たに雇用する場合だけでなく、技能実習から移行する場合にも必要になる書類なので、忘れずに申請しましょう。
確認通知書の有効期限
交付された確認通知書の有効期限は、確認年月日から起算して5年です。
確認年月日、有効期限満了日ともに確認通知書に記載があります。
協議会加入申請も同時にできる
はじめに、特定技能外国人の受入れ機関となるための要件として「造船・舶用工業分野特定技能協議会の構成員となること」とお伝えしました。
協議会には、特定技能外国人を初めて受入れる場合に、受入れてから4ヵ月以内に加入する必要があります。
協議会の構成員になるための手続き
受入れ機関が協議会の構成員となる場合の加入手続きは、様式第4号の加入申請書に必要事項を記入し、船舶産業課長に直接郵送します。
【様式第4号】造船・舶用工業分野に係る特定技能外国人に関する協議会の加入申請書(造船・舶用工業事業者用)のダウンロードはこちら。
この「協議会への加入申請書」と「造船・舶用工業事業者の確認申請書」は同時に提出することができます。
特定技能外国人を初めて受入れる事業者の方は、一度に済ませてしまうとラクですね。
以上「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であること」の確認を受ける手続きについて解説しました。
ご参考になれば幸いです。
行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)