
※この記事では「介護分野」に特化してお伝えします。他分野では要件等が異なることもありますのでご注意ください。
介護業界は女性スタッフが多く、産休・育休で人の入れ替わりや、夜勤があるため家庭との両立が難しいなど様々な理由から、慢性的な人手不足になっています。
また新人がなかなか入ってこないもしくは定着しないため、ベテランスタッフの業務負担が大きくなり離職率も高くなる傾向にあります。
このような慢性的な人手不足を解消するために、2019年4月より「特定技能」の在留資格(ビザ)が新設されました。
喀痰吸引や高齢者のメンタルケアなど、より高度で広範囲なケアを提供していくためにも、スタッフに高い知識と技術を習得させたいとお考えではありませんか?
特定技能ビザを活用すれば、現場は特定技能外国人に任せ、日本人スタッフには管理業務やハイレベルなケア技術の習得に専念してもらうことも可能です。
介護分野で特定技能外国人の雇用を検討している企業の採用担当者様向けに、特定技能の専門家行政書士がわかりやすく解説します。
目次
特定技能ビザとは?
特定技能ビザとは、介護分野を含む、人手不足が深刻な14業種の特定産業分野において、外国人に最長5年間の就労を認めた在留資格(ビザ)です。
※「在留資格」とは外国人が日本で仕事をするために必要な資格のことで一般的には「ビザ」と呼ばれています。
これまでも介護分野に特化したビザはありましたが、介護福祉士の資格取得が必須条件であったり(EPA介護福祉士・介護ビザ)、座学の研修が必須であったり(技能実習生)と、人手不足解消につながるビザではありませんでした。
こうした中、深刻な人手不足を背景に、介護分野を含む14種の特定産業分野にかぎり、外国人材の単純労働を認めたビザが2019年4月に新設されました。
これが、「特定技能ビザ」です。
※特定技能の説明として、政府の公式資料では今でも「単純労働」の文言は使用されていません。あくまでも「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人」という表現が使用されています。しかし一般的には上記のように単純労働可能なビザと理解されています。
下図を見ると、介護分野での特定技能ビザ(一番右)は受け入れしやすいことがわかります。

特定技能外国人を受け入れ可能な施設
介護施設であれば医療法人でもグループホームでも、法人形態は問いません。
介護福祉士受験資格の実務経験として認定される介護事業所であること
厚生労働省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-」によると、
〇 介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる事業所は,介護福祉士国家試験の受験資格の認定において実務経験として認められる介護等の業務に従事させることができる事業所でなければなりません。
となっています。
特別養護老人ホーム・障害者(児)施設・地域福祉センターなどの社会福祉施設や、対象者が高齢者・障害者(児)であり、主たる業務が介護等である施設(事業)などが該当します。
有料老人ホームでの特定技能外国人の受け入れは?
有料老人ホームは、サービス提供形態によって受け入れの可否が分かれます。
受け入れが可能な有料老人ホームは以下の3種類です。
- 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く。)
- 介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く。)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く。)
介護分野における特定技能外国人材の活用その1「従事できる業務内容」
人手不足解消に大きな期待が寄せられる特定技能外国人を従事させることができる具体的な業務は、以下の【施設での身体介護全般】です。
身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
厚生労働省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 —介護分野の基準について—」より
※利用者の居宅で行われるものは対象外
業務内容には「レクリエーションの実施やお知らせの掲示等」も含まれる
上記の「施設での身体介護全般」の他にも、日本人介護スタッフと同様の業務(日常の清掃やリネン交換等)に従事させることができます。(ただし付随する支援業務のみに従事させることはできません。)
従事できる業務内容に厳しい制限のない特定技能外国人は、現場の戦力として大いに期待することができます。
訪問介護等の訪問系サービスは対象とならないので注意
特定技能外国人は、利用者の居宅においてサービスを提供するような訪問介護サービスに従事できないので注意が必要です。これは関連業務(当該事業所において従事する日本人が通常従事することとなる関連業務)に付随的に従事することも認められていません。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も訪問介護事業とみなされるので、原則は特定技能外国人を雇用できません。※サービス提供の形態によっては受け入れ可能な場合もあります。
介護分野おける特定技能ビ外国人材の活用その2「受け入れ企業の基準と要件」
では次は、雇用する企業側に必要な要件をみていきましょう。
14業種すべての分野で満たすべき基準
特定技能外国人を雇用するために、受入れ機関に必要な要件が設けられています。
例えば労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること、1年以内に受入れ期間側の事由で行方不明者を発生させていないこと、特定技能外国人の雇用を継続できる体制が整っていること等です。
(詳細は、「【特定技能初めの一歩】これだけ読めば制度の全体像がつかめます!」をご参照ください。)
その他、『 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)』という項目があります。
介護分野における「⑬分野に特有の基準」とは?
この介護分野に特有の基準ですが、以下の3つになります。
分野に特有の基準① 「人数制限」
特定技能外国人の受け入れ人数として、以下の条件があります。
『事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること。』
日本人等の常勤介護職員とは介護ビザ外国人なども含みますが、そうした常勤職員の人数を超えた数の特定技能外国人を受け入れることはできません。
これは『事業所単位』の基準ですので、法人で複数の事業所を運営されている場合は計画的な人員配置が必要となります。
分野に特有の基準② 「介護分野における特定技能協議会」への加入
また「介護分野のおける特定技能協議会」への加入が必要となります。
(ちなみに協議会への加入は介護分野に限った要件ではなく”特定技能外国を受入れる機関は、分野別の協議会注1の構成員になることが必要。”(引用 出入国在留管理庁 特定技能に関するウェブサイト)とされています。)
加入のタイミングは特定技能外国人を初めて受け入れる際に、その外国人が入国してから4か月以内になります。
介護分野特定技能協議会に加入する際にかかる費用負担もありません(2021年3月現在)。
また加入も誓約書の提出や、オンラインでの必要書類のアップロードなど簡単な手続きなので、事業者様の大きな負担はありません。
参考:厚生労働省・「介護分野における特定技能協議会」手続の流れ(PDF)
注1:分野別協議会とは、特定技能外国人を受入れいるそれぞれの業種ごとに特定技能制度の適切な運用を図るために、所管省庁・受入れ企業・業界団体・関係省庁等で構成する機関です。
分野に特有の基準③ 調査や指導への協力 ―巡回訪問の受け入れー
「特定技能」ビザは、2019年4月に創設されたばかりの新しい制度です。
出入国在留管理庁や管轄省庁の調査には積極的に協力し現場の声を伝えていくことで、「特定技能ビザ」が日本企業にとっても外国人にとっても、より良い制度になっていくことが期待できます。
また、外国人介護人材相談支援事業実施団体による受入施設に対する巡回訪問も実施されます。
介護分野における特定技能ビザ人材活用その3「外国人側の要件」
次は、雇用される外国人本人に必要なことをお伝えします。
特定技能ビザには当該分野に関連する学歴や実務経験の要件はありません。
当該分野で必要とされている技能水準の条件を満たしており、そして一般的な日本語能力と介護分野にかかる日本語能力の一定の水準をクリアしていれば、介護分野における要件を満たしていることになります。
技能水準及び日本語能力水準について詳しく見てみましょう。
ポイント 以前は、日本国内での受験対象者が「日本国内に在住する中長期在留者」及び「過去に中長期在留者として在留していた外国人」であったところ、2020年4月1日より「短期滞在」ビザで日本に滞在する外国人の受験も可能になりました。
技能水準について
介護分野における技能水準を満たしているかどうかを証明する方法として、以下の3つがあります。
①介護技能評価試験
「飲食」や「宿泊」など、特定技能の他の分野では、1年に3回程度しか試験が実施されないものもあります。
それに対して介護分野では、ほぼ毎日のように試験が実施されていますので、候補者を確保しやすい傾向にあります。
以下は、「介護技能評価試験」(「プロメトリック株式会社」実施)の試験を受ける方法です。
受験料:1,000円(クレジットカード決済)
※受け入れ施設が立て替えて支払う場合は、バウチャーを購入しバウチャー番号を受験生に伝えることにより受験可能
2020年4月の「介護技能評価試験」試験実施要領(厚生労働省発出)によると、試験内容は以下の通りです。
試験時間 60 分 問題数 45 問(学科試験40問、実技試験5問)
●学科試験
- 介護の基本(10 問)
- こころとからだのしくみ(6問)
- コミュニケーション技術(4問)
- 生活支援技術(20 問)
●実技試験
- 生活支援技術(5問)
※判断等試験等(注)の形式による実技試験課題を出題
(注)写真等を提示して、正しい介護の手順等についての判別、判断等を行わせる試験
過去の試験問題や受験地などについての詳しい情報は、「厚生労働省」のホームページで最新情報を見ることができます。(介護分野における特定技能外国人の受入れについて)
②介護福祉士養成施設修了
介護福祉士養成課程の修了者は、介護分野において一定の専門性・技能を用いて即戦力として業務をするうえで必要な知識・経験を有しているとみなされ、上述①の試験の合格と同等以上の技能水準があるとみなされます。
③EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)
介護福祉士養成施設修了と同様に、EPA介護福祉候補者として日本で就労・研修に適切に従事した者は、介護分野において上述①の試験の合格と同等以上の技能水準があるとみなされます。
しかし、候補者としての就労・研修を3年10ヶ月以上修了した後に、直近の介護福祉国家試験の結果通知書を提出し、合格基準点の5割以上の得点があり、すべての試験科目群で得点があることなどを証明する必要があります。
④技能実習2号の修了者
「介護職種・介護作業」の第2号技能実習を良好に修了した者も、介護分野において即戦力として業務を担える一定の専門性と技能を有しているとみなされ、①の試験は免除されます。
日本語能力水準
介護分野においては、他の特定技能分野と同様に一般的な日本語能力を測る日本語能力試験と介護分野における日本語能力を測る試験によって、日本語能力水準を示す必要があります。
日本語能力試験
以下のどちらかの試験を受験し、必要レベルをクリアしている必要があります。
- 「国際交流基金日本語基礎テスト」(独立行政法人国際交流基金」実施)
- 「日本語能力試験」(「独立行政法人国際交流基金」および「日本国際教育支援協会」実施)
上記どちらかの日本語能力試験においてN4レベル以上(※)
※N4レベルとは基本的な日本語を理解することができるレベルです
- 【読む】簡単な文章ややさしい漢字を読める。
- 【聞く】日常的な場面でゆっくり話される会話を理解できる。
介護日本語評価試験
「介護日本語評価試験」(「プロメトリック株式会社」実施)
受験料:1,000円(クレジットカード決済)
※受け入れ施設が立て替えて支払う場合は、バウチャーを購入しバウチャー番号を受験生に伝えることにより受験可能
介護に関する簡単な日本語(声かけや文書)の理解を評価する試験です。
「介護技能評価試験」および「介護日本語評価試験」はどちらも以下のプロメトリック株式会社ホームページで、日程・受験地が確認できます。同ページでプロメトリックIDを取得すると、試験の申し込みをすることもできます。
日本語能力試験が免除される場合
技術水準同様に、介護福祉士養成施設修了社及びEPA介護福祉士候補者として4年間日本で就労した者、また技能実習2号を良好に修了した者については、一般及び介護分野における一定の日本語能力を有しているとみなされ、試験は免許されます。
介護分野における特定技能外国人材の活用その4「雇用の流れ」
以上のような受入れ側と外国人側の要件が整い、外国人に就労してもらうには大まかに次のような流れになります。
Step1 人材募集・面接:日本人の雇用と同様に、外国人人材の採用活動を行います。※特定技能ビザ申請の要件を確認
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Step2 雇用契約:法令を遵守(※)し、雇用契約を締結する。
※給与や休日などの待遇が日本人と同様である上に、外国人社員ならではの出入国のサポートや生活状況の把握なども必要です。
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Step3 支援計画の策定: 特定技能外国人を雇用する場合、外国人が日本で安定して生活し働くことができるよう、法律によって定められている支援を行う必要があります。(当サイト内「【特定技能初めの一歩】これだけ読めば制度の全体像がつかめます!」で詳しく解説しています)
事前ガイダンスから住居の確保、就労後の3カ月に1回の面談など10項目が義務付けられています。
この支援は外部の登録支援機関に委託することも可能です。
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Step4 ビザ申請:いよいよ必要な書類をそろえて、出入国在留管理庁へビザの申請を行います。
書類に不備があると追加資料が要求され余分に時間がかかることになるので、慎重に準備をしてください。
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Step5 入国または就労開始
外国人雇用における注意点とアドバイス
ここまでご説明してきたように、介護分野で特定技能外国人を雇用するには、企業側にも外国人側にも様々な要件や準備が必要となります。また入管法や労働法など、広い法律知識が必要とされる場面もあります。
これらを日常業務に加えて自社でおこなうことは難しいとお考えの事業者様もたくさんいらっしゃいます。
当事務所ではこれから介護分野で特定技能外国人の雇用をお考えの事業者様に対して、各種法令知識に基づいたコンサルサービス、ビザ申請書類作成代行サービス、雇用後の支援サービス等をご提供しています。
特定技能関連業務に特化した経験豊富な行政書士事務所が御社をしっかりサポートいたします。
お困りの方はぜひご相談ください。
業務の流れ
ご相談からサポートまでは以下の流れとなります。
1.お問合せ
初回のご相談は無料です。
お電話またはお問い合わせフォームからお問い合わせください。
2.ご相談
御社の状況を丁寧にヒアリングいたします。
3.お見積もり
サービスにかかる費用をお見積もりいたします。
4. ご契約・ご入金
前金制となっております。
5.業務に着手
典型的なケースでの料金のめやす
以下は典型的なケースでの料金のめやすです。※価格は全て税抜き価格です。
【事前調査】:70,000円から
他の事務所では通常「ビザ申請」を受任した後に必要資料を収集します。
どの事務所も、ビザ申請受任前に条件を満たしているか簡単なヒアリングはおこないますが、実際に必要資料を収集した後で問題(特定技能の条件を満たしていない)がわかるケースも少なくありません。解決可能な問題ならいいですが、解決が難しく途中で断念してしまうこともあります。
このような事態を防ぐために、当事務所では業界でも珍しい「事前調査」のサービスをおこなっています。
【事前調査サービスの内容】
・御社の事業が特定技能14業種に該当するか
※介護事業をおこなっている事業者の全てが特定技能「介護」分野に該当するとは限りません。
・税金、社会保険等の条件をそなえているか
・採用予定者が特定技能ビザの条件をそなえているか
※すでに他のビザで日本に在留中の外国人が特定技能に変更する場合、在留中の状況が審査されます。例えば「留学」で在留中にアルバイトのしすぎがあったり、税金等の未納があるとビザは許可されません。これらを事前に調査いたします。
・支援体制を満たしているか。(自社支援が可能か)
※雇用後の支援は自社でおこなうか、登録支援機関に委託するかを選べます。事業者の規模によっては自社で支援をおこなった方がコストが安くなる場合がありますが、自社支援が認められるためには一定の条件を満たしている必要があります。この条件を満たしているかどうか、事前に調査をおこないます。
・その他、特定技能外国人を雇用するための諸条件を満たしているか。
【特定技能ビザ申請】:150,000円から (「事前調査」をご依頼いただいている場合は80,000円から)
特定技能ビザ申請書類の作成・提出代行
当事務所は、出入国在留管理局に届出をした「申請取次者」の資格をもっているので、ビザ申請書類の作成から提出までを代行することができます。事業者様や特定技能外国人は入管に行く必要はありません。
【特定技能外国人支援委託料】:特定技能外国人1名あたり30,000円/月
当事務所は登録支援機関として法務省から登録を受けています。登録番号:19登-000994
支援業務を委託されたい事業者様には当事務所で支援委託を承ります。
※自社で支援をご希望の事業者様には、こちらから支援委託を無理強いすることはありません。
【特定技能所属機関顧問料】:要相談
特定技能所属機関の規模や受入れ人数によって異なります。ヒアリングの後具体的な費用をお見積もりいたします。
手続きに必要な期間のめやす
- 「事前調査」1か月程度
- 「特定技能ビザ申請」2か月程度
初回のご相談時にご準備頂くとスムーズなもの
- 会社案内(事業の概要がわかる資料)
- 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)※コピーでも結構です
- 決算報告書(貸借対照表、損益計算書)