【インタビュー】行政書士に聞く支援責任者・支援担当者の要件(実務版)

日本で働く特定技能外国人が増えている昨今、登録支援機関の必要性はますます高まっています。

本日は、これから登録支援機関になることを考えている方に向けて、支援責任者と支援担当者について、特定技能ねっとを運営する行政書士の小澤先生に、実務的ポイントを交えてお話を伺います。

小澤先生、よろしくお願いします。

小澤 よろしくお願いします。

 

登録支援機関、支援責任者・支援担当者の概要

早速ですが、そもそも支援責任者、支援担当者というのはどのようなものなんでしょうか?

小澤 はい。支援責任者、支援担当者について理解してもらうために、まずは特定技能制度の概要をざっと見てみましょう。

外国人が日本に在留するためには、必ず「在留資格」が必要です。

在留資格には沢山の種類がありますが、その中の1つとして「特定技能」という在留資格があります。

 

なるほど。

小澤 「特定技能」の在留資格の外国人を雇用するためには、雇用主側には様々な要件が課せられるのですが、中でもポイントとなる大事な要件があります。

それは、「外国人に対して法令で決められた『支援』をおこなう」ということです。

 

この支援は、外国人を雇用する雇用主が自社でおこなうこともできますが、その場合は雇用主側の要件が上乗せされます。中小企業だとこの上乗せ要件がクリアできないことがあるので、その場合は支援を外部に委託することで雇用主は支援義務が免除されます。

 

なるほど、支援を外部に委託することで、雇用主は本業に専念できるということですね。

小澤 その通りです。ただし、支援は誰に委託してもいいわけではなくて、法務省に登録された「登録支援機関」に委託する必要があります。

「登録支援機関」でない機関に支援を委託しても、雇用主の支援義務は免除されないので注意が必要です。

 

そして、委託を受けた登録支援機関は、雇用主に代わって外国人に対する支援を実施します。

これが登録支援機関の役割です。

 

なるほど。

小澤 そして、登録支援機関になるためには、必ず登録支援機関の中に支援責任者と支援担当者を選任している必要があります。

 

支援責任者と支援担当者を選任していないと登録支援機関になることができない、ということですか?

小澤 その通りです。整理するとこういうことです。

 

  1. 特定技能外国人を雇用するためには「支援」をおこなう必要がある。
  2. 支援を外部に委託する場合は「登録支援機関」に委託する必要がある。
  3. 登録支援機関になるためには「支援責任者と支援担当者」を選任している必要がある。

 

ありがとうございます。よく理解できました。でも支援責任者と支援担当者になる人にも色々要件があるんですよね。

小澤 そうです。今から支援責任者と支援担当者の要件について説明します。

支援責任者・支援担当者の要件

小澤 登録支援機関になるための要件のひとつに、「受入れ・経験等の実績要件」というのがあります。

この要件は(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の4種類にわかれているんですが、支援責任者、支援担当者の要件が問題となるのは(ハ)です。

実務上ポイントになるのも(ハ)ですので、ここでは(ハ)に絞って説明します。

(イ)~(ニ)の各要件については、以下に記載があるので、時間のある人は確認してみてください。

入管法施行規則(出入国管理及び難民認定法施行規則)第19条の21第3号

さて、「受入れ・経験等の実績要件」の(ハ)の文言は以下の通りです。

登録支援機関になろうとする者において選任された支援責任者及び支援担当者が、過去5年間に2年以上、法別表第1の1の表、年以上、法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上覧の在留資格をもって在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した一定の経験を有するものであること。

 

難しくてよく理解できないのですが、、

小澤 安心してください。かみ砕いて説明します。

 

「法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上覧の在留資格」というのは、「就労することが可能な在留資格」のことです。

具体的には「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「特定技能」などが該当します。

「生活相談業務に従事した一定の経験」とは、例えば技能実習の監理団体で実習生に対する相談業務をしていたとか、人材派遣会社で「技術・人文知識・国際業務」の外国人に対して生活相談業務をおこなっていた、などが該当します。

つまり、「受入れ・経験等の実績要件」の(ハ)は次のように言い換えることができます。

過去5年間に2年以上、就労系在留資格で在留する外国人に対して生活相談業務をおこなった経験がある者が、支援責任者・支援担当者として選任されていること。

これが「受入れ・経験等の実績要件」の(ハ)で求められている要件です。

 

なるほど。なんとなく理解できました。

小澤 次は、実際に登録支援機関の登録申請をするときの、実務上のポイントについてお話しします。

 

お願いします。

支援責任者・支援担当者の実務的ポイント

生活相談を無償でおこなっていた場合

支援責任者・支援担当者には、生活相談業務の経験が必要ということでしたが、ボランティアで外国人の相談に乗っていた場合はどうでしょうか?

小澤 ボランティアで外国人の相談に乗った経験は「生活相談業務に従事した一定の経験」には該当しません。あくまで「業務として生活相談をした経験」が必要です。

 

「業務として」とは、具体的にはどういうことですか?

小澤 自分が所属している(または所属していた)会社の業務として、報酬を受けて生活相談をしている場合などが該当します。

自分が所属している会社でなくても、他の会社との契約に基づいて、報酬を受けて生活相談をしている場合も、「業務として生活相談をした経験」になります。

 

「報酬」を受けている業務であることが必要、ということでしょうか。

小澤 その通りです。「生活相談業務に従事した一定の経験」として認められるためには、「生活相談によって報酬を受けている」ことが必要です。

無償でおこなった生活相談は、「生活相談業務に従事した一定の経験」とは認められません。

 

なるほど。「生活相談によって報酬を受けている」ことは、何等かの証明書の提出が必要でしょうか?

小澤 はい。必要です。従事した内容や期間がわかる在籍証明書や、生活相談業務の契約書・報酬の明細書・振込額が記載された通帳コピーなどを提出する必要があります。

 

すると、指定された証明書が準備できない場合は登録支援機関になれないのでしょうか?

小澤 一概にそうとは限りません。「業務として生活相談をした経験」を証明することが目的ですから、何らかの方法で証明すれば、登録支援機関になれる可能性はあります。

経験上から言うと、「業務として生活相談をした経験」が事実であれば、証明する方法は見つかることが多いです。

兼任の可否

支援責任者と支援担当者には、別々の人を選任する必要はありますか?

小澤 いいえ。支援責任者と支援担当者は別々の人間でなくても構いません。

実務上も、1人の人が支援責任者と支援担当者を兼任していることはよくありますし、兼任は可能です。

もっとも、支援担当者1人が支援を担当できる特定技能外国人の人数には限界がありますので、支援人数が増えたら支援担当者も増員する必要はありますが、それはまた別の問題です。登録申請の時には、支援責任者と支援担当者=1名(兼任)で問題ありません。

 

常勤性について

小澤 さて、兼任の可否とは別に、「常勤性」にも注意する必要があります。

支援責任者と支援担当者の常勤性について、特定技能運用要領には、以下の記載があります。

支援責任者:常勤であることを問わない

支援担当者:常勤であることが望まれる

つまり、支援責任者は、登録支援機関の役職員であれば、常勤でも非常勤でもどちらでも構いません

一方で支援担当者は、支援業務をおこなう事務所に所属する常勤の役職員である必要があります

 

支援担当者が常勤ということは、1人が兼任する場合はどうなるのでしょうか?

小澤 鋭い質問ですね。支援担当者に常勤が望まれているので、1人が支援責任者と支援担当者を兼任する場合は、必然的に支援責任者にも常勤が望まれることになります。

もっとも、「常勤であることが望まれる」ということと、常勤が法的義務であることは別のことですので、支援担当者が常勤でないと絶対に登録支援機関になれないわけではありません。

 

どういうことでしょうか。

小澤 ここで言う「望まれる」の文言の意味は、必ずしも法的拘束力を伴わないと解釈できるからです。

そもそも特定技能制度の法的根拠は、入管法や入管法施行規則、基準省令などの法令にあります。

一方で特定技能運用要領は、法令をわかりやすく解説した文書であって、法令そのものではありません。

法令に規定されていることには拘束力がありますが、運用要領には拘束力はありません。

そして法令には、支援担当者が常勤でなければならない旨の明文規定はありません。

したがって、運用要領に記載された支援担当者に関する「常勤であることが望まれる」の記述には必ずしも拘束力は無いと解釈できます。

 

とはいえ、わざわざ運用要領に「常勤であることが望まれる」と書いてあるということは、制度の趣旨から考えても「常勤であることが望ましい」と解釈することもできますし、支援担当者は実際に支援の実務に従事するのが任務ですので、支援担当者にはできる限り常勤の役職員を選任するべきです。

 

なるほど。

小澤 登録支援機関の登録申請をおこなう際は、文言だけにとらわれるのではなく、制度の趣旨を考えて、支援業務の体制を整えられるかどうかを考えることが大切です。

一見、要件に合致していないように見えても、丁寧に準備をして支援体制を整えることで、要件に合致して登録支援機関になれるケースもあります。

 

これから登録支援機関になろうとしている人は、この点を意識して準備をしてください。

 

大変参考になりました。

本日は、「特定技能ねっと」を運営している行政書士の小澤先生にお話を伺いました。

小澤先生、本日はありがとうございました。

小澤 ありがとうございました。

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