行政書士が解説する外食業分野での特定技能外国人雇用のポイント

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、飲食店舗では営業時間の短縮や酒類の提供の制限を受ける等厳しい状況が続き、やむを得ずアルバイト等の人員削減をされたところも多いと思います。

しかしこれらの制限が緩和され、通常営業ができる体制を整えようと思っても、今度は思うように人が集まらず、なかなか以前のような体制で営業ができずに苦労されている事業主の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、特定技能外国人の受入れサポートの実績を持つ入管業務の専門家行政書士が特定技能「外食」分野でおこなえる具体的な業務内容や実務上の注意点について、ポイントを絞って解説いたします。

特定技能「外食分野」で外国人に任せられる業務は?

特定技能外国人の雇用を検討している事業者様から頂く相談の中で多いのは、「具体的にどんな業務を任せられるのか?」という相談です。

結論から言うと、外食分野では「飲食物の調理、接客、店舗管理等」の外食業全般を任せることができます。

飲食物の調理、接客、店舗管理等の外食業全般

「調理、接客、店舗管理等」の内容を具体的に見ていきましょう。

「飲食物の調理」は、レストランや居酒屋などの厨房内での調理や、仕出し弁当屋等でのお弁当やパーティ用オードブルの調理や製造が該当します。

「接客」。これはいわゆるレストランなどのホールスタッフの仕事ですね。具体的にはお客様を席に案内したり、メニューの提案や注文伺い、配膳・下膳、代金受け取りといった仕事になります。

「店舗管理」は、店舗の運営に必要となる業務になります。例えば従業員の勤務管理、求人や雇用に関する事務、従業員の指導や研修などに関する事務、取引業者等との連絡調整、会計事務管理、広報業務等が該当します。

その他「関連業務」も可能

特定技能外国人に任せられるのは、今ご説明した外食業全般の業務になりますが、例えばお店で原材料として使用する農林水産物の生産や、お客様に提供する調理品など以外の物品販売等、その店舗等で日本人が通常やっている業務を付随的に行うことは可能です。

ここで注意しなくてはいけないのは「付随的」である必要があるということです。本来業務である「調理、接客、店舗管理等」をおこないながら付随的に「関連業務」をおこなうことが認められているという意味で、もっぱら「関連業務」のみに従事させることはできません。

特定技能外国人を雇用できる場所(事業所)は?

外食分野で特定技能外国人が従事できる業務内容と同じくらいご相談が多いのは、特定技能外国人を雇用できる場所(事業所)についてです。どこでも雇用できるわけではなく、一定の要件に該当している必要があります。

以下、特定技能外国人を雇うことができる場所(お店や事業所等)について、具体的にご説明いたします。

飲食店、持ち帰り飲食サービス業、配達飲食サービス業、給食事業所は特定技能外国人の受入れが可能

外食業分野で特定技能外国人を雇用(受入れ)できるのは、①飲食店、②持ち帰り飲食サービス業、③配達飲食サービス業、④給食事業、のいずれかを行っている事業所です。

「飲食店」とは、レストラン・居酒屋・喫茶店・ファーストフード店など、店内で料理を調理し、調理した料理を店内でお客様に提供している形態の店舗を指します。

必ずしも「特定技能」の在留資格を持つ人ばかりではありませんが、このような飲食店で外国人スタッフの姿を見かけることが多くなりました。

「持ち帰り飲食サービス業」とは、飲食店と同じく店内で調理をしますが、店内には飲食できるスペースがなくお客様が飲食物を受取って持ち帰る形態の店舗です。テイクアウト専門店等がこれに該当します。

「配達飲食サービス業」とは、「持ち帰り飲食サービス業」とよく似ていますが、注文の発注や受け渡しを店頭でおこなわない形態の店舗です。店内で調理した飲食物を配達するサービスで、仕出弁当や配食サービスなどがこれに該当します。

その他、病院や福祉施設等での給食事業やケータリングサービス等、お客様の希望する場所で調理をして、それを提供するサービス業を行っているところも対象になります。

上記に該当すれば「外食分野」での受入れが可能ですが、中には該当するかどうか判断が難しいケースがあります。

質問が多いのは、ホテル等の宿泊施設内にある飲食店(レストラン)で受入れ可能か、という点です。

宿泊施設内の飲食店は「外食分野」の対象になるか

ホテルや旅館などの宿泊施設内にある飲食店での特定技能外国人の受入れですが、受入れることは可能です。しかし飲食店の運営主体の主な事業が何かによって、どの分野で受け入れるのかが変わってきます。

宿泊施設の運営主体とは別の事業者が飲食サービス業をおこなっていて、その事業者が宿泊施設から委託を受けて宿泊施設内での飲食店を運営している場合は、「外食業」分野で特定技能外国人を受入れることができます。

つまり、宿泊施設直営ではなくテナント型の飲食店の場合は「外食業」分野での受入れになります。

一方で、宿泊施設が直営で運営している飲食店の場合は、「宿泊業」分野での受入れになります。

追記:以前は上記打ち消し線の文章の通りでしたが、その後制度変更がありました。

2023年8月現在では、宿泊施設直営の飲食店の場合は、「宿泊分野」でも「外食業分野」でも、どちらの分野でも受入れ可能です。

「宿泊業」分野で特定技能外国人を雇用した場合、レストランサービスに従事してもらうことはできるのですが、他のフロント業務や広報・企画等の業務と合わせて幅広く携わってもらう必要があります。したがって、「宿泊業」で受け入れた場合は、特定技能外国人をレストランサービス業務のみに従事させることはできません。

風俗営業や性風俗関連特殊営業を営む営業所は受入れ不可

注意が必要なのは、特定技能外国人が従事する業務内容が飲食物調理、接客、店舗管理の業務であったとしても、それを行う場所が「風俗営業」や「性風俗関連特殊営業」を営む営業所の場合は、特定技能外国人を雇うことはできません。

特定技能外国人を雇用するメリット

ここまでの説明で、外食業での特定技能外国人の雇用について、少しイメージが沸いてきたでしょうか。

ここで特定技能外国人を雇用することのメリットについても少し触れておきましょう。

幅広い業務を任せられる

外国人が日本で仕事をするためには、就労ができるビザ(在留資格)が必要になります。

外食業分野に関係するビザとしては、「技術・人文知識・国際業務」ビザや「技能」ビザがあります。

しかし「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、「大学等で習得した知識・技術を必要とする業務」に従事することが前提のため、ホール業務や調理などの業務に従事することはできません。

また「技能」ビザは調理専門のビザとなります。こちらのビザでは原則調理しかできず、ホール業務等その他の業務に従事できません。

その他、「留学」や「家族滞在」のビザを持つ外国人が「資格外活動」という資格をとってアルバイトで働いているケースもあります。しかしこの資格ではホールスタッフ等の業務や厨房内の業務をお願いできますが、1週間に28時間までという労働時間の制限があります。

このように外食業分野で外国人が就労できるビザの中で、新しくできた特定技能ビザは、外国人にホール業務から調理まで外食業全般の仕事をお願いできるというメリットが挙げられます。

即戦力として期待できる

また特定技能制度は、国内の人材不足解消のために、一定の技能・日本語能力を持った外国人の受入れを促進するために設立されました。

したがって受入れてから「即戦力」として期待できる技能やある程度の日本語でのコミュニケーション能力をあらかじめ持っている外国人が対象となっています。

外食業分野でいうと、飲食料品食品衛生に配慮した飲食物の取扱いや、調理や給仕に至る一連の業務を担い、管理することができる知識・技能を持っている人材になります。

したがって、同分野での基本的な知識をもち、日本語である程度コミュニケーションが取れることは雇用を検討するうえでプラスのポイントになると思います。

とはいえ、日本人と同様に、最初は慣れない職場環境、人間関係で戸惑うことも多いので、受入れ後のフォローは必要です。

特定技能外国人を雇用する際に注意しなければならない点は?

では実際に外食業分野で特定技能外国人を雇う場合に注意しなければならないことについて、ポイントを絞って説明します。

保健所の営業許可(届出)証の写しの提出が必要

外食業分野で特定技能外国人を雇用する場合には、特定技能ビザの申請時に、雇用しようとする事業所が法令に基づく許可等を受けているかどうか確認されます。

そのため、例えば保健所長の営業許可を受けている場合は、許可証の写しを提出することになります。

また保健所長の営業許可で必要ではないが、届出が必要な施設、例えば学校や病院、その他の施設の特定給食施設などは、届出の写しを提出することになります。

雇用形態はフルタイムの直接雇用

特定技能外国人を雇用する場合、直接雇用でなければいけません。派遣は認められていないので注意しましょう。

また「フルタイム」である必要があります。

ここでいう「フルタイム」とは、具体的に労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であること、そして週の労働時間が30時間以上であることとされています。

勤務日数や時間についてはこの基準を満たすように設定しましょう。

おわりに

外食分野で特定技能外国人を雇用する場合のポイントをご説明しました。

外食業分野では、これまでの在留資格の制度から考えると、特定技能制度で外国人を雇用することで任せられる仕事の幅が広くなりますし、即戦力としても期待できるので雇用側としてはメリットも大きいのではないでしょうか。

当事務所では事業所様の個別の状況に応じて、最適な方法で特定技能外国人雇用のサポートをうけたまわっております。

特定技能「外食分野」についての要件調査、ビザ申請、支援委託、コンサル等のご依頼は下記のお問い合わせフォーム(電話またはメール)からご連絡ください。

ここでは、これまで受けたご相談・質問を中心に、外食業分野で特定技能外国人を雇用する際のポイントをお話ししましたが、「外食業分野における特定技能ビザ人材活用」のページでも詳細を説明していますので、ご参照ください。

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)

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