特定技能【農業】のよくある質問

行政書士の小澤です。

特定技能農業分野は、他の分野と比べて決定的な違いがあります。

それは、派遣での雇用が可能ということです。

特定技能12分野のうち、農業と漁業の2分野のみが、派遣形態での受入れが可能です。

この点を含め、特定技能農業分野でのよくある質問に、専門家行政書士が回答します。

目次

農業分野での雇用形態(直接雇用と派遣形態)

Q:農業分野では派遣での雇用も可能ですか?

A:可能です。初めにお話ししたように、特定技能の全分野のなかで農業と漁業だけが派遣形態で受け入れることができます。もちろん、直接雇用することも可能です。

「うちは冬場は作業量が少ないから」「農作業がピークのときだけ来てほしい」という農家の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような農業特有の繁閑に合わせて外国人を受入れられるのが派遣形態のいいところで、複数の農業者のもとで業務に従事することが可能です。

 

上の図のように、派遣形態の場合は派遣元である労働者派遣事業者が受入機関となり、派遣先である農業者と派遣契約をします。

外国人は派遣事業者と雇用契約を結びますが、作業の指揮命令をおこなうのは派遣事業者ではなく派遣先の農業者となります。

Q:農業分野で派遣事業者になるための要件を教えてください。

A:派遣事業者の要件、つまり特定技能外国人を雇用して農業者に派遣する「派遣元の事業者」になるためには、いくつかの要件を満たさなければいけません。

次にあげる4項目は、いずれかに該当する必要があるものです。

① 農業又は農業関連業務をおこなっている事業者

② ①又は地方公共団体が資本金の過半数を出資している事業者

③ ①又は地方公共団体が業務執行に実質的に関与していると認められる事業者(①の役職員又は地方公共団体の職員が役員となっている等)

④ 国家戦略特別区域法第 16 条の5第1項に規定する特定機関(国家戦略特区で農業支援外国人受入事業を実施している事業者)

また、次の2つはどちらも満たす必要があります。

  • 農業現場の実情を把握し、特定技能外国人の受け入れを適正かつ確実に遂行するために必要な能力を有していること
  • 農業特定技能協議会の構成員となること

協議会については派遣に限らず、受入れ事業者はかならず加入する必要があります。

Q:JAは派遣事業者になれますか?

A:JAも派遣事業者になることができます

先ほど、派遣事業者になるための要件で「農業関連事業をおこなっている事業者」とあげましたが、これは農業協同組合、農業協同組合連合会、農業者が組織する事業協同組合などが想定されます。

ただし、労働者派遣事業については「純資産額が負債総額の 7 分の 1 以上であること」という許可要件があるため、信用事業を行っているJAで貯金量が多いところでは、許可を取得できない場合があります。【労働者派遣法第 7 条第 1 項第 4号】【労働者派遣事業関係業務取扱要領(厚生労働省労働基準局)第3の1(8)許可要件(許可の基準)ニ 法第 7 条第 1 項第 4 号の要件】

つまり、金融サービスをおこなっているJAグループでは、貯金量が多いと派遣事業の許可がおりないこともあるので注意が必要です

Q:農業者(農家・農業法人)が直接雇用することはできますか?

A:もちろん、個人事業の農家であっても農業法人であっても、農業者が受入機関としての基準を満たしていれば直接雇用することが可能です。

受入機関の基準についてはこのあと『特定技能受入れ機関の基準』でくわしく解説します。

Q:JAが直接雇用することはできますか?

A:JAが直接雇用することも可能です。JAが直接雇用する場合、JA直営型農業に従事させることも、農業者から請け負った業務に従事させることも可能です。

JAは、地域内の複数の農業者から業務を請け負って外国人に従事させることができるので、外国人も複数の農業者のもとで業務に従事することが可能です。

 

上の図を見ていただくとわかるように、請け負った業務に外国人を従事させる場合は、作業の指揮命令は個々の農業者ではなく、雇用契約を結んでいる業務を請け負っているJAがおこなう必要があります。

同じJAが雇用する場合でも、派遣と請負では指揮命令をする立場が異なるので注意が必要です。

農業分野で従事できる業務

Q:農業分野で従事できる業務を教えてください。

A:農業分野の特定技能外国人が従事できる業務は大きく2つに分けられます。

  • 耕種農業全般の作業
  • 畜産農業全般の作業

 

上の図を見ていただくとわかりやすいと思いますが、耕種農業なら栽培管理・農作物の集出荷・選別など、畜産農業なら飼養管理・畜産物の集出荷・選別など、それぞれの業務区分のなかで幅広く作業に従事することが可能です。

ただし、耕種農業であれば栽培管理、畜産農業であれば飼養管理の業務に、在留期間中に必ず従事させる必要があります。

つまり在留期間中、栽培管理の業務をおこなわずに農作物の選別作業だけに従事させる、飼養管理の業務をおこなわずに畜産物の出荷作業だけに従事させるということはできないのです。

また、同じ農業者のもとで作業する日本人が普段からおこなっている関連業務は、外国人も付随的に従事することができます。

例えば、農畜産物の製造・加工・運搬・販売の作業・冬場の除雪作業などが関連業務にあたりますが、これらをメインに従事することはできません。

Q:耕種と畜産の両方の業務に従事することはできますか?

A:基本的にはどちらかの業務に従事することになりますが、場合によっては両方に従事することも可能です。

というのは、(のちほど『特定技能の受入れと外国人の基準』でくわしくお伝えしますが)試験を受けて特定技能を取得する場合に、農業ではそれぞれの業務区分によって受験する試験が異なります。

ですので、通常はどちらかを受験し、合格した方の業務に従事することになります。両方の業務に従事するためには、両方の試験に合格しなくてはいけません。

(または、技能実習で実習をしなかった方の試験を受験して合格する必要があります。)

しかし、作物を栽培しながら家畜も飼養している(またはその逆の)農家さんもいらっしゃると思います。

このように、複合経営を営んでいる農業者が特定技能外国人を受入れた場合でも、一方の業務にしか従事できないのかといえば、そんなことはありません。

(農業者が耕種と畜産の複合経営を営んでいる場合で)日本人従業員が通常耕種と畜産の両方に従事している場合は、特定技能外国人も試験に合格していない方の業務に関連業務として付随的に従事することができます。

例えば、耕種農業で特定技能外国人を受入れている農業者が複合経営として畜産農業も行っている場合で、その農業者で働く日本人が日常的に耕種と畜産の両方に従事している場合は、特定技能外国人も同じように畜産農業の業務に付随的に従事することが可能です。

ですが、ここで注意しなくてはいけないのは、「日本人従業員が通常両方の業務に従事している場合」という点です。

複合経営の場合であっても、耕種農業と畜産農業の業務が各々切り離されていて、そこで働いている日本人従業員が片方の業務しか行っていないような場合は、特定技能外国人も片方の業務(業務区分)にしか従事することはできません。

この点に注意してください。

 

Q:養蜂業は農業分野の受入れ対象ですか?

A:養蜂業は、日本標準産業分類の「その他の畜産農業」に分類されるため、畜産農業で受入れが可能です。

技能実習の畜産農業職種に含まれていない作業でも、特定技能の場合は飼養管理業務が含まれていれば受入れることができます。

他にも、「養鶏場は畜産農業で受け入れできますか?」「きのこ栽培は耕種農業で受け入れできますか?」という質問をいただくこともあるので解説しておきましょう。

養鶏場は、GPセンターで卵の洗浄や仕分けをする場合は飲食料品製造業での受入れになり、(畜産)農業分野で受入れる場合は、必ず飼養管理の業務に従事しなくてはいけません。

きのこ栽培の場合は、菌種から栽培をおこなう場合は(耕種)農業分野で受入れできますが、山から原木を切り出してきのこを出荷する場合は林業に該当します。

判断に迷う場合は、農林水産省に相談してみるとよいでしょう。

特定技能の受入れと外国人の基準

Q:特定技能外国人として受入れる外国人の基準はありますか?

A:どの分野でも同じですが、特定技能として働くには分野ごとの試験に合格するか、特定技能に移行可能な職種の技能実習2号を良好に修了する必要があります。

では、農業分野の試験や技能実習の職種について解説しましょう。

農業分野の技能試験

従事できる業務内容でも少し触れましたが、農業分野では従事する業務区分によって受験する試験が異なります。

  • 耕種農業の場合・・・「農業技能測定試験(耕種農業全般)」
  • 畜産農業の場合・・・「農業技能測定試験(畜産農業全般)」

日本語能力試験

日本語能力については、業務区分に関係なく、以下のいずれかの合格が必要です。

  • 国際交流基金日本語基礎テスト
  • 日本語能力試験(N4以上)

技能実習からの移行

技能実習から特定技能へ移行する場合は、農業関係2職種6作業のいずれかで技能実習2号を良好に修了すると、技能試験と日本語能力試験が免除されます。

 

特定技能では区分内の業務全般に従事することができるため、上の図のように技能実習の作業内容と特定技能の業務内容は、同じ業務区分内であれば異なる内容でも移行可能です。

例えば、養豚作業で技能実習2号を修了した場合でも特定技能では酪農の業務に従事することが可能、といえばわかりやすいでしょうか。

ただし、養豚作業で技能実習2号を修了し耕種農業の特定技能へ移行するなど、異なる業務区分への移行はできないので、その場合は技能試験を受ける必要があります。

Q:特定技能外国人を受入れるために必要なことはなんですか?

A:特定技能外国人を受入れるための基準は、すべての分野で共通しているものと農業分野特有のものがあるので、分けて解説しましょう。

すべての分野で共通している基準

  • 雇用契約が適切であること
  • 法令を遵守するなど、受入れ機関自体が適切であること
  • 分野別協議会の構成員になること
  • 外国人を支援する体制を整えること

雇用契約は、業務内容・雇用形態・労働時間・報酬が適切であることが求められますが、農業の場合は他の分野とは異なるポイントがあるのでかんたんに解説します。

まず、通常は労働基準法で決められた労働時間・休憩・休日などを守る必要がありますが、農業の場合はそれが日本人でも外国人でも適用されません。

次に、特に耕種農業の場合、作物が育たない農閑期には母国へ帰国することができますが、帰国している間は在留期間にカウントされません。

特定技能1号の在留期間は通算5年までですが、例えば半年間は農業に従事し、残る半年間は帰国するという場合、最長10年間特定技能として雇用できるなど、農業特有の性質にあわせた働き方ができるのが他の分野とは異なるポイントです。

ただし、優秀な人材に長く働いてもらうためにも、一方的ではなく外国人の希望を聞くなどして働きやすい環境を整えるとよいでしょう。

農業分野特有の基準

その他に農業分野だけに定められた基準として、特定技能外国人を直接雇用する場合、受入れ機関には労働者を一定期間以上雇用した経験が求められます。

これだけでは少しわかりにくいと思いますのでもう少しわかりやすく解説すると、過去5年以内に1人の労働者を、少なくとも6ヵ月以上継続して雇用した経験が必要ということです。

また、特定技能外国人を受入れている個人の農業者が法人化して代表となったとしましょう。その場合、個人事業主として雇用していた経験も含まれるため、法人化しても継続して外国人を雇用することが可能です。

Q:6か月以上継続して雇用した経験というのは、アルバイトや技能実習生も含まれますか?また、複数人の累積でもよいのでしょうか?

A:アルバイトやパート、技能実習生でも問題ありません。

ただし、例えば3人の労働者を2ヵ月ごとに入れ替わりで6ヵ月雇用したとしても、認められません。

あくまでも、1人の労働者を継続して6ヵ月雇用した経験が求められます。

Q:「6か月以上の雇用経験」は日本人を雇用した経験でも可ですか?

A:日本人でも大丈夫です。日本人の正社員でも、アルバイトでもパートタイムでも、1人を継続して6ヵ月雇用した経験があれば問題ありません。

Q:緩和された「雇用経験」の要件について教えてください。

A:先ほど、1人の労働者を6ヵ月以上継続して雇用した経験が必要とお伝えしましたが、2022年10月にこの条件が緩和されました。

これに準ずる経験として「過去5年以内に6ヵ月以上継続して労務管理に関する業務に従事した経験」でも受入れが可能となりました。

条件が緩和された理由としては、家族農業で労務管理に関する業務をおこなっていた子どもが親の経営を引き継いだ場合や、労務管理に関する業務を行っていた従業員が独立した場合でも、継続して外国人を受入れられるようにするためです。

Q:6ヵ月以上継続して労務管理に関する業務に従事した経験というのも、1人の労働者に限られるのですか?

A:1人でなくても問題ありません。同じように1人の労働者で6ヵ月では条件がゆるくなっていないと感じる方もいるかもしれませんが、安心してください。

労務管理に関する業務の経験については、1人の労働者でなくても大丈夫です。例えば、2人の労働者の労務管理に従事し、合計で6ヵ月以上になれば認められます。

ただし合算する場合は、継続して6ヵ月以上の経験が必要なので注意が必要です。

 


以上、特定技能農業分野のよくある質問について回答しました。

農業分野は、1年をとおして仕事量が安定しない、天候によって収穫量が左右される、重労働のイメージなどから新規就労者が増えにくく、若い担い手が不足しています。

特定技能制度は農業分野の特性に柔軟に対応した受入が可能なので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

ご参考になれば幸いです。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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