特定技能【航空】のよくある質問

航空業界は、新型コロナウイルスの流行によって低迷していた需要が回復傾向にありますが、地上業務や保安検査などの人員不足が深刻化しており、飛行機の出発の遅れや国際線が増便できないなどの事態に陥っています。

コロナ前から航空業の有効求人倍率は4.17倍(2017年度)と高く、人材確保が困難な状況でした。さらにコロナによって航空需要が激減したことで、脆弱な業界というイメージが定着してしまい離職者が急増しました。

コロナ前と比べグランドハンドリング作業員は約1〜2割、保安検査員は約2割、航空専門学校への入学者は約4割も減少しています。

そこで注目されているのが特定技能制度の活用で、2022年3月〜12月の9ヵ月で航空分野の特定技能1号在留外国人数は約3.6倍に増えています。

しかしその一方で、まだ外国人材の雇用を躊躇している企業も多く、特定技能制度を活用するグランドハンドリング企業は全体の1割にも満たないのが現状です。(2023年2月時点)

ここでは特定技能外国人の雇用を検討している事業者様に向けて、特定技能受入れのサポート実績を持つ行政書士が航空分野のよくある質問についてわかりやすく回答します。

目次

特定技能外国人の業務とは

Q:航空分野の特定技能外国人が従事できる業務を教えてください。

A:航空業界には客室乗務員やパイロット、旅客ハンドリング、ランプハンドリング、航空機整備などさまざまな仕事があるため、どの職種で外国人材を活用できるか気になっている方は多いと思います。

特定技能外国人が従事できる航空分野の業務は、空港グランドハンドリングと航空機整備の2つの区分に分かれています。

それぞれの区分で対象となる業務内容は次のとおりです。

空港グランドハンドリング

一般的に「ランプハンドリング」と呼ばれる仕事です。

  • 航空機地上走行支援業務
    • 航空機の駐機場への誘導や移動
  • 手荷物・貨物取扱業務
    • 手荷物・貨物の仕分け
    • ULDへの積付
    • 取り降し・解体
  • 手荷物・貨物の搭降載取扱業務
    • 手荷物・貨物の航空機への移送
    • 搭降載
  • 航空機内外の清掃整備業務
    • 客室内清掃
    • 遺失物等の検索
    • 機用品補充や機体の洗浄

航空機整備

  • 運行整備
    • 空港に到着した航空機に対して、次のフライトまでの間におこなう整備
  • 機体整備
    • 通常1〜1年半ごとに実施する、約1〜2週間にわたり機体の隅々までおこなう整備
  • 装備品・原動機整備
    • 航空機から取り下ろされた脚部や動翼、飛行・操縦に用いられる計器類等およびエンジンの整備

航空分野の業務は資格保持者等の指導者やチームリーダーの下で、航空法や安全管理規程、業務規程、運航・整備規定、社内規程等を遵守しておこなわれます。

Q:積雪時の除雪作業など、本来の業務以外の業務に従事させることはできますか?

A:同じ業務に従事する日本人が、除雪作業など本来の業務以外の作業を通常おこなっていれば可能です。

ただし、特定技能外国人が本来の業務以外の関連業務に従事できるのは、本来の業務に付随しておこなう場合だけです。専ら関連業務に従事することはできません。

関連業務として従事することが認められるのは、以下のような業務です。

  • 事務作業
  • 作業場所の整理整頓や清掃
  • 積雪時における作業場所の除雪

Q:航空機整備に従事している外国人は機内清掃をおこなえますか?

A:基本的には、できません。

空港グランドハンドリングと航空機整備の業務区分を超えて業務に従事することはできないため、航空機整備で特定技能を取得した外国人が空港グランドハンドリング区分の業務である機内清掃をおこなうことはできません。

空港グランドハンドリングと航空機整備の両区分で試験に合格するなどして2つの区分で特定技能を取得している場合には、両方の区分の業務に従事することは可能ですが、業務内容がまったく異なるため2つの区分で特定技能を取得する必要はないでしょう。

特定技能外国人となるには

Q:どうすれば特定技能1号になれますか?

A:特定技能1号を取得するには、試験に合格するか技能実習から移行する方法があります。

それぞれの要件について解説しましょう。

試験に合格する

従事する業務に必要な相当程度の技能と日本語能力を有していると証明するために、次の試験に合格する必要があります。

①日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」

②技能試験:航空分野特定技能1号評価試験

技能実習から移行する

空港グランドハンドリング職種で技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号の業務との関連性があり相当程度の技能を有すると評価されるため、上記の①日本語試験と②技能試験が免除で移行できます。

Q:技能実習時の作業によって特定技能に移行できる作業が限定されると聞きました。移行できる作業などを教えてください。

A:技能実習2号の空港グランドハンドリング職種には次の3つの作業がありますが、無試験で特定技能1号に移行できるのは航空機地上支援作業だけです。

  • 航空機地上支援作業 → 空港グランドハンドリング区分に無試験で移行可能
  • 航空貨物取扱作業 → 試験に合格すれば移行可能
  • 客室清掃作業 → 試験に合格すれば移行可能

同じ空港グランドハンドリング職種でも、航空貨物取扱作業と客室清掃作業から移行するには技能試験を受験して合格する必要があります。(日本語試験は免除されます)

また、特定技能の航空機整備区分は関連する技能実習2号の職種がないため、航空機整備区分の特定技能を取得する方法は試験に合格するしかありません。

技能実習のどの職種であっても2号を良好に修了していれば、特定技能に移行する際に日本語試験は免除されます。

Q:特定技能1号評価試験はどのような試験ですか?

A:航空分野の特定技能1号評価試験は業務区分と同じく2つの試験区分に分かれていて、それぞれ筆記試験と実技試験が日本語でおこなわれます。

どちらの試験区分でも、筆記・実技それぞれ正答率65%以上で合格です。

特定技能評1号価試験(空港グランドハンドリング)

社内資格を有する指導者やチームリーダーの指揮・監督の下、空港における航空機の誘導・けん引の補佐、貨物・手荷物の仕分けや荷崩れを起こさない貨物の積みつけ等ができるレベルであることを確認する試験。

  • 筆記試験:真偽法(◯☓式)、下記分野の基礎的な知識、現場で適切な対応を取るための知識のテスト
    • ランプエリア内での安全・セキュリティー確保
    • 貨物のハンドリング
    • 手荷物のハンドリング
    • 客室内清掃
    • 誘導作業
  • 実技試験:写真・イラストを用いた判断試験、下記の基本技術に関する実務能力のテスト
    • ランプエリア内での安全・セキュリティー確保
    • 貨物のハンドリング
    • 手荷物のハンドリング
    • 客室内清掃

2023年度の試験は、国内は東京と大阪で数回、国外はフィリピン、ネパール、インドネシアで実施される予定です。

特定技能1号表評価試験(航空機整備)

整備の基本技術を有し、国家資格整備士等の指導・監督の下、機体や装備品等の整備業務のうち基本的な作業(簡単な点検や交換作業等)ができるレベルであることを確認する試験。

  • 筆記試験:真偽法(◯☓式)、下記3分野の基本的な知識のテスト
    • 航空機の基本技術(締結、電気計測)
    • 作業安全・品質
    • 航空機概要
  • 実技試験:作業試験形式、下記の基本技術に関する実務能力のテスト
    • 締結
    • 電気計測

航空機整備の試験は実施回数が少なく、2023年度はモンゴルで1回おこなわれる予定です。

詳しいスケジュールやテキストについては、日本航空技術協会(JAEA)のホームページで確認してください。

Q:特定技能外国人は、技能実習からの移行と試験合格者ではどちらが多いのですか?

A:技能実習からの移行者が多い分野もありますが、航空分野の場合は試験に合格して特定技能を取得するケースが多いようです。

外国人技能実習機構の情報によると、2020年度と2021年度の技能実習計画認定件数は空港グランドハンドリング職種では0件です。

つまり、この2年間は空港グランドハンドリング職種での技能実習生の受入れはおこなわれていないということです。

また出入国在留官庁の情報によると、2019年6月〜2022年12月までの航空分野の特定技能1号在留外国人で技能実習からの移行者は1人もいません。

ただ、特定技能1号評価試験の受験者を在留資格別に見ると、2022年8月以降は技能実習1号の外国人が圧倒的に増えています。

そのため、外国人をいったん技能実習生として受入れ、技能実習2号に移行せずに特定技能1号評価試験を受けさせるケースが多いと考えられます。

技能実習の空港グランドハンドリング職種は、技能実習2号移行対象職種のなかで唯一、社内検定型の職種です。

技能実習は1号から2号、2号から3号へ移行する際に技能実習評価試験に合格する必要があり、通常、技能実習評価試験は外部の団体が実施しています。

しかし航空グランドハンドリング職種では実習実施者が社内検定をおこなう必要があるため、それが技能実習2号から特定技能1号へ移行するケースが無いことに関係しているのかもしれません。

特定技能外国人の受入れ

Q:特定技能外国人を受入れるための要件はありますか?

A:特定技能の受入れ機関に対して課される要件は次の4つです。

    1. 国土交通省が設置する「航空分野特定技能協議会」に加入し、必要な協力をおこなうこと
    2. 国土交通省がおこなう調査または指導に対し、必要な協力をおこなうこと
    3. 特定技能外国人の支援を登録支援機関に委託する場合、1,2を満たす登録支援機関に委託すること
    4. 規則に基づいた構内営業の承認、または法令に基づいた事業場の認定を受けた事業者等であること

特定技能外国人を初めて受入れる場合、入国後4ヵ月以内に協議会に加入する必要があります。

Q:支援を登録支援機関に委託する場合でも、協議会に加入する必要はありますか?

A:支援を委託する場合でも、受入れ機関と登録支援機関の両方に協議会の加入義務があります。

特定技能1号外国人を受入れる場合、外国人が円滑に活動をおこなえるように職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援計画を作成し、その計画に基づいて支援を実施しなくてはいけません。

ただし、受入機関が支援計画の作成や支援を実施することが難しい場合、登録支援機関に支援計画の全部または一部を委託することができます。

支援計画の全部を委託する場合には、受入れ機関だけでなく委託する登録支援機関も協議会に加入し、必要な協力をおこなわなくてはいけません。

Q:規則に基づいた構内営業の承認、法令に基づいた事業場の認定とは何ですか?

A:航空分野では、規則・法令に基づいた承認や認定を受けた事業者でなければ特定技能外国人を受入れることができません。

承認や認定については業務区分ごとに定められているため、それぞれ解説しましょう。

空港グランドハンドリング区分の外国人を受入れる場合

「空港管理者により空港管理規則に基づく構内営業承認等を受けた事業者であること」

空港事務所長を経由して地方航空局長に申請書を提出し、この認証を受けなければ空港内での営業をおこなうことができません。

また、承認書の写しは「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書として、在留資格申請の際に提出する必要があります。

航空機整備区分の外国人を受入れる場合

「航空運送事業者又は航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた航空機整備等に係る事業場を修する事業者、もしくは当該事業者から業務の委託を受ける事業者であること」

事業場の認定は、事業場ごとに国土交通省に届け出をおこないます。

認定を受けると、この認定に係る業務を実施した場合に国の検査等を一部省略することができます。

Q:航空分野の受入れ人数の上限と、現在の在留人数を教えてください。

A:航空分野は特定技能12分野のうち、最も受入れ人数の上限が低い分野です。

特定技能制度が始まった当初の受入れ見込み数は、5年間で最大2,200人を上限に設定していました。

航空業界は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた分野でもあり、現在は1,300人に引き下げられています。

2022年12月時点で航空分野の特定技能1号評価試験の累計合格者は1,000人に達していますが、在留人数は167人です。

試験合格者が多くいるのに外国人材をうまく活用しきれていない要因は、試験の合格者と受入れ企業のマッチングが上手くいっていないことが考えられます。

Q:特定技能1号評価試験に合格する前の外国人と雇用契約を結んでも大丈夫ですか?

A:大丈夫です。特定技能雇用契約を締結したうえで試験を受けることは禁止されていませんが、試験に合格しなければ受入れが認められないことも頭においておく必要があります。

ただ、試験合格者に対して実際の就業者数が少ないことから、今後も航空分野で特定技能制度を運用していくためには適切な労働条件の確保、受験時点で採用企業が確定していることなどが望まれています。

また円滑な受入れのために、入管への在留資格申請の前に協議会に加入することや加入についての相談をおこなうことも可能です。

 

以上、特定技能航空分野のよくある質問について回答しました。

ご参考になれば幸いです。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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