【徹底解説】随時届出の書き方(4) 受入れを継続することが困難となったとき

特定技能外国人を雇用する特定技能所属機関は、入管法に基づいて特定技能外国人についての各種届出をおこなうことが義務付けられています。

当ホームページでは特定技能所属機関の方に向けて、届出に必要な書類や書類の書き方についてご紹介しています。

今回は、随時届出の一つである「受入れ困難に係る届出」について、特定技能の受け入れサポート実績のある行政書士が分かりやくす解説します。

随時届出とは

特定技能所属機関がおこなう届出には、受入れ・活動状況や支援の実施状況を四半期ごとに報告する「定期届出」と、特定技能外国人についての変更があったときにおこなう「随時届出」があります。

5種類の随時届出

特定技能所属機関がおこなう特定技能外国人についての「随時届出」は、変更事由ごとに大きく5つの届出に分けられます。

    1. 特定技能雇用契約に係る届出
    2. 1号特定技能外国人支援計画変更に係る届出
    3. 登録支援機関との支援委託契約に係る届出
    4. 受入れ困難に係る届出
    5. 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為に係る届出

この記事では「4. 受入れ困難に係る届出」について、届出に必要な書類と書類の書き方を解説します。

随時届出をおこなうのは特定技能所属機関

随時届出は特定技能所属機関が届け出るものと登録支援機関が届け出るものがありますが、上記5つの特定技能外国人に関する随時届出は、特定技能所属機関の責任において入管に届け出る必要があります。

例えば、届出の内容が登録支援機関の支援責任者の変更であっても、届出は特定技能所属機関がおこないます。

つまり、外国人の支援を登録支援機関に委託しているかどうかに関わらず、特定技能外国人についての随時届出をおこなうのは特定技能所属機関なので、間違えないように注意が必要です。

「受入れ困難に係る届出」が必要な事由と提出書類

「受入れ困難に係る届出」は、当初の雇用契約期間の満了前に雇用契約が終了する場合おこなうものです。

実際に退職するかどうかに関わらず、受入れが困難となったときに届け出る必要があります。

受入れ困難な事由とは

では、受入れ困難な事由とはどのような場合を指すのでしょうか。

以下は、届出が必要となる受入れ困難な事由の例です。

  • 特定技能所属機関の経営上の都合により、解雇の予告をした
  • 特定技能所属機関が基準不適合となった
  • 外国人の責めに帰すべき事由により解雇をした
  • 外国人から自己都合退職の申し出があった
  • 「特定技能」以外の在留資格へ変更申請をした(引き続き雇用する場合を含む)
  • 外国人の病気・ケガにより雇用の継続が困難になった
  • 外国人が行方不明になった
  • 個人事業主(所属機関)または外国人が死亡した

特定技能所属機関の都合により雇用の継続が困難になった場合は、外国人に特定技能の活動を継続する希望があるか確認する必要があります。

活動継続の希望がある場合には、ハローワークへ案内するなどの転職支援をおこなわなくてはいけません。

受入れ中に特定技能外国人が死亡したり労災が発生したりした場合、労働基準監督署や警察にも届け出るなど、適切な対応をとる必要があります。

「受入れ困難に係る届出」に必要な書類

上記の受入れ困難な事由が発生した場合、提出する書類は次の2つです。

  • 受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号)
  • 受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書(参考様式第5 -11号)

また「受入れ困難に係る届出」をおこなったあとに特定技能雇用契約が終了した場合は、下記の書類を提出して「特定技能雇用契約に係る届出」もおこなう必要があります。

  • 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-1-2号)

例えば、退職の申し出があった当日に雇用契約を終了したなど、受入れ困難となったときから雇用契約の終了までが14日以内の場合、「受入れ困難に係る届出」と「特定技能雇用契約に係る届出」を同時におこなうことができます。

また、次の場合は在留カードが失効するため、雇用契約も終了します。

判明した時点で、先に「受入れ困難に係る届出書」を提出してから「特定技能雇用契約に係る届出」もおこないます。

  • 特定技能外国人が再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受けずに出国した
  • 特定技能外国人が再入国許可(みなし再入国許可を含む)を受け出国したが、期限内に再入国しなかった

なお、「受入れ困難に係る届出」をおこなったあとに事情が変わり雇用契約を終了しなかった場合は、「特定技能雇用契約に係る届出」をおこなう必要はありません。

ただし、復職した経緯について説明する文書を、追加書類として提出する必要があります。

「受入れ困難に係る届出」提出書類の書き方

では、「受入れ困難に係る届出」で提出する書類の書き方を解説していきます。

受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号)

雇用を継続するのが困難になった理由が、特定技能所属機関の都合によるのか特定技能外国人の都合によるのかで記入する箇所が異なるため、それぞれのケースごとに記入例をあげて解説します。

特定技能所属機関の都合により受入れ困難となった場合

引用:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」
クリックで拡大できます

 

「① 届出の対象者」の欄は、この届出の対象となる外国人について記入します。

対象となる特定技能外国人が複数いる場合は「別紙のとおり」と記入し、「参考様式第3-4号(別紙)」を使用します。

「② 届出の事由」は「特定技能所属機関の都合」にチェックを入れ、その下の「A 特定技能所属機関の都合」の欄のみ記入します。

「a 事由の区分」から受入れ(雇用の継続)が困難になった事由を選んでチェックを入れます。

「b 事由発生日」は、受入れが困難になった事由が発生(判明)した日付を記入します。

外国人が退職した日ではなく、例えば解雇の予告をした日、基準不適合となったときなどを記入します。

「c 事案の概要」は、受入れ困難となった理由を簡単に記入します。20文字で記入しきれない場合は「別紙のとおり」と記入し、任意書式で詳細を記入して添付します。

「B 特定技能外国人の都合」の欄は記入しません。

 

「③ 特定技能外国人の現状」は、この届出をおこなう時点で外国人と連絡が可能かどうか選択してチェックを入れます。

「④ 受入れ継続のための措置」の「A 活動継続の意思」は、「今後、引き続き同じ特定技能所属機関で働きたいという意思があるかどうか」について外国人に確認して該当するものにチェックを入れます。

例えば、特定技能として日本で働きたいが、別の特定技能所属機関に移りたいという場合は、「活動継続の意思なし(転職希望)」にチェックを入れます。

外国人と連絡が取れない場合は「確認不可能」にチェックを入れます。

「B 措置内容」は、活動継続の意思を確認したうえで外国人に対しておこなった措置を選択してチェックを入れます。

「⑤ 届出機関」の欄は、特定技能所属機関の情報を記入します。

「法人番号」は、個人事業主の場合は記入不要です。

「担当者」「本届出作成者の署名」欄は、支援を登録支援機関に委託している場合であっても、特定技能所属機関の役職員の氏名を記入します。

なお、署名欄は印字ではなく手書きで記入しなくてはいけません。

特定技能外国人の都合により受入れ困難となった場合

引用:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」
クリックで拡大できます

 

「① 届出の対象者」の欄は、この届出の対象となる外国人について記入します。

対象となる特定技能外国人が複数いる場合は「別紙のとおり」と記入し、「参考様式第3-4号(別紙)」を使用します。

「② 届出の事由」は「特定技能外国人の都合」にチェックを入れます。

「A 特定技能所属機関の都合」の欄は記入しません。

「B 特定技能外国人の都合」の「a 事由」から、受入れ(雇用の継続)が困難になった事由を選択してチェックを入れます。

「b 事由発生日」は、受入れが困難になった事由が発生(判明)した日付を記入します。

外国人が退職した日ではなく、例えば退職の申し出があった日、行方不明となったことが判明した日などを記入します。実際に退職するかどうかは関係ありません。

「c 事由の概要」は、「a 事由」で選択した事由について、理由を簡単に記入します。

20文字で記入しきれない場合は「別紙のとおり」と記入し、任意書式で詳細を記入して添付します。

「③ 特定技能外国人の現状」からは「特定技能所属機関の都合により受入れ困難となった場合」の書き方と同じですので、そちらを参照してください。

受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書(参考様式第5 -11号)

引用:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」
クリックで拡大できます

 

「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」には、受入れが困難になった経緯をできるだけ具体的に記入する必要があります。

1行目には受入れが困難となった外国人の氏名を記入します。

受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号)」の「② 届出の事由」で「特定技能所属機関の都合」にチェックを入れた場合は、「1 特定技能所属機関の都合による場合の具体的な事情」の枠内に理由を記入します。

「特定技能外国人の都合」にチェックを入れた場合は、「2 特定技能外国人の都合による場合の具体的な事情」の枠内に具体的に記入します。

「特定技能外国人の都合による場合」に記入する内容の例

  • 受入れ困難となる事由が発生するまでの経緯
  • 受入れ困難となる事由が発生した原因
  • 受入れ困難となる事由が発生後、特定技能所属機関がどう対応したか
  • 自己都合退職の申し出をした理由
  • 重責解雇する理由 など

「3 受入れ困難となるに至った後の対応等」にも、外国人の現状や対応した内容を具体的に記入します。

「4  特定技能外国人の連絡先」は、外国人と連絡が可能な場合に記入します。

外国人本人が契約する電話でなくても連絡を取ることができる場合は、その電話番号を記入します。

「6 特定技能外国人の法的保護のための案内実施の有無」は、届出対象の外国人が退職するにあたって情報提供した項目があれば、該当するものにチェックを入れます。

最後に特定技能所属機関の名称と、この説明書を作成した所属機関の役職員の氏名を記入します。

特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-1-2号)

「受入れ困難に係る届出」をおこない、実際に雇用契約が終了したあとに提出する書類です。

引用:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」
クリックで拡大できます

 

「① 届出の対象者」の欄は、届出の対象となる外国人について記入します。対象者が複数いる場合は「別紙のとおり」と記入し、「参考様式第3-1号(別紙)」を使用します。

「② 届出の事由」は「特定技能雇用契約の終了」にチェックを入れ、「A 契約の終了」の欄を記入します。

「a 雇用契約終了年月日」は、退職した日付を記入します。この日より前に届出をおこなうことはできません。

「b 終了の事由」は、「特定技能所属機関の都合による終了」「外国人の都合による終了」のどちらかにチェックを入れ、該当する事由を選んでチェックを入れます。

「c 委託契約を締結していた登録支援機関」は、外国人の支援の全部を登録支援機関に委託していた場合に、委託契約が終了した日付と登録支援機関の情報を記入します。

この欄に記入していれば、登録支援機関との契約終了に関して「支援委託契約の終了に係る届出書」を提出する必要はありません。

「B 新たな契約の締結」の欄は記入不要です。

「③ 届出機関」の欄は、特定技能所属機関の情報を記入します。

「法人番号」は、個人事業主の場合は記入不要です。

「担当者」は、特定技能所属機関の役職員の氏名を記入します。

「本届出書作成者の署名」は、この届出書を作成した特定技能所属機関の役職員が手書きで署名します。(印字では認められません)

 

「受入れ困難に係る届出」に必要な書類の書き方は以上です。

提出する書類が少ないですし、内容も簡単に感じられたのではないでしょうか。

ただ、外国人から退職の申し出があった場合などは、理由や経緯について具体的に記入しなくてはいけないため、きちんと理由を確認し対応する必要があります。

「受入れ困難に係る届出」届出の方法

「受入れ困難に係る届出」はいつ提出すればよいのでしょうか。

他の随時届出とは少し異なるため、しっかり確認しておきましょう。

届出はいつおこなう?

随時届出は、届出事由が発生してから14日以内に届出書を提出する必要があります。

届出事由の発生というのは、例えば雇用契約を変更する場合は、変更することが決まった日ではなく変更後の内容に効力が生じた日から14日以内ということです。

ただし、「受入れ困難に係る届出」の場合は実際に退職した日ではなく、解雇の予告をした日、退職の申し出があった日、外国人が怪我をして働けなくなった日など、雇用の継続が困難になったと判明した日から14日以内ということになります。

「受入れ困難に係る届出」をおこなったあとに実際に外国人が退職した場合は、退職した日から14日以内に「特定技能雇用契約の終了に係る届出」もおこなわなくてはいけません。

 

届出書は郵送でも提出できますが、郵送の場合は14日以内の消印ではなく14日以内に地方入管に届いていなくてはいけません。

届出をおこなわなかった場合や虚偽の届出をした場合、特定技能外国人の受入れができなくなるだけでなく、罰金刑や過料を科されることもあります。

すでに特定技能ではなくなっている場合や帰国してしまった場合でも、特定技能として在留しているときに発生した事由については届出をおこなう必要があります。

届出事由が生じた日から14日が過ぎてしまっても提出できるので、遅延した理由を記載した理由書(任意書式)を添付して、必ず届け出るようにしましょう。

届出方法

随時届出書は次の3つの方法で提出することができます。

窓口に持参して提出

特定技能所属機関の役職員で届出書の作成者が持参する場合は、身分を証明する文書の提示が必要です。

届出書の作成者以外が持参する場合は、届出書作成者の身分を証明する文書の写しに加え、提出者の氏名・連絡先・特定技能所属機関との関係を明らかにする文書や資料、委任状などを提出します。

郵送で提出

届出書の作成者の身分を証明する文書の写しを同封し、封筒に「特定技能届出書在中」等、記載します。

オンラインで提出

出入国在留管理庁の「電子届出システム」を利用するため、事前に窓口または郵送で利用者情報登録をする必要があります。

 

※身分を証明する文書とは、日本の機関が発行した身分証明書、健康保険証などのことです。

申請等取次者証明書を所持していれば、その写しでも問題ありません。

届出先

届出書の提出先は、特定技能所属機関の住所(法人の場合は、登記上の本店所在地)を管轄する地方出入国在留管理局・支局です。

管轄地域と地方局・支局の住所は下の表で確認してください。

地方局・支局名 担当部門/住所 管轄する都道府県
札幌出入国在留管理局 審査部門
【持参による提出先】
〒060-0042
札幌市中央区大通西12丁目
札幌第3合同庁舎
【郵送による提出先】
〒062-0931
札幌市豊平区平岸1条22丁目2-25
北海道
仙台出入国在留管理局 審査第一部門
〒983-0842
仙台市宮城野区五輪1-3-20
仙台第二法務合同庁舎
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
東京出入国在留管理局 就労審査第三部門
〒108-8255
東京都港区港南5-5-30
茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県 東京都、新潟県、山梨県、長野県
東京出入国在留管理局 横浜支局 就労・永住審査部門
〒236-0002
神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7
神奈川県
名古屋出入国在留管理局 就労審査第二部門
〒455-8601
愛知県名古屋市港区正保町5-18
富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
大阪出入国在留管理局 就労審査部門
〒559-0034
大阪府大阪市住之江区南港北 一丁目29番53号
滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県
大阪出入国在留管理局 神戸支局 審査部門
〒650-0024
兵庫県神戸市中央区海岸通り29 神戸地方合同庁舎
兵庫県
広島出入国在留管理局 就労・永住審査部門
〒730-0012
広島県広島市中区上八丁堀2-31 広島法務総合庁舎内
鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
高松出入国在留管理局 審査部門
〒760-0011
香川県高松市浜ノ町72-9
高松出入国在留管理局浜ノ町分庁舎
徳島県、香川県、愛媛県、高知県
福岡出入国在留管理局 就労・永住審査部門
【持参による提出先】
〒810-0073
福岡県福岡市中央区舞鶴3-5-25
福岡第1法務総合庁舎
【郵送による提出先】
〒814-0005
福岡県福岡市早良区祖原14-15
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
福岡出入国在留管理局 那覇支局 審査部門
〒900-0022
沖縄県那覇市樋川1-15-15
那覇第一地方合同庁舎
沖縄県

まとめ

特定技能所属機関で、外国人の雇用の継続が困難になった場合におこなう「受入れ困難に係る届出」について解説しました。

「所属機関の経営上の理由により解雇の予告をした」「外国人の自己都合で退職の申し出があった」「外国人が行方不明になった」などの場合、実際に雇用契約を終了するより前に「受入れ困難に係る届出」をおこなわなくてはいけません。

また、受入れが困難になった理由や経緯、どのように対応したかを具体的に記入して提出する必要があるため、外国人への適切な対応についても確認しておくとよいでしょう。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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