※この記事では「漁業分野」に特化してお伝えします。他分野では要件などが異なることもありますので、ご注意ください。
私たち日本人の食卓に欠かせない「魚」。
気候変動などの影響により漁獲量が変動し、年々値段が高くなっている魚も増えてきました。
値段の高騰には近年の気候変動の影響も大きいですが、漁業の担い手不足による影響も少なくありません。
漁業分野は、国内で人材を十分に確保することが難しいことから特定技能外国人を受入れることができる対象分野となっています。
ここでは、漁業分野で特定技能外国人の雇用を検討されている方に向け、特定技能制度に詳しい行政書士が「漁業分野における特定技能ビザ人材活用」について分かりやすく説明します。
目次
漁業従事者の不足
日本人は昔から魚を食べ、私たちの食卓に欠かせないものとなっています。
現在の日本では少子高齢化が進み、労働環境が厳しい漁業分野では人手不足が深刻化しています。
日本の漁業従事者の現状
日本の漁業従事者は、下図のとおり年々減少傾向にあります。
また熟練の高齢労働者が引退していくにもかかわらず、若年層の新漁業従事者の人数は横ばいであり、人手不足の深刻化、そして安定的な水産物の供給の体制が危うくなる可能性も否めない状況になっています。
出典:水産庁HP(平成29年度水産の動向 第2章第2節(3)漁業就業者をめぐる動向)
漁業分野における外国人の受入れ
漁業分野では、国内で人材確保の取り組みをおこなってもなお不足する労働力を、外国人材を受入れることで補完したいと考えています。
そこで即戦力として期待できる「特定技能外国人」を制度設立から向こう5年間で最大9,000人受入れることが決定されました。
特定技能外国人が従事できる業務は?~漁業と養殖業~
それでは、ここから特定技能制度で受入れた外国人が従事できる業務について説明していきたいと思います。
漁業分野では、大きく「漁業」と「養殖業」に分かれます。
「漁業」
主たる業務
漁業で従事できる主たる業務内容は以下のとおりです。
- 漁具の製作・補修
- 水産動植物の探索
- 漁具・漁労機械の操作
- 水産動植物の採捕
- 漁獲物の処理・保蔵
- 安全衛生の確保 等
関連業務
上述の主たる業務とあわせて行う場合に限り、以下のような日本人が通常従事している関連業務に附随的に従事することができます。
ただし関連業務にのみ専ら従事することは認められていないので、注意しましょう。
- 漁具・漁労機械の点検・換装
- 船体の補修・清掃
- 魚倉、漁具保管庫、番屋の清掃
- 漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込・積み込み
- 出漁に係る炊事・賄い
- 採捕した水産動植物の生簀における畜養その他附随的な東食
- 自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
- 魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
- 体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
養殖業
主たる業務
養殖業で従事できる主たる業務は以下のとおりです。
- 養殖資材の製作・補修・管理
- 養殖水産動植物の育成管理
- 養殖水産動植物の収穫・処理
- 安全衛生の確保 等
関連業務
漁業と同じく、上述の主たる業務とあわせて、以下のような関連業務に附随的に従事することが認められています。
こちらも関連業務にのみ専ら従事することは認められていません。
- 漁具・漁労機械の点検・換装
- 船体の補修・清掃
- 魚倉、漁具保管庫・番屋の清掃
- 漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込・積込み
- 養殖用の機械・設備・器工具等の清掃・消毒・管理・保守
- 鳥獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における食害防止
- 養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他附随的な漁業
- 自家生産物の運搬・陳列・販売
- 自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
- 魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
- 体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助
- 社内外における研修
受入れ方法は?~直接雇用でも派遣でも可能~
特定技能制度で外国人を受入れられる分野は14分野ありますが、このうち農業と漁業に関しては、直接雇用の他に、派遣形態による受入れが認められています。
直接雇用の場合
前述の特定技能外国人が従事できる業務を担っている事業者が直接雇用することができます。
この場合、受入れ機関となる事業者と特定技能外国人が雇用契約を締結し、特定技能外国人は受入れ機関の指揮命令を受け漁労作業に従事することになります。
出典:水産庁『特定技能外国人材の受け入れ制度について(漁業分野)』令和元年12月
派遣の場合
漁業に関しては、対象魚種や漁法等によって繁忙期や閑散期といった時期が異なるため、業務の繁閑を踏まえて柔軟に労働力を補えるよう派遣形態による受入れが可能となっています。
この場合、雇用契約は派遣元となる労働者派遣事業者と特定技能外国人の間で雇用契約を締結します。
実際の特定技能外国人の派遣先と派遣元との間では「労働者派遣契約」が結ばれ、特定技能外国人は派遣先の事業者の指揮命令を受け、漁労作業等に従事することになります。
出典:水産庁『特定技能外国人材の受け入れ制度について(漁業分野)』令和元年12月
派遣元となる労働者派遣事業者は、
- 厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業者(国土交通大臣の許可を受けた船員派遣事業者を含む)であり、
- かつ地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合もしくは漁業協同組合連合会、その他漁業に関連する業務を行っている者
といった要件がありますので、派遣による特定技能外国人の受け入れを考える場合には、派遣事業者が必要な要件を満たしているかどうかを予め確認しておくことが重要になってきます。
在留期間は?~1号特定技能外国人は通算で5年~
1号特定技能外国人の在留期間は、通算で5年となります。
(特定技能外国人には「1号」と「2号」があり、「2号」の場合は在留期間の上限は定められていません。しかし「2号」は建設分野と造船・舶用工業分野のみでの受け入れとなっており、漁業分野では「1号」しか受け入れられません。)
在留期間は「通算」なので、5年間継続して働いてもらうことも可能ですが、閑散期には帰国して、通算で5年になるまで働いてもらうということも可能になります。
また半年A社で働き、A社の閑散期にはB社で働くということも可能です。ただしこの場合には、受入れ機関が変わるため、新たに受入れ機関と雇用契約を結ぶ必要があり、かつ新たに在留資格変更許可を受ける必要があります。
特定技能外国人を雇用するには?~受入れ側の要件~
特定技能外国人を雇用するにあたっては、受入れ機関となる事業所の要件、そして漁業分野特有の要件、さらに特定技能外国人の受け入れ対象全分野に共通する要件を満たす必要があります。
それぞれの要件の詳細を見ていきましょう。
事業所の要件
特定技能外国人を受入れたいと考えている事業所は、受け入れ可能な事業所であることを証明する必要があります。
以下の状況に応じた書類を準備し、特定技能の在留資格の申請手続きをする際に提出しなければなりません。
農林水産大臣または都道府県知事の許可または免許を受け漁業又は養殖業を営んでいる場合
大臣許可漁業の許可や定置漁業の免許を受けている場合等が該当し、次のいずれかの書類が必要となります。
- 許可証の写し
- 免許の指令書の写し
- その他許可又は免許を受け漁業又は養殖業を営んでいることが確認できる公的な書類の写し
漁業協同組合に所属して漁業又は養殖業を営んでいる場合
漁業協同組合の共同漁業権の内容に沿った漁業を営んでいる場合等が該当し、次のいずれかの書類の提出が必要です。
- 漁業協同組合の漁業権の内容たる漁業又は養殖業を営むことを確認できる当該組合が発行した書類の写し
- その他漁業協同組合に所属して漁業又は養殖業を営んでいることは確認できる書類の写し
漁船を用いて漁業又は養殖業を営んでいる場合
次のいずれかの書類が必要となります。
- 漁船原簿謄本の写し
- 漁船登録票の写し
漁業分野特有の要件~協議会への加入と協力~
特定技能外国人を受入れられる分野毎に「協議会」が設置されています。
「漁業特定技能協議会」への加入~特定技能外国人受入れ後4か月以内~
漁業分野においても、特定技能制度の適切な運用を図るために、水産庁によって漁業特定技能協議会が設けられています。
この協議会は、受入れ機関の他、漁業・養殖職種の業界団体、水産庁、関係省庁、(公財)国際研修協力機構等で構成されています。
協議会の構成員になるためには、以下の「2号構成員」と呼ばれる団体のいずれかに直接もしくは間接的に所属していることが必要となります。
【漁業特定技能協議会運営要領第3条第2号に規定する構成員:2号構成員】
- 一般社団法人大日本水産会
- 全国漁業協同組合連合会
- 一般社団法人全国いか釣り漁業協会
- 一般社団法人全国近海かつお・まぐろ漁業協会
- 一般社団法人全国底曳網漁業連合会
- 一般社団法人日本定置漁業協会
- 一般社団法人全国まき網漁業協会
- 全国かじき等流し網業協議会
- 全国金目鯛底はえ縄漁業者協会
- 全国さんま棒受網漁業協同組合
- 海士町
- 一般社団法人全国海水養魚協会
- 一般社団法人全日本持続的養鰻機構
- 全国真珠養殖漁業協同組合連合会
- 全国内水面漁業協同組合連合会
- 全国海苔貝類漁業協同組合連合会
協議会への加入手続きは、特定技能外国人材を受入れた日から4か月以内に加入手続きをする必要があります。
2回目以降の受け入れの際には、在留資格申請の際に協議会の構成員であることの証明書の提出をすれば問題ありません。
なお分野によって特定技能外国人の日常的な支援を受入れ機関に代わって実施する登録支援機関の協議会への加入が義務付けられている分野もありますが、漁業分野では必ずしも登録支援機関がこの協議会の構成員になる必要はありません。
協議会において決定された事項に関する措置をとること
協議会に加入した後は、さらに協議会によって決定された事項に関して必要な措置をとることが義務付けられています。
漁業と養殖業それぞれの決定事項について以下に説明します。
【漁業】
- 特定技能外国人の安全性の確保
漁船事故を防止するため、受入れ機関(漁業分野の事業者)を含む漁業分科会構成員は、特定技能外国人に対し、安全に関する指導及び教育を行うこと。 - 受入れ機関による外国人材の配乗人数に係る申し合わせ
漁船一隻あたり、技能実習生と特定技能外国人の合計人数が、それ以外の乗組員の人数の範囲内とすることを目安とすること - 特定技能外国人材等の配乗人数の報告
受入れ機関は、所属する業界団体に対し、自らが運航する漁船の配乗状況を定期的に報告すること - 受入れ機関による外国人材の引き抜き防止に係る申し合わせ
外国人材本人の意向や技能実習2号受入れ経営体による継続雇用の意向を尊重し、他地域及び他の漁業種類で雇用されている外国人材の積極的な引き抜き雇用を自粛すること
【養殖業】
- 養殖業分科会規約
業界団体は、制度の周知徹底や法令遵守の啓発を図ること。
受入れ機関は、就業規則を作成し、日本人と同等に適用すること。
受入れ機関は、雇用する特定技能外国人材に事件・事故、離職等が発生した場合に所属の業界団体を通じて報告するとともに、経過や再発防止策等を報告すること。 - 受入れ機関による外国人材の引き抜き防止に係る申し合わせ
外国人材本人の意向や技能実習2号受入れ経営体による継続雇用の意向を尊重し、他地域及び他の漁業種類で雇用されている外国人材の積極的な引き抜き雇用を自粛すること
(水産庁『特定技能外国人材の受入れ制度について(漁業分野)』令和元年12月より抜粋)
協議会や構成員に対して、必要な協力を行うこと
その他、協議会や構成員に対して必要な協力を行うことも求められています。
必要な協力を行わない場合などは、受入れ機関としての適合性を満たさないことになり、特定技能外国人の受け入れが出来なくなってしまうので注意が必要です。
全分野共通の要件
上述の事業所要件及び漁業分野特有の要件に加え、直接雇用の場合には受入れ機関となる事業所が、派遣の場合は派遣事業所(※)が特定技能外国人を受入れることができる全分野に求められている共通の要件を満たしている必要があります。
例えば、労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること、1年以内に受入れ機関側の事由で行方不明者を発生させていないこと、特定技能外国人の雇用を継続できる体制が整っていること等が挙げられます。
(全分野共有の要件の詳細については、『特定技能はじめの一歩』をご参照ください)
どんな人が漁業分野で特定技能外国人として働けるの?~外国人側の要件~
では、次にどのような外国人が漁業分野で特定技能外国人として働くことができるのか見てみましょう。
漁業分野で特定技能外国人としての要件を満たすためには、以下の二つの方法があります。
- 漁業分野で定められた技能試験及び日本語能力試験に合格すること
- 技能実習2号を良好に修了していること
この2点についてそれぞれ詳しく説明します。
試験をクリアして特定技能1号へ~漁業技能測定試験と日本語試験~
試験を受けて要件を満たす場合には、「漁業技能測定試験」と「日本語能力試験」を受験し、合格する必要があります。
技能試験「漁業技能測定試験」
漁業分野の技能試験は、大日本水産会が実施しており、「漁業」と「養殖業」の二つの試験区分があります。
漁業・養殖業ともに、学科試験と実技試験で構成されています。
- 漁業
学科試験:漁業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上必要となる日本語能力を測定
実技試験:図やイラスト等から漁具・漁労設備の適切な取り扱いや漁獲物の選別に係る技能を判断する試験により業務上必要となる実務能力を測定
※漁船漁業職種の技能実習評価試験(専門級)の水準と同程度 - 養殖業
学科試験:養殖業全般及び安全衛生に係る知識及び業務上必要な日本語能力を測定
実技試験:図やイラスト等から養殖水産動植物の育成管理や養殖生産物の適切な取り扱いにかかる技能を判断する試験により、業務上必要となる実務能力を測定
※養殖業職種の技能実習評価試験(専門級)の水準と同程度
試験は、日本国内の他インドネシアで実施されています。
大日本水産会のHPにて、学習用テキスト(多言語)が公開されていますので、試験のレベルの確認・学習の際に活用するとよいと思います。
日本語能力試験
特定技能外国人として日本国内で業務・生活するためには、ある程度の日本語でのコミュニケーション能力が必要となります。
その日本語能力を証明するためには、「日本語能力試験(JLPT)」でN4レベル以上に合格するか、もしくは「日本語基礎テスト(JFT-Basic)」に合格する必要があります。
日本語能力試験(JLPT)は、N1からN5までの5段階のレベルに分かれており、N4以上(N4、N3、N2、N1)のレベルに合格する必要があります。
JLPTは、日本と海外(約80の国と地域)で特定の試験日(年2回)実施されます。
結果は、受験日から約2か月後にオンラインで知ることができますが、合否結果の通知は3か月後になります。
一方、日本語基礎テスト(JFT-Basic)」は、JLPTのようにレベル分けはなく、一つのレベルとなります。
CBT方式で、海外(主にアジア地域)と日本で年6回実施されます。
JFT-Basicは、受験当日に結果が分かり、受験日から5営業日以内に判定結果通知が発行されます。
受験の機会はJFT-Basicの方が多いですが、受験日や受験方法、また結果通知時期などを考慮してどちらを受験するか考えるとよいでしょう。
技能実習2号からの移行
下表のとおり、技能実習2号の「漁船漁業」職種の各作業を良好に修了した場合には、特定技能「漁業漁業)」に技能試験を免除で移行可能となります。
また技能実習2号の「養殖業」ほたてがい・まがき養殖作業を良好に修了した場合には、特定技能「漁業(養殖業)」に技能試験を免除で移行可能となります。
また日本語能力についても、技能実習2号を良好に修了していれば特定技能外国人に必要なレベルがあると判断され、日本語に関する試験も免除となります。
特定技能外国人の雇用の流れ~人材確保から就労開始まで~
以上のとおり、特定技能外国人を受入れる側と外国人側の要件を説明しましたが、次に人材を確保して就労してもらうまでの流れを説明します。
Step1:人材確保
技能実習生として受け入れていた外国人を特定技能外国人として雇用する場合以外は、日本人の雇用と同様に採用活動を行うことになります。
漁業分野では、以下のような団体に相談するとよいでしょう。
- 漁業協同組合等
- ハローワークや民間の職業紹介所
- 海外にネットワークを持つ民間団体等
人選の際には、必ず当該外国人が「特定技能外国人」としての要件を満たしているかどうかしっかりと確認をしましょう。
Step2:雇用契約
法令を遵守し、当該外国人と雇用契約を締結します。
(給与や休日等の処遇が、同様の業務に従事する日本人と同様であることや、外国人社員ならではの出入国のサポートや生活状況の把握なども必要となります。)
派遣の場合は、派遣先である事業者と派遣元となる派遣事業所の間で「労働者派遣契約」を締結します。
Step3:支援計画の策定
特定技能外国人1号を雇用する場合には、外国人が日本で安定かつ安心して生活し働くことができるよう、法律によって定められている支援を行う必要があります。
事前ガイダンスから住居の確保、就労後の3か月に1回の面談等10項目が義務付けられており、これらの支援をどのように実施していくかを記載した「支援計画」を策定する必要があります。
Step4: ビザ(在留資格)の申請
必要な書類を揃えて地方出入国在留管理局にて手続きを行います。
雇用する外国人が海外にいる場合には、「在留資格認定証明書交付申請」を行い、「在留資格認定証明書」を受領した後に、当該外国人のもとにその証明書を送付することになります。
その後、当該外国人が在外公館において査証(ビザ)の申請をし、受領することになります。
この「在留資格認定証明書」には有効期間がありますので、期間内に手続きすることが必要です。(コロナ禍の現在、この有効期間の延長措置が取られています)
一方雇用する外国人が日本国内におり、「特定技能」とは異なる別の在留資格を既に持っている場合には、「在留資格変更許可申請」手続きを行うことになります。
ビザ申請時に提出する書類は多くあります。書類に不備があると追加資料の要求がされる等余分に時間がかかってしまうこともあるので、慎重に準備をしましょう。
ビザの審査期間は、2カ月前後となっています。
Step5:入国・就労開始
ビザを取得した後、入国・就労が可能となります。
特定技能外国人を雇用した後は?~日常的な外国人支援や届出等が必要~
初めて特定技能外国人を雇用した場合、「漁業特定技能協議会」への加入手続きを忘れずに行いましょう(受け入れ後4か月以内です)。
その他、雇用した後に必要となってくる対応等について見てみましょう。
日常的な外国人支援
特定技能外国人を雇用する際、ビザの申請時に「特定技能1号外国人支援計画書」を提出します。
この支援計画書に記載した特定技能外国人に対する日常的な支援を実行していく必要があります。
これら支援計画に記載した支援内容を全部「登録支援機関」に委託することも可能です。
各種手続き・届出等
この他にも、出入国在留管理庁やハローワークに対して次のような各種届出を定期的に、または随時行う必要があります。
これらの義務付けられている届出をしなかったり、虚偽の届出といった違反が発覚した場合には、指導や罰則の対象となりますので注意しましょう。
特定技能外国人を雇用する際にかかる費用は?
特定技能外国人を雇用する場合には、以下のような費用がかかってきます。
人材紹介料や送出機関に関する費用
既に技能実習生として雇用している外国人を特定技能として継続して雇用する場合には、この費用は発生しません。
しかしイチから人材を探す場合には、人材紹介会社や送出機関を活用することもあると思います。その場合には紹介料等の費用が発生することになります。
人材紹介会社にお願いした場合は50万円前後が紹介料の相場となっているようです。
送出機関についてですが、特定技能制度に関して二国間の協力覚書で特定技能人材を採用する際に送出機関を通すことが定められている場合があります。
例えばベトナム、ミャンマー、カンボジア等です。
ミャンマーは、送り出し費用として1,500USドルかかります。
ベトナムは、当該外国人の給与の額によって変わってきますが、約20万~30万円程度かかると言われています。
在留資格取得に係る費用
在留資格の交付を受ける際に、出入国在留管理庁に支払う手数料がかかります。
自身で申請手続きを行う場合には、この出入国在留管理庁に支払う手数料のみですが、申請手続きを行政書士等に委託する場合には別途費用が発生します。
委託費用は15万円前後が相場になっています。
登録支援機関に支援を委託する場合の費用
特定技能外国人1号を雇用する場合、受入機関は支援計画を策定し、それに従って支援を行わなければなりません。
この支援を登録支援機関に委託する場合には、委託費が発生します。
登録支援機関の相場は、支援外国人1人あたり平均20,000円~50,000円(月額)となっています。
月額料金を安く設定している支援機関は月額料金とは別にオリエンテーションや面談の費用を徴収していることもあります。
これに対して月額料金のみを徴収している支援機関は月額料金が比較的高めに設定されている傾向があります。
特定技能外国人に係る費用
雇用する特定技能外国人本人には給与の支払いが発生します。
給与の額は、当該外国人が従事する業務を行っている日本人社員と同額以上の額でなければなりませんので、注意しましょう。
また事業者によって異なりますが、渡航費や家賃などの補助を行う場合もあります。
特定技能外国人を雇用する際の留意点
労務管理について
日本人についても同様ですが、労働者が働きやすい環境を整えることが大切になります。
漁業分野での業務は重労働でハードな傾向にあります。したがって過剰労働にならないよう適切な労働時間、休憩時間、休日を設けましょう。
漁業分野での特定技能外国人活用のまとめ
最後に、これまで述べてきた漁業分野で特定技能外国人を活用する際のポイントについて整理しておきましょう。
- 漁業分野では特定技能外国人を最大9,000人受け入れる計画。
- 特定技能外国人は、「漁業」「養殖業」でそれぞれ定められた主たる業務に従事し、附随的に関連業務にも従事することができる。
- 漁業分野では、直接雇用でも派遣での受け入れでも可能
- 在留期間は通算5年。継続して5年働いてもらうのもよし、閑散期には帰国し通算で5年になるまで働いてもらうのもよし、途中で転職するのもよし。
- 受入れ機関は、事業所が特定技能外国人を受入れることができる対象である証明をする必要あり。
また漁業特定技能協議会に加入し、協議会で定められている決定事項の措置を講ずる必要あり。 - 技能実習2号で「漁船漁業」職種の全作業及び「養殖業」職種の「ほたてがい・まがき養殖」作業を良好に修了していれば、技能試験及び日本語試験は免除となり、特定技能の漁業・養殖業へ移行可能。
- 雇用後は労働管理を適切に行い、定められたが特定技能外国人支援及び各種届出の提出を確実に行いましょう。