特定技能【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】のよくある質問

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野は、特定技能のなかでは飲食料品製造業に次いで受入れ数が多い分野です。

また、新型コロナウイルスの影響による需要の拡大を受け、受入れ人数が引き上げられた分野でもあります。

ここでは、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野のよくある質問に、特定技能に特化した行政書士がわかりやすく回答します。

目次

受け入れ可能な事業所

Q:製造業分野で特定技能を受入れできるのはどのような事業所ですか?

A:特定技能制度が始まった当初、製造業分野は3つの分野に分かれていましたが、2022年5月に「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という1つの分野に統合されました。(長いので、以下「製造業分野」と呼びます)

分野統合後も、この分野で受け入れできる事業所自体に変更はありませんでしたが、その後の制度変更によりめっき関連の事業所も受入れ対象となりました。

製造業分野で特定技能の受入れ対象事業者かどうかを確認するには、次の3つのステップで確認していただくとよいでしょう。

  1. 「日本標準産業分類の大分類 E 製造業の一覧(総務省:平成 25 年 10 月改定)」で事業所の業種を確認
  2. 下の表で製造業分野の受入れ可能な事業所の日本標準産業分類に該当していることを確認
  3. 直近 1 年間に「製造品出荷額等」が発生していることを確認
2194 鋳型製造業(中子を含む)
225 鉄素形材製造業
235 非鉄金属素形材製造業
2422 機械刃物製造業
2424 作業工具製造業
2431 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
245 金属素形材製品製造業
2462 溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
2464 電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
2465 金属熱処理業
2469 その他金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る)
248 ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
25 はん用機械器具製造業(ただし、2591消化器具・消化装置製造業を除く)
26 生産用機械器具製造業
27 業務用機械器具製造業(ただし、274医療用機械器具・医療用品製造業、276武器製造業を除く)
28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
29 電気機械器具製造業(2922内燃機関電装品製造業を除く)
30 情報通信機械器具製造業
3295 工業用模型製造業

受入れ可能な産業分類に該当するかどうかは、企業ごとではなく事業所単位で確認が必要です。

Q:直近1年間で製造品出荷額等が発生しているというのは、具体的にはどういうことですか?

A:製造品出荷額等というのは製造品出荷額と加工賃収入額の合計のことで、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発税を含んだものです。

また製造品の出荷というのは、その事業所の所有に属する原材料によって製造されたもの、原材料を他企業の国内事業所に支給して製造させたもののことで、次の3つのものも含まれます。

  • 同一企業に属する他の事業所へ引渡したもの
  • 自家使用されたもの(その事業所において最終製品として使用されたもの)
  • 委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み、直近1年間中に返品されたものを除く)

加工賃収入額というのは、他企業の所有に属する主要原材料によって製造、あるいは他企業の所有に属する製品や半製造品に加工・処理を加えた場合に、これに対して受け取った・受け取るべき加工賃のことです。

直近1年間に製造出荷額、加工賃収入額が発生している事業所であれば受入れが可能です。

また、事業所自体が受入れ可能な日本標準産業分類に該当していなくても、事業の一部で受入れ可能な産業分類に該当する製造品の出荷額が発生していれば、その製造工程のみで特定技能を受入れることができます。

Q:製造業分野で受け入れ可能なめっき業はどのような事業所ですか?

A:製造業分野では以前からめっき加工に従事することはできましたが、めっき業自体は受入れ可能な産業分類の対象外でした。

めっき業が受入れ対象となったのは2022年10月に制度が変更されてからで、日本標準産業分類のうち溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)、電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)、その他の金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る)が対象です。

金属製品にめっきをおこなう事業所が該当しますが、産業機械に限らず、窓のサッシやアルミ食器などへのめっき加工も対象です。

めっき後に後加工がある場合は、製造品が受入れ可能な産業分類に該当するか、どの産業分類に該当するかによって事業区分を判断します。

例えば、めっき処理後にハンドル部を成形するドライバーなどを製造・出荷する事業所の場合は、産業分類の作業工具製造業に該当するため機械金属加工や金属表面処理の区分で受入れが可能です。

また、サッシを製造する場合、他から支給されたアルミ形材に陽極酸化処理をおこなうだけの場合は、その他金属表面処理業に該当するため金属表面処理の区分で受入れ可能ですが、鋳造から表面処理、組立までおこなう場合は金属製サッシ・ドア製造業となり受入れ対象の産業分類に該当しません。

Q:自動車関係のプレス製品を製造したあと溶接加工により組み立てをおこなっている場合は、金属素形材製品製造業に該当しますか?

A:該当しません。金属素形材製品製造業は、自動車等の機械部品は打ち放しのプレス製品を対象としているため、溶接や機械加工を施した製品の製造は該当しません。

Q:中古の機械類を仕入れて修理や塗装をおこなう場合、機械金属加工で受入できますか?

A:修理のための塗装や溶接、機械加工等の売上は修理料収入であり、修理業となるため機械金属加工での受け入れはできません。

Q:建設関連の会社は、製造業分野で受入れた外国人を溶接作業に従事させることはできますか?

A:建設・建築の代金は建設業収入になるため、製造業分野で外国人を受入れることはできません。

従事できる業務

Q:製造業分野で従事できる業務を教えてください。

A:製造業分野はそれぞれ別々だった製造3分野が2022年5月に1つの分野に統合されましたが、それでも業務区分が19に細分化されており、特定技能外国人が従事できる業務は限定的でした。

その後、2022年8月に業務区分が統合されてからは、一つの区分に含まれる作業が増えたことで従事できる業務の幅が広がりました。

現在の業務区分は「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3つです。区分ごとの業務内容については、下の表で確認してみてください。

業務区分 機械金属加工
業務の定義 指導者の指示を理解し、又は、自らの判断により、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事
業務内容 ・鋳造         ・鉄工         ・塗装
・ダイカスト      ・機械加工       ・電気機器組立て
・金属プレス加工    ・仕上げ        ・機械検査
・工場板金       ・プラスチック成形   ・機械保全
・鍛造         ・溶接         ・工業包装

 

業務区分 電気電子機器組立て
業務の定義 指導者の指示を理解し、又は、自らの判 断により、電気電子機器等の製造工程、 組立工程の作業に従事
業務内容 ・機械加工       ・プリント配線板製造  ・仕上げ
・機械検査       ・プラスチック成形   ・電気機器組立て
・機械保全       ・工業包装       ・電子機器組立て

 

業務区分 金属表面処理
業務の定義 指導者の指示を理解し、又は、自らの判 断により、表面処理等の作業に従事
業務内容 ・めっき        ・アルミニウム陽極酸化処理

 

以前は、同じ事業所で受け入れた外国人でも、機械加工で受入れた者は機械加工だけ、仕上げで受入れた者は仕上げだけにしか従事できませんでした。

それが業務区分の統合により、機械加工、溶接、仕上げなどの一連の作業を1人の外国人におこなわせたり、区分内のさまざまな業務に従事できる多能工を育成したりできるようになりました。

ただし、新しい作業に従事させる場合には、労働災害を防止するために十分な訓練や研修を実施しなくてはいけません。

また、上の表の主な業務に加え、同じ業務に従事する日本人が通常おこなっている関連業務に従事させることも可能です。

関連業務として想定されるのは次のような業務です。

  • 原材料・部品の調達・搬送作業
  • 各職種の前後工程作業
  • クレーン・フォークリフト等運転作業
  • 清掃・保守管理作業

ただし、関連業務は、主な業務に従事しながら付随的におこなうことができる業務です。もっぱら関連業務だけに従事することはできませんので、注意してください。

Q:製造業分野の対象に該当する製造品と該当しない製造品を製造しています。受入れ対象の産業分類で特定技能外国人を受け入れた場合、受入れ対象の産業分類に該当しない製造品の製造作業にも携わることは可能ですか?

A:受入れ対象の産業分類に該当しない製造品の製造作業に従事させることはできません。

前述の「関連業務」については、日本人従業員が通常従事している場合は、特定技能外国人も関連業務に従事することができますが、製造業分野の対象にならない製造品の製造については特定技能外国人は従事できません。

例えば、同じ事業所で働く日本人が、受入れ対象の産業分類の製造作業と対象外の製造作業の両方に従事していたとしても、特定技能外国人が従事できるのは受け入れ対象の産業分類の製造作業だけです。この点、「関連業務」とは異なるので混同しないように注意が必要です。

特定技能外国人の要件

Q:製造業分野で特定技能を取得するための基準はありますか?

A:製造業分野で特定技能を取得するには、技能実習からの移行か試験に合格する必要があります。

それぞれの基準については次のとおりです。

技能実習からの移行

技能実習2号を良好に修了すると特定技能に移行できます。

製造業分野の業務区分に対応した技能実習の職種・作業から移行する場合に、日本語試験と技能試験が免除されます。

試験に合格する

日本語試験と技能試験に合格すると特定技能を取得できます。

日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」
技能試験:「製造分野特定技能1号評価試験」

Q:製造業分野の業務区分が統合されましたが、試験区分も変わりましたか?

A:業務区分の統合にともない、製造分野特定技能1号評価試験の区分も見直されました。新区分での試験は令和5年度から実施予定とされていますが、今のところは19区分で試験が実施されています。

新区分での試験も、従来どおり学科試験と実技試験がおこなわれます。

科試験:「区分ごとの共通問題」「選択科目の問題」
実技試験:従来と同様、19科目から選択

新区分と選択科目については、下の表で確認してみてください。

試験区分 機械金属加工区分 電気電子機器組立て区分 金属表面処理区分
学科試験 区分共通問題 区分共通問題 区分共通問題
選択科目の問題(15科目)

・鋳造
・ダイカスト
・金属プレス加工
・工場板金
・鍛造
・鉄工
・機械施工
・仕上げ
・プラスチック成形
・溶接
・塗装
・電気機器組立て
・機械検査
・機械保全
・工業包装

選択科目の問題(9科目)

・機械加工
・仕上げ
・プラスチック成形
・電気機器組立て
・電子機器組立て
・プリント配線板製造
・機械検査
・機械保全
・工業包装

選択科目の問題(2科目)

・めっき
・アルミニウム陽極酸化処理

実技試験 選択科目の問題(19科目)

・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・金属プレス加工 ・鉄工 ・工場板金 ・めっき ・アルミニウム陽極酸化処理 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・電子機器組立て ・電気機器組立て ・プリント配線板製造 ・プラスチック成形 ・塗装 ・溶接 ・工業包装

試験の難易度は現在の試験と同程度が予定されているため、(技能実習2号で受験する)技能検定3級程度ということになります。

現在の試験は業務区分と同様の19区分に分かれており、実技試験は溶接区分のみ製作等作業方式で実施されています。

Q:技能実習で機械加工職種・普通旋盤作業から無試験で移行できるのはどの区分ですか?

A:技能実習2号の機械加工職種・普通旋盤作業から特定技能に移行する際に試験が免除になるのは、機械金属加工区分と電気電子機器組立て区分です。

両方の区分で特定技能を取得できるので、機械金属加工の事業所から電気電子機器組立ての事業所へ転職することも可能です。

また、旋盤作業で技能実習2号を修了した場合、同じ区分内であれば旋盤以外の作業に従事することができます。その場合、労働災害を防止するために訓練や研修を実施しなくてはいけません。

技能実習2号から移行可能な特定技能の業務区分については、下の表で確認してみてください。

技能実習2号 特定技能の業務区分
職種 作業
鋳造 鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
機械金属加工
鍛造 ハンマ型鍛造
プレス型鍛造
機械金属加工
ダイカスト ホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト
機械金属加工
機械加工 普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
機械金属加工/電気電子機器組立て
金属プレス加工 金属プレス 機械金属加工
鉄工 構造物鉄工 機械金属加工
工場板金 機械板金 機械金属加工
めっき 電気めっき
溶融亜鉛めっき
金属表面処理
アルミニウム陽極酸化処理 陽極酸化処理 金属表面処理
仕上げ 治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ
機械金属加工/電気電子機器組立て
機械検査 機械検査 機械金属加工/電気電子機器組立て
機械保全 機械系保全 機械金属加工/電気電子機器組立て
電子機器組立て 電子機器組立て 電気電子機器組立て
電気機器組立て 回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線設計
機械金属加工/電気電子機器組立て
プリント配線板製造 プリント配線板設計
プリント配線板製造
電気電子機器組立て
プラスチック成形 圧縮成形
射出成形
インフレーション成形
ブロー成形
機械金属加工/電気電子機器組立て
塗装 建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
機械金属加工
溶接 手溶接
半自動溶接
機械金属加工
工業包装 工業包装 機械金属加工/電気電子機器組立て

受入れ機関の要件

Q:製造業分野で特定技能を受入れるための要件はありますか?

A:製造業分野で特定技能を受入れるには、次の4つの基準を満たす必要があります。

  • 受入れる事業所が、受入れ対象の産業分類に該当している
  • 受入れる事業所で、直近1年間に製造品出荷額等が発生している
  • 外国人を支援する体制が整っている
  • 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会の構成員となる

Q:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への入会は必須ですか?いつ入会すればよいですか?

A:必ず受入れ協議・連絡会へ加入しなくてはいけません。また、出入国在留管理庁に特定技能1号の在留資格の申請をする前に、受入れ協議・連絡会の構成員となる必要があります。

特定技能外国人を受入れるには、どの分野でも分野別協議会の構成員となる必要がありますが、加入時期についてはほとんどの分野で初めて特定技能外国人を受入れてから4ヵ月以内と定めており、製造業分野でも以前はそうでした。

しかし製造業分野では、入管に特定技能の在留資格の申請をした業種と事業内容の適合性が確認できずに受入れ協議・連絡会へ入会できないという事例が起きていました。

そこで受入れを円滑におこなうため、2021年3月に受入れ協議・連絡会の入会手続きが一部改正され「在留資格申請の前に協議・連絡会の構成員となること」となったのです。

受入れ協議・連絡会の役割は、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受入れられるように制度・情報の周知、法令遵守の啓発や必要な対応をおこなうことです。構成員はそのために必要な協力をしなくてはいけません。

受入れ見込み数

Q:製造業分野が統合されてから、受入れ見込み数に変更はありましたか?

A:制度開始当初より、上限が引き上げられています。

製造業分野が統合される前の、制度開始から5年間の受入れ見込み数は以下のとおりでした。

素形材産業分野・・・21,500人
産業機械製造業分野・・・5,250人
電気・電子情報関連産業・・・4,700人

しかし、産業機械製造業分野の受入れ人数がこの数字を超えてしまい、2022年4月に新規の外国からの受入れに一時停止の措置が取られました。

これを解決するために2022年5月に製造3分野が1つに統合され、それぞれに割り当てられていた受入れ見込み数の合計31,450人が新たな製造業分野の受入れ上限となりました。

現在は、新型コロナウイルスの影響により製造業の需要が拡大し、特定技能外国人の受入れが大幅に増えていることをふまえて、2024年3月までの受入れ見込み数が49,750人まで引き上げられています。

2022年12月時点の製造業分野の受入れ人数は27,725人なので、まだ2万人ほど余裕がありますね。

 

以上、特定技能製造業分野のよくある質問について回答しました。

ご参考になれば幸いです。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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