【1問1答】特定技能「事前ガイダンス」に必要な内容・時間について

1号特定技能外国人を雇用するためには、様々な支援をおこなう必要があります。

数多くある支援の中で、一番初めにおこなう支援が「事前ガイダンス」です。

この記事では、事前ガイダンスでおこなうべき内容や実施時間、実施時期などについて、特定技能の専門家行政書士が、1問1答形式で回答します。

Q:はじめて特定技能外国人の支援をおこなうことになりました。受入れにあたり、外国人に対して「事前ガイダンス」が必要と聞きましたが、何をすればいいでしょうか?(登録支援機関A社)

A:ご相談ありがとうございます。はじめての支援であれば、色々と不慣れなこともあるかと思います。今後の支援をスムーズにおこなうためにも、事前ガイダンスについてしっかりと理解しておくことが大切です。

事前ガイダンスは特定技能外国人対しておこなう支援の一つで、日本での活動内容、上陸・在留のための条件など、留意すべき事項について情報提供をおこなうものです。

特定技能の支援の内容は多岐にわたりますが、その中でも1番最初におこなう支援が事前ガイダンスです。

支援には必ずおこなわなければならない「義務的支援」と、義務的支援に加えておこなうことが望ましい「任意的支援」があります。まずはそれぞれの内容を確認しましょう。

事前ガイダンス(義務的支援)

事前ガイダンスにおける「義務的支援」とは、特定技能外国人に対して情報提供することが、法令で義務付けられている支援事項です。

これらの事項についての説明を怠ると、適正に支援を実施していることにならないので注意してください。

義務的支援として説明する事項はたくさんあるので、一つずつ見ていきましょう。

業務内容・報酬額・労働条件に関すること

特定技能外国人が従事する仕事の内容、報酬や労働条件について説明します。

労働条件には、危険または有害な業務に従事することが見込まれる場合の安全衛生に関する事項も含まれます。

実務上のポイント!
報酬額・労働条件は雇用者側、被雇用者側双方にとっての重要な事項です。事前ガイダンスをおこなったにもかかわらず、いざビザ申請をする段階になって報酬額でトラブルになる事例も起こっていますので、報酬額や労働条件については誤解の生まれないように明確に説明してください。

日本でおこなうことができる活動の内容

特定技能としておこなえる活動や、技能水準が認められた業務区分でのみ活動できることを説明します。

実務上のポイント!
特定技能は産業分野ごとに業務区分が決まっています。業務区分の範囲を超えた業務をすると違法になります。従事できる業務等について、外国人が十分に理解できるように説明することが大切です。

入国にあたっての手続きについて

  • 新たに入国する場合は、交付された在留資格認定証明書を特定技能所属期間から本人へ送付し、管轄の日本大使館・領事館でビザを申請・受領して入国する流れと、在留資格認定証明書の交付日から3カ月以内に入国しなくてはいけないことを説明します。
  • すでに日本に在留している場合は、在留資格変更許可申請をおこなって在留カードを受領する必要があることを説明します。

保証金等の支払い・違約金等に係る契約をしていないこと

特定技能所属機関や登録支援機関、職業紹介事業者などが、特定技能外国人本人や配偶者、親族等に対し特定技能の活動に関して保証金の支払いを求めたり、雇用契約の不履行について違約金を定める契約などをしていないこと・将来にわたってしないことを確認します。

金銭だけでなく、有価証券、土地、家屋などの財産についても管理・移転を予定する契約はできないことを説明する必要があります。

外国の機関に支払った費用についての確認

特定技能雇用契約の申込の取次や準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合、金額や内訳を理解して合意したか確認します。

支払いの有無、支払った機関の名称、支払い年月日、金額・内訳についても確認が必要です。

​​特定技能外国人の在留諸申請で提出する「参考様式第1-16号 雇用の経緯に係る説明書」に、求職者(申請人)が自国等の機関に支払った費用について記入する箇所があるのでしっかり確認しましょう。

支援に要する費用について

支援に必要な費用を、直接・間接的に特定技能外国人に負担させないことを説明します。

義務的支援の費用は、特定技能所属機関が負担します。

入国の際の送迎について

特定技能外国人が入国する際は空港や港まで出迎え、特定技能所属機関の事業所や外国人の住居まで送迎をおこなうことを説明します。

住居の確保についての支援内容

社宅等を貸与する場合は広さや外国人が負担する家賃等、住居に関する支援内容を説明します。

実務上のポイント!
給与から控除する費用についてもトラブルの元になりますので、家賃や光熱費等を徴収する場合はしっかりと説明してください。くどいくらい説明するつもりでちょうど良いと思ってください。

相談・苦情を受ける体制について

職業生活、日常生活、社会生活に関する相談や苦情の申し出を受ける体制があることを説明し、受付ける曜日・時間・方法(面談・電話・電子メールなど)を伝えます。

支援担当者について

特定技能所属機関の支援担当者の氏名、連絡先を伝えます。

事前ガイダンス(任意的支援)

上記の義務的支援に加え、情報提供することが望ましいとされるのは以下のような事項です。

  • 入国時の日本の気候やそれに合わせた服装
  • 本国から持参すべき物、持参した方がよい物や持参してはいけない物
  • 入国後、当面必要となる金額とその用途
  • 作業着やユニフォーム等、特定技能所属機関から支給される物

また就労開始前であっても、事前ガイダンス実施後は特定技能外国人からの相談に適切に応じることが望まれます。

外国人が安心して入国できるように、必要と思われる情報を伝えてあげましょう。

Q:事前ガイダンスの実施時間は決まっていますか?

A:事前ガイダンスは、説明した情報を十分に理解するために「3時間程度」おこなうことが必要とされています

ただし、3時間実施すればよいというわけではなく、特定技能外国人が十分に理解できるまでおこなう必要があります

つまり、以下のように「3時間程度」という基準と「十分に理解できる」という基準の両方を満たしている必要があります。

・3時間以上実施したが、外国人が十分に理解できていない。→不可

・1時間しか実施していないが、外国人は十分に理解できている。→不可

・3時間以上実施して、かつ、外国人は十分に理解できている。→可。

ということです。

以上が原則ですが、例外的に事前ガイダンスを3時間実施しなくてもよい場合もあります

例えば、すでに技能実習生を受入れている実習実施機関が、技能実習修了後に当該実習生を引き続き特定技能1号として受入れる場合などです

このような場合は、外国人がすでに日本の生活に慣れていることが想定されるため、事前ガイダンスの実施時間を短縮することが可能です。具体的には、最低1時間以上のガイダンスを実施すれば足ります

逆に言うと、(短縮できる場合でも)1時間に満たない場合は、事前ガイダンスを適切に実施したとは認められません。

実施時間を短縮できる場合でも、内容について外国人が十分に理解できるまでガイダンスをおこなう必要があることは、通常の場合と同じです。

また、他の事業所から転職してきた外国人についてもガイダンスは必要ですが、この場合も理解が早ければ短時間で終了することが可能です。

Q:複数名の外国人に対して、同時に事前ガイダンスをおこなうことは認められていますか?

A:はい。複数名の外国人に対して同時に事前ガイダンスを実施することは認められます。

例えば、同じ特定技能所属機関で同時に2名の特定技能外国人を受入れる場合、同じ日時・同じ場所で2名に対して同時に事前ガイダンスを実施することは可能です。

複数名に対して同時に事前ガイダンスを実施する場合でも、全員が内容を十分に理解できるまでおこなう必要があります。

Q:複数名同時に事前ガイダンスを実施する場合の実施時間はどのように計算しますか?

A:複数名同時に事前ガイダンスを実施した場合は、実際の実施時間が、全員に対して実施した時間がカウントされます。

例えば、13:00~16:00の3時間、同時に2名に対して生活オリエンテーションを実施したとします。

この場合、3時間÷2名(人数)=1.5時間 とはならず、2名とも3時間の生活オリエンテーションを実施したことになります。

ただし、(くどいようですが)全員が事前ガイダンスの内容を十分に理解できるまで実施する必要があります。

Q:事前ガイダンスはいつおこなえばいいですか?

A:事前ガイダンスでの説明事項には、給与額などの労働条件が含まれているので、「特定技能雇用契約を締結する前」に実施することが望まれます。

事前ガイダンスの内容には、外国人が従事する業務内容、報酬の額、その他の労働条件、手続きや入国後の送迎、住居についての情報が含まれています。

あらかじめ説明しておくことで外国人の不安を解消し、雇用契約締結後のトラブルを防ぐことにもつながります。

また、特定技能ビザ申請の提出書類に、事前ガイダンスを実施したことの有無を記載しますので、ビザ申請の前までには必ず実施している必要があります。

Q:事前ガイダンスはZoomなどでおこなってもいいですか?

A:はい。事前ガイダンスはZoom等のリモートで実施することが可能です。

事前ガイダンスは、対面、テレビ電話、インターネットによるビデオ通話などにより、本人であることの確認をおこなったうえで実施することが求められます。

ただし、文書の郵送や電子メールの送信のみでは、本人確認やガイダンスを理解したことを確認できないため認められません。

また、外国人が十分に理解することができる言語で実施する必要があります。

Q:「事前ガイダンスの確認書」には決められた書式がありますか?

A:「参考様式第5-9号 事前ガイダンスの確認書」を使用します。

事前ガイダンスをおこなった場合、事前ガイダンスの確認書の内容を確認してもらったうえで外国人に署名をしてもらいます。

確認書は外国人が「十分に理解できる言語」が併記された書式が必要ですが、日本語能力試験N1を保有しているなど日本語を十分に理解できる場合は、日本語のみの書式でも問題ありません。

日本語表記、英語表記、日本語+外国語併記のものが出入国在留管理庁のホームページからダウンロードできます。

9カ国語から選択できるので、外国人の母国語に翻訳されたものを使用するとよいでしょう。

事前ガイダンスの確認書は「参考様式第1-7号(旧様式)」から「参考様式第5-9号(新様式)」に改正されているため、新様式の方を使用します。

確認書は特定技能所属機関または登録支援機関で保管する義務があります。

Q:事前ガイダンスの確認書は、入管に提出する必要はありますか?

A:提出する必要はありません。

以前は在留資格認定証明書交付申請(または在留資格変更許可申請)の際に添付書類として写しを提出する必要がありましたが、2021年1月の参考様式の改正により提出が不要になりました。

ただし、事前ガイダンスを実施したら「事前ガイダンスの確認書」に署名をしてもらい、特定技能所属機関、支援を委託している場合は登録支援機関が保管します。

事前ガイダンスの実施の有無については、在留資格認定証明書交付申請(または変更許可申請)で提出する「参考様式第1-16号雇用の経緯に係る説明書」に記載する箇所があります。

確認書の提出が不要でも、適切に事前ガイダンスを実施しましょう。

 

以上、特定技能「事前ガイダンス」の内容や実施方法について解説しました。

ご参考になれば幸いです。

 

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)

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