特定技能【漁業】のよくある質問

特定技能漁業分野が他の分野と大きく異なるのは、派遣形態が認められていることです。

派遣での受入れが可能なのは12分野のなかで漁業と農業だけで、漁業という仕事の特性をふまえた柔軟な働き方ができるのも他の分野とは異なるポイントです。

ここでは、特定技能に特化した行政書士が、漁業分野のよくある質問に回答します。

目次

漁業分野で従事できる業務

Q:漁業分野で従事できる業務を教えてください。

A:漁業分野では業務区分が「漁業」と「養殖業」に分かれており、下の表のとおり、それぞれ従事できる業務が異なります。

漁業分野の主な業務

業務区分 従事できる業務
漁業 漁業 漁具の製作・補修

水産動植物の探索

漁具・漁労機械の操作

水産動植物の採捕

漁獲物の処理・保蔵

安全衛生の確保等

養殖業 養殖資材の製作・補修・管理

養殖水産動植物の育成管理

養殖水産動植物の収穫・処理

安全衛生の確保等

 

これらの他に、同じ業務に従事する日本人が通常おこなう関連業務であれば、外国人も付随的に従事することが可能です。

関連業務は、区分ごとに次のようなものが想定されます。

「漁業」の関連業務例

・漁具・漁労機械の点検・換装

・船体の補修・清掃

・魚倉、漁具保管庫、番屋の清掃

・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込・ 積込み

・出漁に係る炊事・賄い

・採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖

・自家生産物の運搬・陳列・販売

・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用 する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売

・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け

・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助

・社内外における研修 など

「養殖業」の関連業務例

・漁具・漁労機械の点検・換装

・船体の補修・清掃

・魚倉、漁具保管庫・番屋の清掃

・漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込・積込み

・養殖用の機械・設備・器工具等の清掃・消毒・管理・保守

・鳥獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における食害防止

・養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業

・自家生産物の運搬・陳列・販売

・自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売

・魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け

・体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助

・社内外における研修 など

 

主な業務と関連業務でどこが違うの?感じるものがあるかもしれません。

例えば、「漁具の製作・補修」と「漁具・漁労機械の点検・換装」は違いがわかりにくいですが、主な業務となるのは網のほつれや穴の補修で、関連業務となるのは漁船の機械の点検や部品の交換です。

基本的には、漁業なら魚をとること、養殖業なら養殖水産動植物を育てることが主な業務なので、これらの技能を活かす業務が主な業務です。

関連業務は付随的に従事するものであって、機械の点検だけを毎日おこなっても漁業の技能は活かされませんね。そのように考えるとわかりやすいと思います。

Q:漁業と養殖業、両方の業務に従事することはできますか?

A:基本的には区分内の業務に従事することになりますが、両方の業務に従事する方法もあります。

というのは、のちほど『外国人の基準』でも解説しますが、試験を受けて特定技能を取得する場合、業務区分ごとに受験する試験が異なります。

ですので、通常は受験した区分の業務に従事することになりますが、両方の試験を受けて合格した場合は両方の業務に従事することが可能です。

また、技能実習から特定技能に移行する場合は、移行可能な業務区分内の業務にしか従事することができません。

ただしこの場合も、技能実習とは異なる区分の試験に合格することで両方の業務に従事することが可能になります。

Q:受入れ機関が漁業と養殖業を兼業している場合、漁業と養殖業の両方に従事することはできますか?

A:先ほどお伝えしたとおり、漁業と養殖業、両方の試験に合格、技能実習からの場合はもう一つの区分の試験に合格しなければ、両方の業務に従事することはできません。それは兼業であっても同じです。

関連業務としてなら従事できるのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、同じ農水省の管轄で漁業と同様に派遣形態が認められている農業分野では、異なる区分の業務でも、事業者が複合経営を営んでいる場合で、なおかつ日本人が通常両方の業務をおこなっている場合は、外国人も関連業務として付随的に従事することが可能です。

しかし漁業分野では、漁業と養殖業では必要とされる技能が全く異なることから、事業者が複合経営を営んでいる場合で、なおかつ日本人が通常両方の業務をおこなっている場合でも、外国人は取得した特定技能の区分の業務にしか従事できないので注意してください。

Q:水産動植物を採捕して養殖するなど、区分を超えた業務はどちらの区分で受入れたらよいですか?

A:特定技能外国人の主な業務がどちらの区分になるか、で決めることになります。

先ほどお伝えした関連業務を見ていただくとわかりやすいと思います。

  • 「採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖」は、水産動植物の採捕が主な業務なので漁業区分で受入れる。
  • 「養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業」は、主な業務である養殖のために水産動植物を採捕するので養殖業区分で受入れる。

採捕と養殖、どちらをメイン業務として従事させるかで決めることになります。

Q:特定技能漁業の「養殖業」業務区分では、すべての水産動植物の養殖業務に従事できますか?

A:特定技能の養殖業区分では、原則、すべての水産動植物の養殖業務に従事することが可能です。

一般的には海苔、ワカメ、マグロ、タイ、めずらしいものだと真珠貝やウナギの養殖などでも特定技能の受入れがおこなわれています。

Q:技能実習の養殖業職種「ほたてがい・まがき養殖」を修了して特定技能漁業分野の「養殖業」区分になった場合、「ほたてがい・まがき」以外の養殖水産動植物も扱えますか?

A:すべての水産動植物の養殖業務に従事できます。

養殖業区分の特定技能に移行できる技能実習の職種は、養殖業の「ほたてがい・まがき養殖」作業しかありません。

「ほたてがい・まがき養殖」で技能実習2号を良好に修了することで、水産動植物の管理など養殖業全般の技能を修得したと認められ、特定技能ではすべての水産動植物の養殖業務に従事できるようになります。

Q:漁業のほか、加⼯に従事することはできますか?

A:先ほど関連業務でお伝えしたとおり、同じ漁業に従事する日本人が加工業務もおこなっていれば、外国人も付随的に従事することが可能です。

ただし、「自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売」でなくてはいけません。

つまり、自分たちでとった水産動植物(又はその副産物)を使用した加工を同じ業務に従事する日本人がおこなっていれば、外国人が付随的におこなっても大丈夫です。

ただし、同じ事業所で漁業と加工をおこなう部門があり、日本人がそれぞれの部門で別々に雇用されている場合は、加工業務に従事することはできません。

漁業分野での雇用形態(直接雇用と派遣形態)

Q:漁業分野では、派遣形態での受入れも可能ですか?

A:初めにお伝えしたとおり、漁業分野では派遣形態で外国人を受入れることが可能です。

漁業での特定技能の受入れ方は、2つのパターンがあります。

一つは、漁業者や養殖業者が受入機関として特定技能外国人を直接雇用するパターン、もう一つは、派遣事業者が受入れ機関となり、漁業者や養殖業者が特定技能外国人を派遣してもらうパターンです。

引用:水産庁「特定技能外国人材の受入れ制度について(漁業分野)」

 

外国人との関係性については上の図を見ていただくとわかりやすいと思いますが、派遣形態の場合、派遣元となる労働者派遣事業者が受入機関となり、外国人と雇用契約を結びます。

派遣事業者は派遣契約を結んでいる派遣先の漁業者や養殖業者に外国人を派遣し、外国人は派遣先の事業者の指揮命令のもと漁労作業に従事します。

特定技能のほとんどの分野では直接雇用しか認められていないのに漁業分野で派遣形態が認められているのは、同じ地域でもとる魚や方法によって繁閑の時期が異なる、事業の多くは規模が小さく、半島や離島地域に存在しているという特性があるためです。

「禁漁期間は給料が出せない」「繁忙期だけ来てほしい」と考えている漁業者もいらっしゃるのではないでしょうか。

派遣事業者は複数の漁業者と派遣契約を結び、1人の外国人を複数の漁業者のもとへ派遣することが可能なので、雇用を一元化することで地域内で労働者を融通できるというメリットがあります。

Q:漁業分野で派遣事業者になるための要件を教えてください。

A:特定技能の漁業分野で派遣元である派遣事業者になるには、次にあげる3つのうち、いずれかに該当する必要があります。

① 漁業又は漁業に関連する業務を行っている者であること

② 地方公共団体又は①に掲げる者が資本金の過半数を出資していること

③ 地方公共団体の職員又は①に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他地方公共団体又は①に掲げる者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること

(運用要領別冊 第3)

 

③の「業務執行に実質的に関与していると認められる」というのは、地方公共団体、漁業生産組合、または①が、役員や職員を出向させて業務の運営に指導や助言などをおこなうことなどが想定されます。

また、派遣先の対象地域は、苦情処理を含めて外国人労働者の雇用管理を適切に行うことができる範囲でなくてはいけません。

Q:漁業協同組合は派遣事業者になれますか?

A:漁業協同組合は派遣事業者になることが可能です。

先ほどお伝えした派遣事業者の要件の「漁業に関連する業務を行っているもの」というのは、漁業協同組合、漁業協同組合連合会等のことを想定しています。

Q:漁業者や養殖業者が直接雇用することはできますか?

A:漁業者や養殖業者が受入れ機関としての基準を満たしていれば、直接雇用することが可能です。受入れ機関の基準についてはのちほど解説します。

漁業者が直接雇用する場合でも、漁閑期には別の事業者の業務につくといった働き方は可能です。

ただし、雇用契約に定めた契約期間が終了したあとに別の漁業者と雇用契約を結び、地方入管に在留資格変更許可を受けなくてはいけません。

つまり、業務の繁閑に合わせて転職することになります。

水産加工業(飲食料品製造分野)との区別

Q:水産物の加工は飲食料品製造業でも受入れができるとききました。どちらの対象になるか基準を教えてください。

A:先ほどの質問で、自家生産物を原料とした加工であれば関連業務として付随的に従事できるとお伝えしました。

漁業分野の外国人が加工業務に従事する場合は、関連業務として従事できるかがポイントとなります。

逆に、水産物の加工が主な業務となる業種は、漁業分野で受入れできないといえますね。

では、飲食料品製造業分野である水産食料品製造業の対象となるのはどのような業務なのでしょうか。

まず、材料を仕入れて水産加工品(缶詰・わかめ・海苔・かまぼこ・魚肉ソーセージ・塩蔵魚介類など)を製造する場合は、飲食料品製造業の受入れ対象です。

また、小売業者や卸事業者などに納品する刺し身や切り身などを加工する場合も飲食料品製造業の対象ですが、この場合には3つ注意点があります。

  • 消費者向けではないこと
  • 刺し身等加工品の売上が全体の1/2以上であること
  • 生鮮魚介卸売業・鮮魚小売業でないこと

同じ事業所に漁業部門と水産加工部門があり、加工業務に従事させるために飲食料品製造業で受入れる場合は、漁業の業務には従事できないこと、漁業のように派遣形態ではなく直接雇用しかできないことにも注意してください。

外国人の基準

Q:特定技能として受入れる外国人に基準はありますか?

A:従事できる業務でも少し触れましたが、特定技能で外国人を受入れるには試験に合格するか技能実習からの移行になります。

漁業分野でのそれぞれの基準を見てみましょう。

技能試験

  • 「漁業技能測定試験(漁業)」
  • 「漁業技能測定試験(養殖業)」

従事する業務区分に合わせてどちらかを受験します。どちらも合格すれば、両方の業務に従事できます。

日本語能力試験

  • 「国際交流基金日本語基礎テスト」
  • 「日本語能力試験(N4以上)」

すべての分野で共通して、どちらかに合格すればよいです。

技能実習からの移行

技能実習から特定技能へ移行する場合、漁業関係2職種10作業のいずれかで技能実習2号を良好に修了すると、技能試験と日本語能力試験が免除されます。

Q:漁船漁業の技能実習から特定技能の養殖業に移行することはできますか?

A:業務区分が異なるため、できません。

 

上の図のように、漁船漁業の作業から移行する場合は漁業へ、養殖業の作業から移行する場合は養殖業へしか移行できません。

ただし、延縄漁業で業務実習2号を修了し特定技能でまき網漁業に従事するなど、同じ業務区分内であれば技能実習と違う業務にも従事することが可能です。

受入れ機関の基準

Q:受入機関として外国人を受入れるための基準はありますか?

A:特定技能外国人の受入れ機関となるために満たすべき基準は次のとおりです。

  • 雇用契約が適切であること
  • 法令を遵守するなど、受入れ機関自体が適切であること
  • 漁業特定技能協議会の構成員になること
  • 外国人を支援する体制を整えること

これらの基準は他の分野とも共通していますが、漁業分野(と農業分野)は労働基準法上の労働時間・休憩・休⽇については適⽤されないのが他の分野と異なるポイントです。

同じ受入れ機関で働く日本人労働者と労働時間・休憩・休日が同等になるよう、適切な雇用契約を結ぶ必要があります。

Q:特定技能外国人は何年雇用できますか?

A:特定技能1号は、通算で5年雇用することができます。現時点では、漁業分野の特定技能2号はありません。

ですので、特定技能として雇用できるのは5年です。

ただし、業務の繁閑に合わせて他の事業者で働いたり、帰国したりできます。これも漁業分野と農業分野にだけ認められた働き方です。

引用:水産庁「特定技能外国人材の受入れ制度について(漁業分野)」
クリックで拡大できます

 

上の図のように、漁閑期に帰国した場合は、日本で雇用されていた期間の通算で5年までとなります。

Q:漁業分野に対応した登録⽀援機関はありますか?

A:漁業分野の場合、受入れ機関の所在する地域の漁業活動やコミュニティ活動の核となる漁業協同組合や漁業協同組合連合会が、登録支援機関になっていただくことが望まれています。

上記以外の登録支援機関を活用することも可能ですし、要件を満たせば技能実習の監理団体が登録支援機関になることもできます。

また、受入れ機関自身で支援をおこなうことができれば、必ずしも登録支援機関を利用する必要はありません。

Q:外国人支援に定期的な面談とあります。長期間乗船していて面談ができない場合はどうしたらよいですか?

A:ご指摘のとおり、遠洋漁業の場合などは定期面談がおこなえないこともありますね。

受入れ機関の基準でもお伝えしたように、特定技能外国人を受入れる場合は支援計画を適切に実施しなくてはいけません。

その支援計画の一つに、支援責任者が3ヵ月に1回以上面談を実施するというものがあります。

しかし、漁船が洋上で操業を続け、特定技能外国⼈やその監督的⽴場にある漁労⻑・船⻑等と3か⽉に1回以上の頻度で⾯談ができない場合には、⾯談に代えて3か⽉に1回以上の頻度で無線その他の通信⼿段により連絡をとることとし,近隣の 港に帰港した際に特定技能外国⼈及びその監督者と⾯談を⾏うこととして差し⽀えありません。

つまり、長期の漁に出ていて面談を実施できない場合は、3ヵ月に1回以上無線などで連絡を取り、近隣の港に帰港したときに面談をおこなえばよいということです。

漁業分野の受入れ見込数

Q:漁業分野では、外国人の受け入れ数の上限が引き下げられたと聞きました。現在の受入れ数の上限を教えてください。

A:特定技能制度が始まった2019年、漁業分野では最大9,000人を受入れの上限としていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響による大きな経済情勢の変化を踏まえ、2023年度末までは最大6,300人に受入れ上限が引き下げられました。

2022年12月時点で上限の26%にあたる1,638人の外国人が、特定技能漁業分野で受入れられています。

 

以上、特定技能漁業分野のよくある質問について回答しました。

ご参考になれば幸いです。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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