特定技能所属機関の「定期届出」は、特定技能所属機関が自らの責任において作成することが義務付けられています。
登録支援機関に支援を委託している場合であっても、定期届出の作成を登録支援機関に丸投げすることはできません。
しかし、登録支援機関が補助的に定期届出作成のサポートをおこなうことは認められています。
特定技能所属機関が、1つの登録支援機関のみに支援を委託している場合は問題はありませんが、複数の登録支援機関にわけて委託している場合、定期届出作成の補助や提出をどの支援機関がおこなうか、という問題が生じます。
この点について、登録支援機関としての支援実績がある行政書士が、1問1答形式で回答します。
Q:当社では、中国人とベトナム人の特定技能外国人を受入れています。中国人についてはA登録支援機関、ベトナム人はB登録支援機関に支援を委託しています。それぞれの支援機関に定期届の作成補助をお願いしていますが、問題は無いでしょうか。(建設業D社)
A:ご相談ありがとうございます。
D社さんのように、複数の登録支援機関に支援を委託しているケースは少なくありません。
定期届の作成補助を複数の登録支援機関にわけて依頼することは可能ですが、その場合には注意すべき点がいくつかあります。
まずは、特定技能所属機関に作成義務がある定期届について、簡単に整理しましょう。
特定技能所属機関の定期届は、主に以下の3種類の書類を提出します。
(登録支援機関に支援の全部を委託している場合)
- 参考様式第3-6号 受入れ・活動状況に係る届出書
- 参考様式第3-6号別紙 特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払い状況
- 特定技能外国人の賃金台帳(添付資料)
状況に応じて、他にも提出する資料がありますが、一般的に以上の3種の資料を提出することが多いです。
1.の「参考様式第3-6号 受入れ・活動状況に係る届出書」は、届出の対象期間における、特定技能所属機関「全体」の受入れ・活動状況を記載する書類です。
例えば、項番5「雇用状況に関すること」では、対象期間中の、所属機関「全体」の在籍者数、新規雇用者数、離職者数等を記入して提出します。
ですので、「参考様式第3-6号 受入れ・活動状況に係る届出書」は1部だけを提出します。
複数の登録支援機関がそれぞれ3-6の届出書を作成補助して、登録支援機関の数の分の3-6届出書を提出してしまうと、1つの所属機関に対して複数の3-6が存在することになり、おかしなことになってしまいます。
3-6の届出書には、所属機関の担当者(届出書の作成者)の署名欄があります。
登録支援機関が作成補助した届出書は、所属機関担当者が確認した上で署名するので、複数部を提出することは考えにくいですが、担当者が不慣れな場合、所属機関に言われるままに届出書に署名をして複数部の届出書を提出してしまうことがあります。
複数部の届出書の内容が同一ならまだいいのですが、内容が異なっていた場合、所属機関の責任になってしまいます。
では、このような事態を避けるためにはどうすればいいでしょうか。
第1に、複数の登録支援機関に支援を委託している場合は、それぞれの支援機関にそのことを伝えて状況を共有させてください。
「おたく以外にも●●人●名の支援を●●に委託しています」と伝えるのです。
その上で、3-6の届出書の作成補助の依頼先は、1社に絞ります。そしてそのことを、他の支援機関にも共有します。
これで、複数の3-6届出書が提出されることを防ぐことができます。
Q: 参考様式第3-6号別紙 「特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払い状況」については、別々の支援機関に作成補助を依頼してもいいでしょうか?
A:参考様式第3-6号 「受入れ・活動状況に係る届出書」が所属機関「全体」の受入れ状況等を記入する届出書であるのに対して、参考様式第3-6号別紙 「特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払い状況」はどうでしょうか?
3-6号別紙も所属機関「全体」の状況を表す書類です。しかし3-6号と3-6号別紙では次のような違いがあります。
「3-6号別紙」は、特定技能外国人1名ごとに、記入欄が独立している。
したがって、複数の登録支援機関が別々に作成補助することが可能です。
もっとも、届出先である出入国在留管理局としては、まとめて記入して提出してもらった方が管理しやすく助かります。
ですので、可能であれば、3-6別紙の作成の補助は1つの登録支援機関が担当するのが理想的です。
それができない場合は、それぞれの支援機関が支援をする特定技能外国人の分を記入した3-6号別紙を、別々に提出することになります。
その際は、何の説明もなく提出してしまうと、入管でも混乱しますので、理由書等の任意の文書に、別々に提出する旨を記載して提出してください。
参考様式第3-6号 「受入れ・活動状況に係る届出書」や参考様式第3-6号別紙「特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払い状況」は、特定技能所属機関が自らの責任において作成するものです。
作成の補助を登録支援機関がおこなった場合でも、必ず特定技能所属機関が最終的な確認、作成をおこなってください。
Q:特定技能所属機関の定期届出書と登録支援機関の定期届出書を、1つの封筒に入れて提出することはできますか?
A:定期届出書は、作成した者が直接提出するのが原則です。
つまり、参考様式第3-6号や参考様式第3-6号別紙などの特定技能所属機関が作成した届出書は特定技能所属機関が提出し、参考様式第4-3号などの登録支援機関が作成する届出書は登録支援機関が提出するのがシンプルな方法です。
しかし、郵送提出の場合の送付方法については、入管からの指定はありません。
ですので、定期届出書の提出時期が同時期になる場合などは、特定技能所属機関の定期届出書と登録支援機関の定期届出書を1つの封筒で郵送して提出することは差し支えありません。
実務上でも、登録支援機関が参考様式第4-3号などの届出書を郵送する際に、特定技能所属機関が作成した参考様式第3-6号などの届出書を同封して郵送することはおこなわれています。
以上、登録支援機関に支援を委託している場合の定期届出の際の、実務上の論点について回答しました。
定期届出の作成、提出は、法令で義務付けられた大切な手続きです。手続きを怠ると特定技能の受入れに不利益になることもありますので、適正におこなってください。
回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)