※この記事では「ビルクリーニング分野」に特化してお伝えします。他分野では要件等が異なることもありますのでご注意ください。
少子高齢化による労働環境の首都圏集中などにより、国土の狭い日本では建物の高層化が進み多くのオフィスビルが立ち並んでいます。
そのため、ビルクリーニング分野においては人手不足が深刻な問題となっており、特定技能ビザを受けられる14業種12分野のうちの一つに指定されています。(2022年5月に製造3分野が一つに統合されたため、現在は全12分野となっています)
ビルクリーニング分野で特定技能外国人の雇用を検討している企業の採用担当者様向けに、特定技能の専門家行政書士がわかりやすく解説します。
目次
特定技能ビザとは?
特定技能ビザとは、ビルクリーニング分野を含む人手不足が深刻な14業種12の特定産業分野において、特定技能1号は最長5年間、2号は更新に上限のない就労を認めた在留資格(ビザ)です。(2023年6月の閣議決定により、これまで建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象だった特定技能2号の受入れが、介護分野を除くすべての分野・区分で可能になりました)
※「在留資格」とは外国人が日本で仕事をするために必要な資格のことで一般的には「ビザ」と呼ばれています。
これまでも就労可能なビザはありましたが、単純労働が制限されていたり、(単純労働ができても)週28時間までという時間制限があったりと、人手不足を解消するためのビザはありませんでした。
こうした中、深刻な人手不足を背景に、ビルクリーニングを含む14種の特定産業分野にかぎり、外国人材が単純労働を含め幅広い業務に従事できるビザが2019年4月に新設されました。
これが、「特定技能ビザ」です。
※特定技能の説明として、政府の公式資料では今でも「単純労働」の文言は使用されていません。あくまでも「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人」という表現が使用されています。しかし一般的には上記のように単純労働可能なビザと理解されています。
ビルクリーニング分野における特定技能外国人の活用その1「従事できる業務内容」
ビルクリーニング分野において、特定技能外国人を従事させることができる具体的な業務は、【建物内清掃】です。
特定技能1号、特定技能2号それぞれの業務内容を見ていきましょう。
特定技能1号外国人が従事できる業務
清掃する対象の建物:多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く※)の内部
※主にオフィスや学校、興行場、店舗など延べ面積が3000平方メートル以上ある特定建築物
2023年4月10日追記:ビルクリーニング分野の対象になるのは「特定建築物」に限りません。通常の「建築物」も可です。
ただし、不特定多数が利用することが要件なので「住宅」は除外されます。
以上追記
作業内容:衛生的環境の保護や美観の維持を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法や洗剤、用具を適切に選択して清掃作業をおこない、汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務。
特定技能2号外国人が従事できる業務
清掃する対象の建物:多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部
作業内容:衛生的環境を保護や美観を維持を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法や洗剤、用具を適切に選択して清掃作業をおこない、汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務に従事しながら、複数の作業員を指導し現場を管理する業務。同業務の計画作成や進行管理、その他のマネジメント業務。
特定技能1号も2号も清掃できる場所は同じですが、従事できる業務に少し違いがあります。
特定技能2号は清掃業務に加え、現場の管理やマネジメント業務の能力も求められるようになります。
業務内容には「ベッドメイキング」も含まれる(ただし関連業務として)
上記の「建物内清掃」には、ホテル等の宿泊施設の客室のベッドメイキングも含まれています。客室以外のベッドメイキングも「関連業務」(当該事業所において従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事する場合可能)として認められます。
2023年4月10日追記:ビルクリーニング分野での業務は「主たる業務」と「関連業務」に分けられます。
「主たる業務」とは、名前の通り、ビルクリーニング分野の特定技能外国人が(もっぱら従事することが可能な)主な業務です。
対して「関連業務」とは、それのみを主たる業務として従事することは不可な業務で、主たる業務をおこないつつ、付随的に従事することが可能な業務です。
(「同じ業務に従事する日本人が、通常その関連業務に従事している場合」に特定技能外国人もその関連業務に従事することが認められます。)
そして、ビルクリーニング分野の主たる業務は「清掃」です。「整備」は原則として関連業務になります。
ホテル・旅館等の宿泊施設の「客室の清掃」(床の清掃など)は、明らかに「清掃」なので「主たる業務」として認められます。
一方で「ベッドメイキング」は、シーツを交換したり、整えたりする作業なので「清掃」と言えるかは疑問があり「整備」に該当します。
なので、「ベッドメイキング」は「関連業務」になります。
この点、「客室のベッドメイキングは主たる業務として従事可能」と誤解している人が非常に多いです。かく言う当サイトも、上記の打消し線の文章の様に、そう誤解させるような記事を公開していました。
しかし、これは完全に間違いです。客室清掃は主たる業務で、ベッドメイキングは関連業務というのが厚生労働省の見解です。(厚生労働省に確認済み)
以上追記
ビルクリーニング分野と同じく、特定技能ビザで就労できる特定産業分野のひとつに「宿泊」がありますが、宿泊業界も慢性的な人手不足に悩まされています。清掃もベッドメイキングも可能なビルクリーニング分野の特定技能外国人は、両業界にとって貴重な戦力として期待されています。
ビルクリーニング分野における特定技能外国人の活用その2「受け入れ企業の基準と要件」
では次に、雇用する企業側に必要な要件をみていきましょう。
1412業種すべての分野で満たすべき基準
特定技能外国人を雇用するために、受入れ機関が満たさなくてはいけない条件が決められています。
例えば労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること、1年以内に受入れ機関側の事由で離職者や行方不明者を発生させていないこと、特定技能外国人の雇用を継続できる体制が整っていること等です。
「受入れ機関側の事由による離職者」というのは、会社側の都合による人員整理、労働条件・就業環境に問題があり退職した場合等をいいます。
つまり、労働者側の都合による退職(自発的離職)は問題ありませんが、会社側の都合によって離職(非自発的離職)させていないことが求められます。
またこの要件の離職者に該当するのは「特定技能外国人が従事することになっている業務と同種の業務に従事していた労働者」で、特定技能外国人だけでなく、フルタイム雇用されている日本人・中長期在留者・特別永住者も含まれます。
その他、『分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)』という項目があります。
ビルクリーニング分野における「分野に特有の基準」とは?
ビルクリーニング分野特有の基準は以下の3つです。
分野に特有の基準① 「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録
建築物衛生法の「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録」に定められた以下のいずれかの登録を受けていないと、特定技能外国人を雇用することはできません。
- 建築物清掃業(法第12条の2第1項第1号)
- 建築物環境衛生総合管理業(法第12条の2第1項第8号)
登録は法人単位ではなく営業所単位で、都道府県知事によっておこなわれます。
分野に特有の基準② ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入
受入れ機関は「ビルクリーニング分野特定技能協議会」への加入が必要です。
協議会は特定技能制度の適切な運用を図るために、各分野の所管省庁が分野ごとにそれぞれ設置しています。
ビルクリーニング分野に限らず特定技能外国人を受入れる所属機関は、分野ごとの協議会の構成員になる必要があります。
また、分野によっては特定技能外国人の支援をおこなう登録支援機関にも協議会への加入を義務付けている場合がありますが、ビルクリーニング分野では登録支援機関は協議会に加入することはできません。
受入れ機関が加入するタイミングは、特定技能外国人を初めて受け入れる際、その外国人が入国してから4か月以内です。
それまでに加入していないと、特定技能外国人の雇用を続けることができなくなります。
ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入にあたり、費用はかかりません(2021年3月現在)。
入会手続きは、厚生労働省のホームページからオンラインで申請をおこないます。
分野に特有の基準③ 調査や指導への協力
協議会の構成員は、協議会に対してや、厚生労働大臣が実施する調査等に必要な協力をおこなうことなどが求められます。
必要な協力をおこなわない場合、特定技能所属機関としての基準を満たさないことになるため、特定技能外国人の雇用を継続することも新たな特定技能外国人の受入れもできなくなります。
「特定技能」ビザは、2019年4月に創設されたばかりの新しい制度です。
出入国在留管理庁や管轄省庁の調査には積極的に協力し現場の声を伝えていくことで、「特定技能ビザ」が日本企業にとっても外国人にとっても、より良い制度になっていくことが期待できます。
ビルクリーニング分野における特定技能外国人材の活用その3「外国人側の要件」
次に、雇用される外国人本人に必要な要件を、特定技能1号と2号に分けて見てみましょう。
特定技能1号になるための要件
特定技能1号ビザには当該分野に関連する学歴や実務経験の要件はなく、ビザ取得には「試験に合格する」か「技能実習を良好に修了する」方法の2通りのルートがあります。
【ポイント】 2020年4月以降、国内試験の受験資格が拡大され、在留資格を有する外国人は一律に受験できるようになりました。
以前は、「中長期在留者および過去に中長期在留者として在留していた経験を有する方」に限られていましたが、過去に中長期在留歴がなくても「短期滞在」ビザで入国し、受験することが可能です。
試験に合格する
「試験に合格する」ルートは、日本語試験と技能試験に合格することでビザ申請が可能になります。
日本語能力試験
2つの日本語試験のどちらかに合格する必要があります。
- 「日本語能力判定テスト JFT-Basic」
- 「日本語能力試験 JLPT」N4以上
JFT-Basicは、「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」から構成される試験で、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力があるかどうかを判定します。
JLPTのN4は、以下のように基本的な日本語を理解することができるレベルです。
【読む】基本的な語彙や漢字で書かれた身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
【聞く】日常的な場面で、ややゆっくり話される会話をほぼ理解できる。
技能試験
「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」(公益社団法人全国ビルメンテナンス協会実施)
実技試験により、写真・イラストを用いた判断試験、ビルクリーニングをおこなう作業試験がおこなわれます。
ビルクリーニングに関する「作業の段取り」「器具の使用」「資材の使用」「機械の使用」「各部位の清掃」「各場所の清掃」「廃 棄物処理作業」「資機材の整備」の各業務が適切に遂行できることを確認する試験です。
過去の試験問題や学習教材、試験の実施状況についての詳しい情報は、「公益社団法人全国ビルメンテナンス協会」のホームページで見ることができます。
技能実習を良好に修了する
「技能実習を修了する」ルートは、ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の技能実習2号を良好に修了した場合に、上記の特定技能1号評価試験と日本語試験を受けることなくビザが申請できます。
ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業以外の技能実習2号を良好に修了した外国人がビルクリーニング分野で特定技能1号となるには、日本語試験は免除されますが、特定技能1号評価試験に合格しなくてはいけません。
特定技能2号になるための要件
特定技能2号には熟練した技能が求められるため、ビザを取得するには「試験合格」に加え「実務経験」も必要です。
試験合格
- ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
- 技能検定1級
どちらかに合格する必要があります。(どちらも公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施)
実務経験
「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けた営業所がおこなう建築物(住宅を除く)内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験が2年以上必要。
ビルクリーニング分野における特定技能外国人の活用その4「雇用の流れ」
受入れ機関側と外国人側の要件が整ってから、外国人に就労してもらうまでのおおまかな流れは以下の通りです。
【Step1】 人材募集・面接
日本人の雇用と同様に、外国人人材の採用活動を行います。※特定技能ビザ申請の要件を確認
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【Step2】 雇用契約
法令を遵守(※)し、雇用契約を締結する。
※給与や休日などの待遇が日本人と同様である上に、外国人社員ならではの出入国のサポートや生活状況の把握なども必要です。
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【Step3】 支援計画の策定
1号特定技能外国人を雇用する場合、外国人が日本で安定して生活し働くことができるよう、法律によって定められている支援を行う必要があります。(当サイト内「【特定技能初めの一歩】これだけ読めば制度の全体像がつかめます!」で詳しく解説しています。)
事前ガイダンスから住居の確保、就労後3カ月に1回の面談など10項目が義務付けられています。
この支援は外部の登録支援機関に委託することも可能です。
※「1号特定技能外国人」を雇用する場合には「支援計画」の策定が必要となりますが、「2号特定技能外国人」を雇用する場合には不要です。
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【Step4】 ビザ申請
いよいよ必要な書類をそろえて、出入国在留管理庁へビザの申請を行います。
書類に不備があると追加資料が要求され余分に時間がかかることになるので、慎重に準備をしてください。
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【Step5】 入国または就労開始
外国人雇用における注意点とアドバイス
ここまでご説明してきたように、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を雇用するには、企業側にも外国人側にも様々な要件や準備が必要となります。また入管法や労働法など、広い法律知識が必要とされる場面もあります。
これらを日常業務に加えて自社でおこなうことは難しいとお考えの事業者様もたくさんいらっしゃいます。
当事務所ではこれからビルクリーニング分野で特定技能外国人の雇用をお考えの事業者様に対して、各種法令知識に基づいたコンサルサービス、ビザ申請書類作成代行サービス、雇用後の支援サービス等をご提供しています。
特定技能関連業務に特化した経験豊富な行政書士事務所が御社をしっかりサポートいたします。
お困りの方はぜひご相談ください。
業務の流れ
ご相談からサポートまでは以下の流れとなります。
1.お問合せ
初回のご相談は無料です。
お電話またはお問い合わせフォームからお問い合わせください。
2.ご相談
御社の状況を丁寧にヒアリングいたします。
3.お見積もり
サービスにかかる費用をお見積もりいたします。
4. ご契約・ご入金
前金制となっております。
5.業務に着手
典型的なケースでの料金のめやす
以下は典型的なケースでの料金のめやすです。
事前調査
【調査費用】
70,000円(税込み77,000円)から
他の事務所では通常「ビザ申請」を受任した後に必要資料を収集します。
どの事務所も、ビザ申請受任前に条件を満たしているか簡単なヒアリングはおこないますが、実際に必要資料を収集した後で問題(特定技能の条件を満たしていない)がわかるケースも少なくありません。解決可能な問題ならいいですが、解決が難しく途中で断念してしまうこともあります。
このような事態を防ぐために、当事務所では業界でも珍しい「事前調査」のサービスをおこなっています。
【事前調査サービスの内容】
・御社の事業が特定技能14業種12分野に該当するか
※ビルクリーニング事業をおこなっている事業者の全てが特定技能「ビルクリーニング」分野に該当するとは限りません。
・税金、社会保険等の条件をそなえているか
・採用予定者が特定技能ビザの条件をそなえているか
※すでに他のビザで日本に在留中の外国人が特定技能に変更する場合、在留中の状況が審査されます。例えば「留学」で在留中にアルバイトのしすぎがあったり、税金等の未納があるとビザは許可されません。これらを事前に調査いたします。
・支援体制を満たしているか。(自社支援が可能か)
※雇用後の支援は自社でおこなうか、登録支援機関に委託するかを選べます。事業者の規模によっては自社で支援をおこなった方がコストが安くなる場合がありますが、自社支援が認められるためには一定の条件を満たしている必要があります。この条件を満たしているかどうか、事前に調査をおこないます。
・その他、特定技能外国人を雇用するための諸条件を満たしているか。
特定技能ビザ申請
【特定技能ビザ申請書類の作成・提出代行費用】
150,000円(税込み165,000円)から (「事前調査」をご依頼いただいている場合は80,000円(税込み88,000円)から)
当事務所は、出入国在留管理局に届出をした「申請取次者」の資格をもっているので、ビザ申請書類の作成から提出までを代行することができます。事業者様や特定技能外国人は入管に行く必要はありません。
特定技能外国人支援委託
【委託料】
特定技能外国人1名あたり30,000円(税込み33,000円)/月
当事務所は登録支援機関として法務省から登録を受けています。登録番号:19登-000994
支援業務を委託されたい事業者様には当事務所で支援委託を承ります。
※自社で支援をご希望の事業者様には、こちらから支援委託を無理強いすることはありません。
特定技能所属機関顧問
【顧問料】
要相談
特定技能所属機関の規模や受入れ人数によって異なります。ヒアリング後、具体的な費用をお見積もりいたします。
手続きに必要な期間のめやす
「事前調査」1か月程度
「特定技能ビザ申請」2か月程度
初回のご相談時にご準備頂くとスムーズなもの
- 会社案内(事業の概要がわかる資料)
- 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)※コピーでも結構です
- 決算報告書(貸借対照表、損益計算書)