特定技能外国人を雇用する特定技能所属機関は、入管法に基づいて「定期届出」や「随時届出」をおこなう義務があります。
当ホームページでは特定技能所属機関の方に向けて、届出をおこなう時期や届出に必要な書類、書類の書き方などをご紹介しています。
今回は、随時届出の一つである「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」について、特定技能のサポート実績を持つ行政書士がわかりやすく解説します。
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随時届出とは?
「定期届出」が四半期に1回、特定技能外国人の活動状況や支援の実施状況を報告するための届出であるのに対し、「随時届出」は、特定技能雇用契約や支援計画に変更があった場合に随時届け出るものです。
「随時届出」は大きく分けて5つ
随時届出は受入れている特定技能外国人に関して変更が生じた場合に届け出るものですが、変更内容によって大きく5つの届出に分類することができます。
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- 特定技能雇用契約に係る届出
- 1号特定技能外国人支援計画変更に係る届出
- 登録支援機関との支援委託契約に係る届出
- 受入れ困難に係る届出
- 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為に係る届出
この記事では「3. 登録支援機関との支援委託契約に係る届出」について、届出が必要な変更事項や届出に必要な書類と書類の書き方を解説していきます。
「随時届出」は誰がおこなう?
上記1〜5の特定技能外国人に関する随時届出は、特定技能外国人を雇用する所属機関から入管に届け出る必要があります。
外国人の支援を登録支援機関に委託している特定技能所属機関で、登録支援機関の支援責任者が変更になったり委託契約の内容を変更したりした場合であっても、届け出るのは特定技能所属機関なので間違えないよう注意が必要です。
「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」が必要な変更事項と提出書類
では、「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」について、届出が必要となる変更事項と提出書類を見ていきましょう。
登録支援機関との支援委託契約に関して、届出が必要となるのは以下のような場合です。
- 支援委託契約の契約内容を変更した
- 支援委託契約を終了した
- 新たに登録支援機関と支援委託契約を締結した
- 委託先の登録支援機関を変更した
ひとつずつ解説していきます。
「支援委託契約の契約内容を変更した」場合の届出書類
支援委託契約の契約内容の変更とは、在留資格申請の際に提出した「登録支援機関との支援委託契約に関する説明書」の「5 委託料(1名当たりの月額)」または「6 契約期間」の欄の記載内容を変更した場合です。
つまり、委託料や契約期間を変更した場合に届出が必要で、下記の書類を提出します。
- 支援委託契約の変更に係る届出書(参考様式第3-3-1号)
「支援委託契約を終了した」場合の届出書類
登録支援機関との委託契約を終了し、自社支援に切り替える場合には、下記の届出書を提出します。
- 支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
また、登録支援機関との委託契約を終了し自社支援を実施するということは支援計画を変更することにもなるため、合わせて登録支援機関について「支援計画変更に係る届出」もおこなう必要があります。
「支援計画変更に係る届出」に必要な書類と書類の書き方については「【徹底解説】随時届出の書き方(4) 支援責任者・担当者、支援内容、登録支援機関の変更」のページでくわしく解説しているので確認してください。
登録支援機関に支援の全部を委託している特定技能外国人が退職した場合は、必ず「支援委託契約の終了または締結に係る届出書」(参考様式第3-3-2)を提出する必要があります。
よく次のような誤解をしている人がいます。
「複数名の特定技能外国人の支援を委託している場合で、そのうちの1名だけが退職して、他の者は引き続き支援委託契約が存続する場合は、退職した1名についても「支援委託契約の終了または締結に係る届出書」(参考様式第3-3-2)の提出は不要。」
しかし、これは間違いです。
複数名の特定技能外国人について支援を委託している場合であっても、退職した者については、参考様式第3-3-2の提出が必要です。
支援委託契約が存続する他の特定技能外国人については、参考様式第3-3-2の提出は必要ありません。
例えば、以下の3名の特定技能外国人を雇用していたとします。
特定技能外国人A:支援の全部を登録支援機関に委託
特定技能外国人B:支援の全部を登録支援機関に委託
特定技能外国人C:特定技能所属機関で支援を実施(または支援の一部を登録支援機関に委託)
この3名のうち、特定技能外国人Aが退職して、BとCは引き続き在籍しているとします。
退職したことによって、登録支援機関との支援委託契約は修了するので、Aについては参考様式第3-3-2の提出をおこなう必要があります。
Bについては、引き続き在籍して、かつ、支援委託契約も存続する場合は、参考様式第3-3-2の提出は不要です。
Cについては、もともと登録支援機関に支援の全部を委託していないので、参考様式第3-3-2の提出は不要です。
要するに、支援の全部を委託している特定技能外国人が退職した場合は、必ず参考様式第3-3-2の提出が必要です。
「新たに登録支援機関と支援委託契約を締結した」場合の届出書類
自社支援をやめて登録支援機関へ委託することになった場合は、以下の書類を提出します。
- 支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(参考様式第1-25号)
「委託先の登録支援機関を変更した」場合の届出書類
支援を委託する登録支援機関を変更した場合、以下の書類を提出します。
- 支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
- 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(参考様式第1-25号)
なお、委託先を変更するということは支援計画を変更することにもなるため「支援計画変更に係る届出」を合わせておこなう必要があります。
また、委託先の変更に伴って支援責任者・担当者が変更になる場合は、支援責任者・担当者変更についての添付書類も提出する必要があります。
くわしくは「【徹底解説】「随時届出」の書き方(支援責任者・担当者、支援内容、登録支援機関の変更)」のページで解説しているので確認してください。
「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」提出書類の書き方
ここからは、「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」で提出する書類の書き方を一つずつ解説していきます。
支援委託契約の変更に係る届出書(参考様式第3-3-1号)
登録支援機関との支援委託契約について、委託料や契約機関の変更があった場合に提出する届出書です。
「① 届出の対象者」には、契約内容変更の対象となる特定技能外国人について記入しますが、対象者が複数人いて記入欄が足りない場合は「別紙のとおり」と記入して「参考様式第3-3号(別紙)を使用します。
「② 変更の事由」の「a 変更年月日」は変更が決まった日ではなく、変更後の内容が実際に適用された日を記入します。この変更年月日より前に届出をおこなうことはできません。
「b 変更事項」は該当するものを全て選択し、チェックを入れた項目の「変更前」と「変更後」の内容を記入します。「その他」を選択した場合は、変更内容がわかる資料を添付する必要があります。
「③ 届出機関」は特定技能所属機関について、「④ 登録支援機関」は登録支援機関について記入します。どちらも、個人事業主の場合は法人番号の記入は不要です。
「③ 届出機関」の「担当者」は、この届出を担当した特定技能所属機関の役職員の氏名を記入します。
「本届出書作成者の署名/作成年月日」の欄は、この届出書を作成した特定技能所属機関の役職員が手書きで署名します。(印字は認められません)
支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
この書類は、以下の場合に共通して提出する届出書です。
- 支援委託契約を終了した(委託から自社支援に切り替え)
- 新たに登録支援機関と支援委託契約を締結した(自社支援から委託に切り替え)
- 委託先の登録支援機関を変更した
「① 届出の対象者」の欄は、届出の対象となる特定技能外国人について記入します。対象者が複数人いる場合は「別紙のとおり」と記入し、「参考様式第3-3号(別紙)」を使用します。
特定技能外国人を複数人雇用している所属機関は、退職する外国人以外の支援委託契約が継続する場合でも、退職する外国人についての委託契約終了の届出をおこなう必要があります。
その場合「① 届出の対象者」には、退職して委託契約が終了になった外国人だけを記入します。
「② 届出の事由」については、上記の3つのケースで記入する箇所が異なるため、一つずつ解説していきます。
支援委託契約を終了した場合
外国人が退職した場合や自社支援に切り替える場合、「② 届出の事由」は「支援委託契約の終了」だけにチェックを入れます。(その他の項目にはチェックを入れません)
「A 契約の終了」の欄は、「a 終了年月日」に委託契約が終了した日付を記入します。
「b 終了の事由」は、「大分類」「小分類」の両方から選択してチェックを入れます。
例えば特定技能所属機関の都合で自社支援に切り替える場合、「大分類:特定技能所属機関の都合による終了」「小分類:経営上の都合」にチェックを入れます。
特定技能外国人が自発的に離職した場合は、「大分類:特定技能所属機関の都合」「小分類:その他」にチェックを入れ、( )内に「外国人の自己都合による退職」などと記入します。
「B 契約の締結」の欄は記入しません。
なお、外国人が退職して「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書 (参考様式第3-1-2号)」の「c 委託契約を締結していた登録支援機関」に記入した場合、この届出書は提出不要です。
新たに登録支援機関と支援委託契約を締結した場合
自社支援から委託に切り替えるため新たに登録支援機関と委託契約を締結した場合、「支援委託契約の締結」だけにチェックを入れます。(その他の項目にはチェックを入れません)
「A 契約の終了」の欄は記入せず、「B 契約の締結」の欄に、登録支援機関と契約を締結した日付や登録支援機関についての情報を記入します。
委託先の登録支援機関を変更した場合
委託先を変更した場合は、「支援委託契約の終了と締結」だけにチェックを入れます。(その他の項目にはチェックを入れません)
委託していた登録支援機関との委託契約を終了して別の登録支援機関と新たに委託契約を締結しているため、「A 契約の終了」「B 契約の締結」両方の欄に記入します。
「A 契約の終了」の「b 終了の事由」には、元々契約していた登録支援機関と契約終了になった理由を「大分類」「小分類」両方から選択してチェックを入れます。
「B 契約の締結」には、新たに契約を締結した登録支援機関についての情報を記入します。
「③ 届出機関」の欄の書き方は、変更内容に関係なく全て同じです。
登録支援機関に委託している場合でも自社支援の場合でも、「③ 届出機関」の欄に記入するのは特定技能所属機関の情報です。
「担当者」「本届出書作成者の署名」は、特定技能所属機関の役職員の氏名を記入します。署名欄は印字ではなく、手書きで記入します。
登録支援機関との支援委託契約に関する説明書(参考様式第1-25号)
自社支援から委託に切り替えて新たに登録支援機関と委託契約を締結した場合や、委託先の登録支援機関を変更した場合に、届出書に添付する書類です。
「1 申立人」は、支援対象者でありこの届出の対象である特定技能外国人の氏名を記入します。届出の対象者が複数人いて、「2」〜「4」の項目に記入する内容が全て同じである場合は「別紙のとおり」と記入して別紙を添付します。
「2 契約の相手方」は、登録支援機関登録簿に記載されている名称を記入します。
「3 契約年月日」は、「支援委託契約の終了又は締結に係る届出書」の「B 契約の締結」に記入した「締結年月日」を記入します。
「4 委託する支援業務」は、この届出が支援の全部を委託する場合を対象としているため、「該当」に〇をつけます。
「5 委託料」「6 契約期間」は、契約書に基づいて記入します。
以上が、登録支援機関との支援委託契約に変更があった場合に必要な書類の書き方です。
ここでご紹介した提出書類は少ないですが、委託先を変更した場合や自社支援に切り替えた場合は「支援計画変更に係る届出」も必要になり、提出する書類も多くなるため合わせて確認してください。
「随時届出」の提出先と提出時期
では、支援計画に変更があった場合「いつ」「どこに」届出をおこなえばいいのでしょうか。
随時届出の提出時期
随時届出は、届出事由が発生してから14日以内に届出書を提出しなくてはいけません。
届出事由の発生というのは、例えば雇用契約を変更する場合、変更することが決まった日ではなく雇用契約の変更日から14日以内ということです。
届出書は郵送でも提出できますが、郵送の場合は14日以内の消印ではなく14日以内に地方入管に届いていなくてはいけません。
届出をおこなわなかった場合や虚偽の届出をした場合、特定技能外国人の受入れができなくなるだけでなく、罰金刑や過料を科されることもあります。
すでに特定技能ではなくなっている場合や帰国してしまった場合でも、特定技能として在留しているときに発生した事由については届出をおこなう必要があります。
届出事由が生じた日から14日が過ぎてしまっても、届出書を提出することはできます。
遅延した理由を記載した理由書(任意書式)を添付して、必ず届け出るようにしましょう。
届出書の提出方法
随時届出書は次の3つの方法で提出することができます。
窓口に持参して提出
特定技能所属機関の役職員で届出書の作成者が持参する場合は、身分を証明する文書の提示が必要です。
届出書の作成者以外が持参する場合は、届出書作成者の身分を証明する文書の写しに加え、提出者の氏名・連絡先・特
技能所属機関との関係を明らかにする文書や資料、委任状などを提出します。
郵送で提出
届出書の作成者の身分を証明する文書の写しを同封し、封筒に「特定技能届出書在中」等、記載します。
オンラインで提出
出入国在留管理庁の「電子届出システム」を利用するため、事前に窓口または郵送で利用者情報登録をする必要があります。
※身分を証明する文書とは、日本の機関が発行した身分証明書、健康保険証などのことです。
申請等取次者証明書を所持していれば、その写しでも問題ありません。
届出書の提出先
届出書の提出先は、特定技能所属機関の住所(法人の場合は、登記上の本店所在地)を管轄する地方出入国在留管理局・支局です。
管轄地域と地方局・支局の住所は下の表で確認してください。
管轄する都道府県
地方局・支局名 | 担当部門/住所 | 管轄する都道府県 |
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札幌出入国在留管理局 | 【持参による提出先】 〒060-0042 札幌市中央区大通西12丁目 札幌第3合同庁舎 【郵送による提出先】 〒062-0931 札幌市豊平区平岸1条22丁目2-25 |
北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 審査第一部門 〒983-0842 仙台市宮城野区五輪1-3-20 仙台第二法務合同庁舎 |
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
東京出入国在留管理局 | 就労審査第三部門 〒108-8255 東京都港区港南5-5-30 |
茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県 東京都、新潟県、山梨県、長野県 |
東京出入国在留管理局 横浜支局 | 就労・永住審査部門 〒236-0002 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7 |
神奈川県 |
名古屋出入国在留管理局 | 就労審査第二部門 〒455-8601 愛知県名古屋市港区正保町5-18 |
富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
大阪出入国在留管理局 | 就労審査部門 〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北 一丁目29番53号 |
滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県 |
大阪出入国在留管理局 神戸支局 | 審査部門 〒650-0024 兵庫県神戸市中央区海岸通り29 神戸地方合同庁舎 |
兵庫県 |
広島出入国在留管理局 | 就労・永住審査部門 〒730-0012 広島県広島市中区上八丁堀2-31 広島法務総合庁舎内 |
鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
高松出入国在留管理局 | 審査部門 〒760-0011 香川県高松市浜ノ町72-9 高松出入国在留管理局浜ノ町分庁舎 |
徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
福岡出入国在留管理局 | 就労・永住審査部門 【持参による提出先】 〒810-0073 福岡県福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎 【郵送による提出先】 〒814-0005 福岡県福岡市早良区祖原14-15 |
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 |
沖縄県 | 審査部門 〒900-0022 沖縄県那覇市樋川1-15-15 那覇第一地方合同庁舎 |
沖縄県 |
まとめ
随時届出の一つである「登録支援機関との支援委託契約に係る届出」について、必要書類と書類の書き方を解説しました。
この届出が必要になるのは以下の4つのケースですが、委託先を変更した場合と自社支援に切り替えた場合は支援計画も変更になるため、合わせて届出が必要になります。
- 支援委託契約の内容を変更した場合
- 支援委託契約を終了し、自社支援に切り替えた場合→「支援計画変更に係る届出」が必要
- 自社支援から委託に切り替え、新たに委託契約を締結した場合
- 委託先の登録支援機関を変更した場合→「支援計画変更に係る届出」が必要
「支援計画変更に係る届出」については【徹底解説】「随時届出」の書き方(支援責任者・担当者、支援内容、登録支援機関の変更)の記事をお読みください。
届出に不備がないよう、必要な書類についてしっかり確認しておくことが大切です。
以上、ご参考になれば幸いです。
執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)