行政書士が解説する素形材産業分野での特定技能外国人雇用のポイント

※令和4年4月26日に、製造3分野が、1つの分野に統合されることが閣議決定されました。詳しくは、【速報】製造3分野が統合 新分野に再編 をご覧ください。

 

素形材産業を含む製造業分野では、深刻な人材不足が続いており、何とか働き手を確保したいとお考えの事業者の方も多いと思います。

素形材産業分野は、日本国内での人材確保が困難な産業の一つとして、特定技能外国人を受入れることができる対象分野となっています。

特定技能外国人を雇用したいと思いつつも、よく分からないことも多く、どうしたものかと悩まれていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

そこで特定技能制度の受入れサポートの実績を持つ入管業務の専門家行政書士が、特定技能「素形材産業」分野で従事できる業務内容や実務上の注意点等、ポイントを絞って解説いたします。

特定技能「素形材産業分野」で外国人ができる業務とは?

まずは、素形材産業分野で特定技能外国人がどんな業務に従事することができるのか、この点についてよく質問を頂きます。

特定技能外国人の雇用を検討されている事業者の方にとって一番気になる点だと思いますので、詳しくご説明いたします。

特定技能外国人が従事できる業務

素形材産業分野で特定技能外国人が従事できる業務は、以下の表に示した13の業務になります。

業務区分 内容
鋳造 溶かした金属を型に流し込み製品を製造する作業
鍛造 金属を打撃・加圧することで強度を高めたり、目的の形状にする作業
ダイカスト 溶融金属を金型に圧入して高い制度の鋳物を短時間で大量に生産する作業
機械加工 旋盤、フライス盤、ボール盤等の各種工作機械や切削工具を用いて金属材料等を加工する作業
金属プレス加工 金型を用いて金属材料にプレス機械で荷重を加えて、曲げ、成形、絞りなどを行い成形する作業
工場板金 各種工業製品に使われる金属薄板の加工・組立てを行う作業
めっき 腐食防止等のための金属等の材料表面に薄い金属を被覆する作業
アルミニウム陽極酸化処理 アルミニウムの表面を酸化させ、酸化アルミニウムの皮膜を生成させる作業
仕上げ 手工具や工作機械により部品を加工・調整し、制度を高め、部品の仕上げ及び組立てを行う作業
機械検査 各種測定機器等を用いて機械部品の検査を行う作業
機械保全 工場の設備機械の故障や劣化を予防し、機械の正常な運転を維持し保全する作業
塗装 塗料を用いて被塗装物を塗膜で覆う作業
溶接 熱または圧力もしくはその両者を加え部材を接合する作業に従事

※「素形材産業運用方針」をもとに作成

素形材分野で働く特定技能外国人は、表にある業務区分に対応した所定の試験(特定技能1号評価試験)に合格しているか、もしくは特定技能に移行可能な技能実習2号を良好に修了しているなど、その業務について一定の技能・知識を持っている人たちになります。したがって指導者の指示を理解し、そして自らの判断でそれぞれの作業を行うことができるレベルを持っていることになります。

したがって、特定技能外国人を雇用する場合、特定技能外国人が持っている技能・知識と任せる業務(業務区分)が一致している必要があります。

主たる業務と関連業務について

素形材産業分野で、特定技能外国人が従事できる業務内容は先ほどの表のとおりですが、これらの業務を「主たる業務」と呼びます。

この「主たる業務」に関連する業務(以下、関連業務)、例えば、原材料・部品の調達や搬送作業、各職種の前後の工程作業、清掃・保守管理作業等については、付随的に行うことができます。

「鋳造」を例に挙げて説明しますと、例えば加工品の切削、ばり取り、検査業務、清掃・保守管理作業が関連業務として想定されており、鋳造の作業をメインで行いつつこれらの関連業務に従事することは問題ありません。

業務内容に関するよくある質問

素形材産業を営んでいる事業所では、特定技能外国人が従事できる業務である「鋳造」や「溶接」、「機械加工」等を同じ事業所内でやっている場合があります。

そのようなところで、よくでてくる質問を一つご紹介いたします。

例えば、『「溶接」で特定技能外国人を受入れているが、同じく溶接を行っている他の日本人従業員は、機械加工や仕上げの作業も行っているので、特定技能外国人にも日本人同様に機械加工や仕上げをやらせてもよいか?』、といった他の業務への従事に関する質問です。

この質問の答えは、「ノー」になります。

特定技能外国人はあくまでも「溶接」の資格で特定技能の在留資格を得ていることから、他の業務区分となる「機械加工」や「仕上げ」に携わることはできません。

ただし、その特定技能外国人が「機械加工」や「仕上げ」の特定技能1号評価試験に合格していれば可能になります。

同じ「溶接」を担当している日本人と同様の業務をさせたいという気持ちはあると思いますが、特定技能外国人に任せられる業務は、先ほどご説明した業務区分に基づく作業、つまり「主たる業務」とその「関連業務」が範囲となります。

素形材産業分野で特定技能外国人を受入れる場合の要件は?

素形材産業分野で特定技能外国人に任せられる業務に加えて、特定技能外国人を受入れる側、つまり雇用したいと考えている企業や事業所側に求められる要件があるのかどうか、という点についても質問を多くいただきます。

特定技能外国人を受入る場合、受入れ側にも要件があります。

その要件の中で、特に素形材産業分野で重要となってくるものをご説明いたします。

事業所要件に注意

素形材産業分野では、特定技能外国人を受入れ、実際に働いていもらう事業所(工場や作業場等)が要件を満たしているかどうかが、重要な要件の一つとなってきます。

この事業所の要件とは、『受入れを希望する事業所で直近1年間に「製造品出荷額等」が発生している産業(業種)が、特定技能「素形材産業分野」に該当する対象産業分類に該当している』というものです。

この要件について、少し分かりづらいと思いますので、詳しくご説明します。

「製造品出荷額等」とは

まずは、言葉の意味を正しく理解しておきましょう。

「製造品出荷額等」とは、直近1年間で製造品出荷額、加工賃収入額、くず廃物の出荷額及びその他収入額の合計で、消費税及び酒税、たばこ税、揮発油税及び地方揮発税を含んだ額のことを指します。

ここでいう「製造品の出荷」とは、その事業所が所有する原材料によって製造されたものを、その事業所から出荷した場合、を言います。これには同一企業に属する他の事業所へ引き渡したものや、その事業所において最終製品として使用されたものあ、また委託販売に出したものも含まれます。

また「加工賃収入額」は、他企業が所有する主要原材料によって製造したり、他企業が所有する製品又は半製品に加工、処理を加えた場合、これに対して受け取った又は受け取るべき加工賃が該当します。

そして「その他収入額」とは、例えば修理料収入額、冷蔵保管料、自家発電の余剰電力の販売収入額等が含まれます。

日本標準産業分類のどれに当てはまるか?

事業所の要件を満たすかどうか確認するために、まず今ご説明しました「製造品出荷額等」が発生している産業の分類・業種が、「日本標準産業分類」で掲げられている「大分類E製造業の一覧」を確認して、どの産業分類に該当するか確認します。

素形材産業分野に該当する日本標準産業分類

そして次に、特定技能の素形材産業分野に該当する以下の産業分類に、事業所が該当するかどうかを確認します。

日本標準産業分類 内容
2194 鋳型製造業(中子を含む) 主としてけい砂により鋳造用鋳型・中子を製造する事業所(金型製造業、木型製造業は含まない)
225 鉄素形材製造業 2251銑鉄鋳物製造業、2252可鍛鋳鉄製造業、2253鋳鋼製造業、2254鍛工品製造業、2255鍛鋼製造業を行う事業所
235 非鉄金属素形材製造業 2351銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)、2352非鉄金属鋳物製造業(銅、同合金鋳物及びダイカストを除く)、2354非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)、2355非鉄金属鍛造品製造業を行う事業所
2424 作業工具製造業 主としてレンチ、スパナ、ペンチ、ドライバ、やすりなどを製造する事業所
2431 配管工事用付属品製造業(バルブ、コックを除く) 主として鋳鉄製、真ちゅう製などの配管工事用付属品、すなわち継手、ノズル、蒸気抜き、水抜きなどを製造する事業所
245 金属素形材製品製造業 2451アルミニウム・同合金プレス製品製造業、2452金属プレス製品製造業、2453粉末や金製品製造業を行う事業所
2465 金属熱処理業 主として他から受け入れた金属製品、機械部分品の焼入れ、焼なましなどの熱処理を行う事業所
2534 工業窯炉製造業 主として石油、石炭、ガス及びその他の燃料を使用する工業窯炉を製造する事業所
2592 弁・同付属品製造業 主として流体の通路においてこれを導入し、遮断などして流体の制御に用いられる弁、コック及びその部分品、付属品を製造する事業所
2651 鋳造装置製造業 主として鋳造装置を製造する事業所
2691 金属用金型・同部分品・付属品製造業 主として金属製品の塑性加工に使用される金属性の型(プレス用、鍛造用、粉末や金用、鋳造用、ダイカスト用など)、部品(ガイドピンなど)及び付属品(ダイセットなど)を製造する事業所
2692 非金属用金型・同部分品・付属品製造業 主として非金属製品の塑性加工に使用される金属製の型(プレス用、プラスチック用、ゴム用、ガラス用、窯業用など)、部品(ガイドピンなど)及び付属品(ダイセットなど)を製造する事業所
2929 その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む) 主として蓄電器(電子機器用を除く)、電気窯炉類、熱装置を含むほかに分類されない工業用及び商業用電気装置並びに谷分類されない車両用・船舶用電気装置を製造する事業所
3295 工業用模型製造業 主として材料のいかんを問わず、工業用の模型を製造する事業所

出典:日本標準産業分類

ここでの事業所要件のポイントは、事業所毎に該当性が判断されるという点です。

つまり、複数の事業所を持つ企業については、特定技能外国人に働いてもらう予定の事業所の状況に照らして確認してください。

事業所要件に関するよくある質問

事業所要件に関して、どの産業に該当するのかどうかよくわからない場合もあります。そこでいくつか事例をご紹介します。

調理用器具の製造業

まず一つ目の例は、プレス機(板金設備を含む)を用いて鍋やフライパンなどの調理用器具を製造している事業所が、日本標準産業分類の「245金属素形材製品製造業」に該当するかどうか、というものです。

これは、該当します。

「245金属素形材製品製造業」の中に「2451アルミニウム・同合金プレス製品製造業」と「2452金属プレス製品製造業(アルミニウム・同合金を除く)」という業種があります。この二つに「調理用器具」が明記されており、プレス加工された鍋、フライパン、やかん、ボウル、ざる等の製造業が該当します。

しかしもし製造方法がプレス加工ではない場合は、対象となる分類が異なるので注意が必要です。

コンクリート流込み用の型枠製造業

次の事例は、板金加工などによってコンクリート流込み用の型枠の製造をしている事業所が、日本標準産業分類の「2692非金属用金型・同部分品・付属品製造業」に該当するかどうか、というものです。

この答えは、「該当しない」です。

コンクリート流込み用の型枠製造は「2446製缶板金業」に分類されます。

「2692非金属用金型・同部分品・付属品製造業」は、非金属材料の塑性加工(材料に型を押し当てるなどして力を加えて変形させる加工方法)に使用される金属製の型(プレス用、プラスチック用、ゴム用、ガラス用、窯業用など)、部品(ガイドピン等)及び付属品を製造する事業が該当します。

 

このように特定技能外国人を雇用したい事業所が、日本標準産業分類上のどの分類に該当するのかが曖昧な場合や、自身で判断がつかない場合があります。

日本標準産業分類上の分類について曖昧な場合には、経済産業省が解説している相談窓口(製造3分野企業向け特定技能外国人材制度相談窓口)に相談してみましょう。メールや電話での相談、また場所は限られていますが対面での相談窓口もありますので、こちらに問い合わせて事前に確認をすることをお勧めします。

協議会への事前加入

特定技能外国人を受入れる側の要件として、対象の産業分類に該当しているかどうかという点に加えて、もう一つ重要になってくるのが事前の「協議会」への加入です。

特定技能外国人を受入れることができる特定産業分野ごとに、特定技能外国人の適正な受入れ及び保護を行うこと等を目的として、「協議会」が設置されています。

素形材産業分野で特定技能外国人を受入れるには、産業機械製造業分野と電気・電子情報関連産業分野を含む製造業分野を対象として設置されている『製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会』(以下、協議・連絡会)に加する必要があります。

通常、他の特定産業分野では特定技能外国人を受入れてから4か月以内が加入条件となっている場合が多いのですが、素形材産業分野を含む製造業3分野では、出入国在留管理庁へのビザの申請手続きの前に加入手続きを済ませておく必要があります

協議・連絡会会への加入手続きを行って登録までは、通常2カ月程度かかるといわれています。ただし入会希望が多い場合はそれ以上の期間がかかる場合もあるようですので、余裕をもって手続きをしましょう。

産業分類の該当性の確認

協議・連絡会への加入手続きに際し、雇用したい特定技能外国人の業種と受入機関側の事業内容が所定の産業分類に合致しているかどうかチェックされます。

事前に該当する産業分類の確認をせずに協議会への加入手続きを行い、申請した産業に該当しないことが判明する等の事例が多々起きているようです。そうなってしまうと再度手続きをする必要がでてきて余計に時間も取られてしまいます。

協議・連絡会への加入手続きをスムーズにするためにも、事前に該当する産業分類の確認はきちんとしておきましょう。

また協議・連絡会への加入に関しては、「事業所」単位での加入になります。したがって同一の企業であっても複数の事業所で特定技能外国人を雇用したい場合は、その事業所毎の手続きが必要となりますので注意しましょう。

加入手続きに必要な書類

加入手続きにあたっては、以下のいわゆる「3点セット」が必要となります。

  1. 製造品及びその用途が確認できる画像と説明文
  2. 製造品を生産するために用いた設備(工作機械、鋳造機、鍛造機、プレス機など)の画像および説明文
  3. 事業実態を確認できる直近1年以内の証跡画像(上記1.の製造品の納品書、出荷指示書、仕入れ書など)

加入手続きに必要な3点セットの他にも、必要に応じて他の書類の提出が求められる場合があります。

おわりに

素形材産業分野で特定技能外国人を雇用する場合のポイントをご説明いたしました。

事前に特定技能外国人を受入れることができる産業分類に該当しているかどうか確認するのは大事なポイントでしたね。

特定技能外国人を雇用したいと思っても、手続きの最初で躓いてしまうと先が思いやられてしまうかもしれません。

当事務所では事業者様の個別の状況に応じて、最適な方法で特定技能外国人雇用のサポートを承っております。

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ここでは、素形材産業分野で特定技能外国人を雇用する際のポイントについてお話ししましたが、「製造3分野における特定技能ビザ人材活用」のページにも素形材産業分野について記載しておりますので、ご参照ください。

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)

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