特定技能【ビルクリーニング】のよくある質問

特定技能制度は、日本国内の人材不足を解消することを目的として、即戦力となる一定の技能を持った外国人を受入れるために作られた仕組みです。

ビルクリーニングは、清掃ロボットを導入した業務効率化や、女性・高齢者を積極的に雇用するなどの取り組みがおこなわれていますが、それでもなお人材不足を解消することが難しいということで、外国人材を受入れて人材確保をはかるべき特定産業12分野の一つに指定されました。

 

近年、建築衛生法による維持管理が義務づけられたビルが次々と建てられていますが、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は平成29年度には2.95倍にまで達しており、人手不足を実感しているビルクリーニング業の方も多いのではないでしょうか。

ここでは、外国人の受入れを検討しているビルクリーニング分野の方からよくいただく質問に、特定技能に特化した行政書士がわかりやすく回答します。

 

目次

特定技能「ビルクリーニング」で従事できる業務

Q:「ビルクリーニング」でできる清掃業務にはどのようなものがありますか?

 

A:ビルクリーニング分野の特定技能外国人は、主に建物内部の清掃ができることになっていますが、その業務の範囲はとても広いです。

ただし、多数の人が利用できる建物の内部が対象であって、住宅の清掃をおこなうことはできません。 

また、「多数の人が利用できる建物」には特に決まりがなく、どのような目的の建物でも特定建築物でも問題ありません。

※特定建築物とは、百貨店・博物館・旅館など、特定用途に使用される延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物のこと。

 

例えば、ホテル・旅館・オフィスビル・デパート・商業施設・図書館・美術館・学校・病院・福祉施設など、用途や規模に関わらず内部の清掃をおこなうことが可能です。

また清掃とは、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保・保全を目的として、場所・部位・建材・汚れなどの違いに対して適切な方法で洗剤や道具を使用し、汚染物質の排除、清潔さを維持する業務のことを指しています。

 

これらのことを簡単にまとめると、「住宅でない建物の内部について、場所に適した方法で、衛生的に外観や安全を守る業務につくことができる」ということです。

特定技能外国人が従事できる清掃業務はたくさんあるため、従事できない業務の例をあげておきましょう。

  • エアコン掃除
  • 窓清掃など、高所作業
  • 工場の機械の清掃
  • 貯水槽の清掃

Q:個人住宅の清掃はできますか?

A:できません。戸建て・集合住宅(マンション等)に関わらず、ビルクリーニングの特定技能外国人が個人住宅の清掃業務に従事することはできません

ただし、集合住宅のエントランスや廊下など、共有部分の清掃であればおこなうことが可能です

Q:日常清掃、定期清掃、特別清掃はできますか?

A:清掃の内容にもよりますが、できます。

ビル清掃業では、例えば、掃除機がけ・トイレ掃除・ゴミ回収などを日常清掃、機械を使用した床清掃・ワックスがけなどを定期清掃、エアコン洗浄や照明器具の清掃を特別清掃というように、業務内容を分けて清掃の依頼を受けることがあると思います。

しかし、特定技能外国人が従事する業務についてはそのような区別はありません。

エアコンの掃除や高所作業などできない業務もありますが、特別清掃だからできないということではありません。

 

特定技能外国人が従事できる清掃業務をわかりやすく整理してみましょう。

日常清掃 定期清掃 特別清掃
戸建住宅 × × ×
共同住宅(マンション等)(専有部分) × × ×
共同住宅(マンション等)(共有部分)
ホテル・旅館(ロビー・トイレなど)
ホテル・旅館(客室)
オフィスビル・商業施設など

 

Q:ビルクリーニングではホテルの客室清掃やベッドメイクに主たる業務として従事できますか?

A:このご質問はとても多くの企業様からいただく内容ですが、ビルクリーニングの特定技能外国人が「主たる業務」(「主な業務」とも言います)としてベッドメイクをおこなうことはできません。

客室清掃については、主たる業務としておこなうことが可能です。

宿泊分野はダメだけど、ビルクリーニングならベッドメイクを主たる業務にできると考えている事業者さんもいらっしゃいますが、ビルクリーニング分野でも宿泊分野でも、ベッドメイクは主たる業務としておこなうことできないので注意する必要があります。

 

整理すると、宿泊施設でもそれ以外でも、ベッドメイクは付随的におこなう関連業務となります

ビルクリーニング分野 宿泊分野
宿泊施設の客室清掃 主な業務 関連業務
宿泊施設のベッドメイク 関連業務 関連業務
宿泊施設以外のベッドメイク 関連業務 不可

 

また、その他の関連業務として、

  • 資機材倉庫の整備
  • 外壁・屋上など、建物外部洗浄(高所作業を伴う窓ガラス・外壁清掃は不可)
  • 建物内外の植栽管理(水やりなど)
  • 資機材の運搬(他の清掃現場に移動する場合など)

なども、付随的におこなうことが可能です。

特定技能「ビルクリーニング」として働くための基準

Q:ビルクリーニングの特定技能で外国人を採用するにはどのような方法がありますか?

A:ビルクリーニング分野で特定技能外国人を採用するルートは、主に次の4つです。

①国内にいる技能実習生からの移行

②すでに帰国している技能実習修了者の新規採用

③国内留学生からの移行

④海外にいる試験合格者の新規採用

 

①と②は、ビルクリーニング職種の技能実習2号を良好に修了していれば、技能試験や日本語能力試験が免除され特定技能1号に移行することができます。

清掃業務の経験がある、ある程度の日本語が話せる、日本の生活に慣れているといったメリットがあります。

 

③は、国内にいる留学生が技能試験と日本語能力試験に合格し、在留資格を特定技能に切り替えるパターンです。

アルバイトで雇用していた留学生に、フルタイムとして引き続き働いてもらうことができます。

新規採用の場合でも、在留年数にもよりますが、日本の生活に慣れているのはメリットになるでしょう。

 

④についても、技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。

2023年度はインドネシア、フィリピン、タイ、カンボジアで技能の国外試験がおこなわれる予定ですが、最も多く国外試験を実施しているインドネシアでは、合格率が80%と他の国よりも高い傾向にあり、即戦力となる優秀な人材の採用が期待できます。

ただし、初めて日本に住む外国人の場合は、支援に割く時間・労力が(すでに日本に在留している外国人よりも)比較的大きくなる傾向があります。

Q:技能試験と日本語能力試験とは、どのような試験ですか?

A:特定技能を取得するための技能試験は分野ごとに異なり、ビルクリーニング分野の試験については以下のとおりです。

技能試験:ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験

日本語でおこなう実技試験で、写真やイラストによる判断試験と実際に清掃をおこなう作業試験です。

試験日程や試験問題、テキストは、公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会で確認してください。

 

日本語能力試験

日本語能力試験については他の分野と同じで、国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル)または、日本語能力試験(N4以上)が必要です。日本国内でも国外でも受験可能です。

試験日程、サンプル問題は、それぞれのホームページで確認できます。

JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト

日本語能力試験 JLPT

受入機関が満たすべき基準

Q:ビルクリーニングで特定外国人を受入れるための条件を教えてください。

A:特定技能外国人を受入れるためには、すべての分野に共通して満たすべき基準と、分野ごとに満たすべき基準があります。

 

すべての分野に共通して満たすべき基準

  • 分野ごとに定められた業務に従事させること

ビルクリーニングでいえば「建築物内部の清掃に従事させること」ですね。

  • 分野ごとに設置された協議会の構成員になること。

特定技能外国人を初めて受入れる場合には、入国から4ヵ月以内にビルクリーニング分野特定技能協議会に加入してください。

  • 適切な雇用契約を結ぶこと

直接雇用、労働時間や報酬は、同じ職場で働く日本人と同等でなければいけません。

  • 支援する体制を整えること

外国人が安心して生活・就労できるように支援計画を作成し、計画に基づいて支援をおこないますが、登録支援機関に委託することもできます。

 

ビルクリーニング分野の受入機関が満たすべき基準としては、受入機関は、建築物衛生法における建築物清掃業(1号登録)か建築物環境衛生総合管理業(8号登録)の登録を受ける必要があります。

すでに登録済みの企業様もいらっしゃると思いますが、これから登録する場合は次のことに注意してください。

登録は、法人単位ではなく営業所ごとに取得し、特定技能外国人は登録を受けた営業所で直接雇用すること。

建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録とは

Q:建築物清掃業・建築物環境衛生総合管理業の登録とはどんなものですか?登録が受けられる業務内容に決まりはありますか?

A:まず、建築物清掃業・建築物環境衛生総合管理業の登録とは、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築衛生法)によって定められており、環境衛生の維持・管理が適切におこなわれるように資質の向上を図るために設けられました。

つまり、この登録を受けることで、建築衛生法に則って清掃をおこなっている営業所であると認められたことになります。

 

この登録を受けなくても清掃業をおこなうことはできますが、特定技能外国人を受入れる場合には、1号、または8号の登録を受けなくてはいけません。

登録を受けると、「登録事業者である」ということを表示することができます。

 

この登録は、業種・業務内容によって1号から8号まで分かれていますが、特定技能で登録が必要な業種、つまり特定技能の受入れができる業種は1号と8号だけです。

1号と8号、それぞれの業種と業務内容は次のとおりです。

 

業種 業務内容
1号 建築物清掃業 建築物内の清掃をおこなう事業

(建築物の外壁や窓の清掃、給排水設備のみの清掃を行う事業は含まない)

8号 建築物環境衛生総合管理業 特定建築物の衛生的環境の維持管理を行う事業

  • 清掃
  • 空調設備の管理
  • 空気環境の測定
  • 給水および排水設備の管理
  • 給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の検査
  • 給水栓における水の色、濁り、臭い、味の検査

 

Q:建築物清掃業・建築物環境衛生総合管理業の登録を受けるにはどうすればよいですか?また、受けるための基準はありますか?

A:建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録は、営業所の所在地を管轄する都道府県知事(都道府県生活衛生担当部署)に申請書を提出します。

例えば、東京都の場合は「東京都健康安全研究センター」が申請窓口となっていますが、所在地によって窓口が異なるので都道府県に確認するとよいでしょう。

 

登録を受けるために満たすべき基準は、次の3つです。

  • 物的基準・・・機械器具、その他の設備に関する基準
  • 人的基準・・・従事者の資格に関する基準
  • その他の基準・・・作業の方法、機械器具の維持管理方法などに関する基準

 

物的基準に従って、以下の機械器具をそろえる必要があります。

業種 機械器具
1号 建築物清掃業
  • 真空掃除機
  • 床みがき機
8号 建築物環境衛生総合管理業
  • 真空掃除機
  • 床みがき機
  • 空気環境測定業の機械器具
    • 浮遊粉じん測定器
    • 一酸化炭素検定器
    • 炭酸ガス検定器
    • 温度計
    • 湿度計
    • 風速計
    • 空気環境の測定に必要な器具
  • 残留塩素測定器

 

人的基準は、以下のように定められた資格を持つ監督者を置き、従事者が研修を修了することが求められます。

業種 監督者等 従事者
1号 建築物清掃業 「清掃作業監督者」

ビルクリーニング技能検定1級合格

または

建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けて清掃作業監督者講習を修了

従事者研修を終了
8号 建築物環境衛生総合管理業 「統括管理者」

建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けて清掃作業監督者講習を修了

「清掃作業監督者」

ビルクリーニング技能検定1級合格

「空調給排水管理監督者」

ビル設備管理技能検定合格

または

建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受けて清掃作業監督者講習を修了

「空気環境測定実施者」

清掃作業監督者講習を修了

建築物環境衛生管理技術者免状の交付を受ける

従事者研修を終了

 

清掃作業監督者講習は、6年ごとに再講習を受ける必要があります。

従事者研修は、パートやアルバイトを含めて登録事業に従事するすべての人が、年に1回受けなくてはいけません。

 

その他に、「清掃作業及び清掃用機械器具の維持管理の方法等に係る基準」に適合した方法で作業、機械器具の維持管理をすることが求められます。

 

これらの基準をすべて満たすことで、建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録を受けることができます。

特定技能 ビルクリーニング分野 受入れ上限人数(受入れ見込み数)

Q: 特定技能ビルクリーニング分野の受入れ上限人数を教えてください。

A:特定技能の各分野には、それぞれ受入れ上限人数(受入れ見込み数)が決まっています。

これは、特定技能が創設された2019年から5年間での最大受入れ可能人数です。

5年間の間にこの人数に達した分野は、原則としてそれ以降の受入れができなくなります。

ビルクリーニング分野においては、最初に設定された受入れ上限人数は37,000人です

Q:ビルクリーニング分野では、受入れ上限人数が引き下げられたと聞きました。現在の受入れ上限人数を教えてください。

A:ご質問の通り、ビルクリーニング分野で、最初は受入れ上限人数は37,000人でしたが、新型コロナウイルスの影響による経済情勢の変化によって、2022年8月30日の閣議決定で、令和5年度末(令和6年3月末)までは、ビルクリーニング分野での受入れ上限人数は、20,000人に引き下げられました

ですので、令和5年度末までのビルクリーニング分野での受入れ上限人数は、20,000人です

この人数が受け入れの上限となり、この人数に達した場合は、原則としてそれ以降の受入れはできなくなります。

 

ここで、現時点でのビルクリーニング分野の実際の受入れ人数を見てみましょう。

出入国在留管理庁が公表している、「特定技能在留外国人数(令和4年12月末)」によると、ビルクリーニング分野全体での実際の受入れ人数は、1,867人です。

20,000人の受入れ上限人数に対して、1,867人ですから、上限の約9.3%です。

したがって、上限人数の約9.3%にあたる1,867人特定技能外国人が、実際にビルクリーニング分野で働いていることになります

 

以上、特定技能ビルクリーニング分野でのよくある質問について回答しました。

ビルクリーニング分野では慢性的な人手不足が常態化していますが、特定技能が創設された現在でも人材確保が困難な状況が続いています。

特定技能制度を活用することで、安定した事業活動に役立ててください。

 

なお、特定技能外国人の受け入れを検討している企業様で、衛生的環境の確保に関する事業の登録をおこなっていない場合は、早めに登録を済ませておくことをお勧めします。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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