【行政書士が解説】登録支援機関になるための手続き

「外国人の人材紹介業を始めたい」

「特定技能外国人の支援をおこないたい」

「当社は登録支援機関になれますか?」

外国人雇用のサポートをおこなっている当事務所では、このようなご相談をいただく機会が多くあります。

2022年12月末の時点で、特定技能の在留資格で日本に在留している外国人は130,915人まで増加しました。

委託を受けて特定技能外国人の支援業務をおこなうためには、法務省から登録支援機関としての登録を受ける必要があります。

この記事では、登録支援機関になるための要件や手続きについて、特定技能を専門とする行政書士がわかりやすく解説します。

登録支援機関とは

そもそも、登録支援機関とは何でしょうか。

登録支援機関とは、特定技能制度の一部です。

「特定技能」は2019年に始まった新しい在留制度ですが、この「特定技能」は他の就労系の在留資格と比べると大きな特徴があります。

それは、雇用した外国人に対して「支援」をおこなうことが義務付けられている、という点です。

この「支援」は、本来は外国人を雇用する受入れ機関(特定技能所属機関といいます)がおこなうものですが、受入れ機関が支援をおこなうためには法令上の要件があり、要件を満たしていないと支援をおこなうことができません。

また、要件を満たしているばあいでも、本来の業務で忙しくて支援まで手が回わらない、ということも多いです。

そこで、登録支援機関に支援の全部を委託する場合は、受入れ機関に課されている支援義務が免除されます。

法務省から「支援を適正におこなうことができる」と認められた機関が、登録支援機関です。

つまり、登録支援機関とは「受入れ機関に代わって」特定技能の支援をおこなう機関です。

支援の内容は10項目あるので、簡単に内容をご紹介します。

1号特定技能外国人支援計画の内容

    1. 事前ガイダンスの提供
      在留資格の申請前に労働条件や入国手続きについて説明をおこないます。
    2. 出入国する際の送迎
      入国時、空港と受入れ機関の事業所、または住居への送迎をおこないます。
    3. 住居の確保・生活に必要な契約支援
      住居探しの補助や連帯保証人になる、社宅を提供する、銀行口座の開設やライフラインの契約の補助をします。
    4. 生活オリエンテーション
      日本で円滑に生活できるよう、交通機関の利用方法や生活ルール・マナーなどについて説明します。
    5. 公的手続き等への同行
      住居地に関する届出、社会保障や税に関する手続きに同行します。
    6. 日本語学習の機会の提供
      日本語教室の情報提供や、入学手続きの補助をおこないます。
    7. 相談・苦情への対応
      仕事や生活に関する相談や苦情に対応し、外国人が理解できる言語で助言をおこないます。
    8. 日本人との交流促進
      地域住民との交流の場に関する情報の提供、行事への参加手続きの補助をおこないます。
    9. 転職支援
      受入側の都合により雇用契約を解除する場合、転職活動の補助や有給休暇の付与、行政手続の情報提供をおこないます。
    10. 定期的な面談・行政機関への通報
      外国人やその上司と定期的に面談をおこない、労働基準法に違反している場合は行政機関に通報します。

登録支援機関になるための要件

さて、支援の内容がわかったところで、具体的な要件について見てみましょう。

登録支援機関になるためには、どのような要件が必要なのでしょうか。

まずは法令上の要件を列挙して、その後詳しく解説します。

登錄の要件

    1. 支援責任者および1名以上の支援担当者を選任していること
    2. 以下のいずれかに該当すること
      1. 登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に中長期在留者の受入実績があること
      2. 登録支援機関になろうとする個人または団体が、2年以内に報酬を得る目的で、業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること
      3. 選出された支援責任者および支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有すること
      4. 上記のほか、登録支援機関になろうとする個人または団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること
    3. 外国人が、十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること
    4. 1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人または技能実習生のお行方不明者を発生させていないこと
    5. 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させないこと
    6. 5年以内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為をおこなっていないこと

以上が登録支援機関になるための要件です。

以上の要件の中で、実務上のポイントは「2 以下のいずれか(a~d)に該当すること」です。

以下、a~dを詳しく解説します。

a 2年以内に中長期在留差の受入実績があること

登録支援機関になろうとする者が、過去二年間に法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。ハにおいて同じ。)をもつて在留する中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行つた実績がある者であること

引用:e-Gov「出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の21」

「法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格」というのは、一般的に「就労ビザ」といわれるものです。

具体的には以下の在留資格が該当します。

外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動

留学生は資格外活動許可を得るとアルバイト(就労)ができるようになりますが、上記在留資格には含まれません。

したがって、留学ビザの外国人をアルバイトとして雇用した経験だけでは、この要件には該当しません。

また、永住者や日本人の配偶者等の身分系在留資格は就労に制限がありませんが、これらの身分系在留資格も上記在留資格には含まれません。

整理すると「過去2年間に、入管法等の法令を遵守し、上記の在留資格の外国人を1名以上、受入れまたは管理をおこなった実績が必要」ということです。

では、事業を始めたばかりで実績がない場合はどうしたらいいのでしょうか。

起業したばかりで実績がない場合は、自社で外国人労働者を雇用するなどすれば要件を満たすことができます。

なお、この要件には、人材派遣会社や技能実習の監理団体などが該当すると想定されます。

人材派遣会社は自社で雇用した人材を派遣しているので認められるのに対し、有料職業紹介事業者は自社で雇用していないため「受入れ・管理をおこなった実績」とは認められないでしょう。

また、技能実習の監理団体の場合、改善命令等を受けていると技能実習法の規定を遵守していないとみなされるため「受入れ・管理を適正におこなった」と認められません。

b 2年以内に業として相談業務に従事した経験を有すること

登録支援機関になろうとする者が、過去二年間に報酬を得る目的で業として本邦に在留する外国人に関する各種の相談業務に従事した経験を有する者であること

引用:e-Gov「出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の21」

「外国人に関する各種の相談業務」というのは、主に以下のような相談業務を在留外国人に対しておこなった場合を想定しています。

  • 法律、労働、社会保険に関する相談
  • 官公署に提出する書類の作成や手続きに関する相談

aとbの要件を比べてみると、aでは就労系在留資格の外国人に限定されているのに対して、bでは「本邦に在留する外国人」とだけ書かれています。

したがって、bの要件では在留資格の種類は問われません。

留学ビザや身分系ビザの外国人に対する相談業務の経験でも該当します。

相談業務の件数は指定されていませんが、1〜2回相談をおこなっただけでは認められない可能性があります。

それは、施行規則で「各種の相談業務」と定められているため、件数よりも内容の異なる相談業務に幅広く従事した経験が求められるからです。

一方で、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などの士業者(法人を含む)が知見に基づき業務として相談業務をおこなった場合、件数や幅にかかわらずこの要件を満たすと認められます。

ただし士業者であっても、業務として相談業務をおこなった実績がなければこの要件を満たしているとは認められません。

また「報酬を得る目的で」と定められていることから、個人的な相談やボランティア活動、無償でおこなった相談では認められません。

c 過去5年間に2年以上生活相談業務に従事した経験を有すること

登録支援機関になろうとする者において選任された支援責任者及び支援担当者が、過去五年間に二年以上法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもつて在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した一定の経験を有する者であること

引用:e-Gov「出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の21」

a、b、dが、「登録支援機関になろうとする者」、つまり登録申請の申請者である法人または個人に課された要件であるのに対して、cは、「支援責任者及び支援担当者」に課された要件です。

申請者である法人または個人が、a、b、dの要件を満たしていない場合は、申請者に在籍する者がcの要件を満たすかどうかを検討することになります。

代表取締役等の役員等を、支援責任者及び支援担当者に選任することもできますし、従業員を選任することもできます。

選任された支援責任者及び支援担当者が、過去5年間中に2年以上、就労系在留資格の外国人に対する「生活相談業務」に従事した経験があること、が要件になっています。

「生活相談業務」というのは、1号特定技能外国人に対して実施する支援のうち、例えば以下のものに関する内容などが該当します。

  • 生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 定期的な面談

しかし、上記以外にも「生活相談業務」と認められる業務もあります。

例えば、職業紹介会社の職員として、紹介した外国人材が就職した後に、業務として日常生活上のフォローをしていたケースで「生活相談業務」と認められて登録申請が許可(登録)された事例もあります。

cに該当するケースで多いのは、人材派遣会社や有料職業紹介事業者などで「生活相談業務」をおこなっていた者が支援責任者及び支援担当者になるケースです。

注意点しなくてはいけないのは、人材派遣会社や有料職業紹介会社などにおける外国人業務の全てが「生活相談業務」に該当するわけではない、ということです。

例えば、外国人に対して求人情報を紹介するだけでは「生活相談業務」として認められません。紹介先に紹介したあとに、定期的に生活上の相談対応をおこなうなどの業務経験が必要です。

なお、bの要件と同様に、生活相談業務についても、個人的な相談やボランティアでは実績と認められません。

d これらのものと同程度に支援業務を実施できると認められていること

aからdまでに掲げるもののほか、登録支援機関になろうとする者が、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として出入国在留管理庁長官が認めるものであること

引用:e-Gov「出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の21」

「これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者」というのは、以下の3つに該当する者のことです。

  • 中長期在留者の適正な受入れ実績等がある機関と同程度に、支援業務を適正に実施することができる
  • これまで日本人労働者等を適正かつ適切に雇用してきた実績があり、責任を持って支援をおこなうことが見込まれる
  • 労働関係法令を遵守していて、労働基準監督署から是正勧告を受けていない

つまり、a〜cに該当しない場合でも、上記3つに該当する者と出入国在留管理庁長官に認められれば登録支援機関として登録を受けられます。

上記の要件に該当するかどうかは提出された資料に基づき、例えば以下のような事情などから個別に判断されます。

  • 在留資格を問わず、日本に在留する外国人の雇用管理や生活相談をおこなった実績
  • 支援を適切におこなう能力や体制があるといえる事業実績
  • 事業の公益性の度合い
  • 支援業務に従事する役職員の経験や保有する資格

この要件には上場企業などが該当すると想定されますが、この要件で申請するケースはあまり多くありません。

 

以上、登録支援機関として登録を受けるための要件の中で特に重要なものを、ポイントを絞って解説しました。

a~dの要件のうち、どれか1つに該当していないと登録支援機関にはなれません。

現時点で要件を満たしていない場合は、就労系在留資格の外国人を新規雇用するとか、生活相談業務の経験がある人材を雇用するなど、要件を満たしたうえで申請してください。

登録支援機関になるための要件を満たせたら、いよいよ登録申請手続きをおこないます。

登録支援機関になるための手続

ここからは、登録支援機関として登録を受けるための手続きについて解説します。

登録支援機関として登録を受けるには、申請書を出入国在留管理庁長官に提出しなくてはいけません。

申請書の提出から登録までの流れを見ていきましょう。

申請から登録までの流れ

  1. 書類の準備
  2. 書類の提出
  3. 審査
  4. 審査結果の通知

ひとつずつ、簡単に解説していきましょう。

書類の準備

まず必要書類を準備し、必要事項を記入します。

必要書類は以下のとおりです。

  • 登録支援機関登録申請書
  • 手数料納付書
  • 登録支援機関概要書
  • 登録支援機関誓約書
  • 支援責任者の就任承諾書および誓約書
  • 支援責任者の履歴書
  • 支援担当者の就任承諾書および誓約書
  • 支援担当者の履歴書
  • 支援委託手数料に係る説明書(予定費用)
  • 法施行規則第19条の21第3号ニに該当することの説明書
  • 法施行規則第19条の21第3号二二該当することの説明書に係る立証資料
  • 返信用封筒

これらに加え、申請者が法人の場合は

  • 登記事項説明書
  • 定款または寄附行為の写し
  • 役員の住民票の写し(マイナンバーの記載なし、本籍地の記載があるものに限る)
  • 登録支援機関の役員に関する誓約書

申請者が個人の場合は

  • 住民票の写し(マイナンバーの記載なし、本籍地の記載があるものに限る)
  • 主たる事務所の住所に係る立証資料

書類の提出

申請書類を提出します。

提出先は、申請者の本店または主たる事務所の所在地を管轄する地方出入国在留管理局・支局です。

申請先となる所在地ごとの地方出入国在留管理局・支局は、下の表で確認してみてください。

申請者の本店または主たる事務所の所在地 申請先
北海道 札幌出入国在留管理局 審査部門
青森県・岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県 仙台出入国在留管理局 審査部門
茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・新潟県・山梨県・長野県 東京出入国在留管理局 就労審査第三部門
神奈川県 東京出入国在留管理局横浜市局 就労・永住審査部門
富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県 名古屋市出入国在留管理局 就労審査第二部門
滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・和歌山県 大阪出入国在留管理局 就労審査部門(第二就労担当)
兵庫県 大阪出入国在留管理局神戸市局 審査部門
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県 広島出入国在留管理局 就労・永住審査部門
徳島県・香川県・愛媛県・高知県 高松出入国在留管理局 審査部門
福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県 福岡出入国在留管理局
(持参)審査管理部門
(郵送)就労・永住審査部門
沖縄県 福岡出入国在留管理局那覇市局 審査部門

審査

登録拒否事由に該当していないか審査がおこなわれます。

審査には約2ヵ月を要するため、支援業務の開始予定の2ヵ月前までに申請をおこなう必要があります。

審査結果の通知

審査が終わると、審査結果が通知されます。

登録拒否事由に該当しないと認められた場合

登録支援機関登録簿に登録され、登録支援機関登錄通知書が交付されます。

登録拒否事由に該当すると認められた場合

登錄拒否通知書が交付されます。

手数料

申請にかかる手数料は28,400円です。

申請時に提出する手数料納付書に、28,400円分の収入印紙を貼付します。

その他、返信用封筒に440円分の切手を貼付する必要があります。

有効期限

登錄の有効期限は5年間です。

登錄を更新する場合は、有効期限満了の2ヵ月前までに更新申請をおこないます。

 

審査に2ヵ月かかるとお伝えしましたが、それは問題なく審査が進んだ場合です。

もし提出書類に不備や不足があれば、追加で資料の提出や説明を求められることもあり、そのぶん審査の期間も長くなってしまいます。

過去の事例では、書類の提出から登錄まで半年以上かかったこともありました。

支援業務の開始時期が決まっている場合は、時間的余裕をもって申請準備をおこなうことをおすすめします。

登録支援機関になるための手続き まとめ

1号特定技能外国人の支援を実施する登録支援機関になるための要件と、申請手続きの流れを解説しました。

登録支援機関になるための主な要件

    1. 支援責任者・支援担当者を選任している
    2. 以下(a〜d)のいずれかに該当すること
      1. 2年以内に就労系在留資格の外国人の受入れ実績がある
      2. 2年以内に業として、外国人に関する相談業務に従事した経験がある
      3. 支援責任者及び支援担当者が過去5年間に2年以上、就労系在留資格の外国人の生活相談業務に従事した経験がある
      4. 2〜4と同程度に支援業務を適正に実施できると認められている
    3. 外国人が理解できる言語で支援を実施できる
    4. 1年以内に、登録支援機関側の責任による外国人の行方不明者を発生させていない
    5. 支援の費用を外国人に負担させようとしていない
    6. 5年以内に、出入国または労働関連の法令に関し不当な行為をおこなっていない

 

登錄の申請は、必要書類を管轄の地方出入国在留管理局に提出します。

申請から登錄までは2ヵ月といわれていますが不備があるとさらに時間がかかるため、早めに手続きをおこなうのがおすすめです。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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