特定技能所属機関から支援の委託を受けている登録支援機関は、四半期に一度、入管に対して「支援実施状況に係る届出」をおこなう必要があります。
また、登録支援機関に委託せず自社支援をおこなう特定技能所属機関も、この届出を自社でおこなわなくてはいけません。
届出は、各種「届出書」を提出しておこないますが、「届出書」の書き方は複雑で枚数も多く、作成者にとって少なからず負担となってきました。
こうした意見を受けて、入管は今までも書式の改定等を実施して、特定技能関連書類の簡略化に取り組んできましたが、その一環として、2023年3月1日に、定期届出の書類が改定されました。
これによって、今まで複数枚にわかれていた書類が1枚になるなど、作成が比較的簡単になりました。
ここでは、改定された定期届出書の書き方について、登録支援機関としての支援実績を持つ行政書士が、わかりやすく解説します。
定期届出とは
特定技能外国人を受入れ支援を実施している特定技能所属機関は、雇用契約や支援計画に関する各種届出をおこなわなくてはいけません。(支援を委託されている登録支援機関も同様です)
特定技能外国人に関する各種届出は「定期届出」と「随時届出」の2つに分けられますが、「定期届出」というのは決められた時期に定期的に受入れ状況や支援状況を報告するものです。
届出をおこなわなかったり虚偽の届出をおこなったりした場合、登録支援機関は登録取消しの対象になり、特定技能所属機関は特定技能外国人の受入れができなくなりますので忘れずに届出をおこなってください。
定期届出の提出期間
定期届出は四半期ごとに期間を区切り、対象期間について受入れ状況などを届け出ます。
対象期間ごとの届出期間(書類の提出期限)は下の表のとおりです。
対象期間 | 届出期間 | |
---|---|---|
第1四半期 | 1月1日〜3月31日まで | 4月1日〜4月15日まで |
第2四半期 | 4月1日〜6月30日まで | 7月1日〜7月15日まで |
第3四半期 | 7月1日〜9月30日まで | 10月1日〜10月15日まで |
第4四半期 | 10月1日〜12月31日まで | (翌年)1月1日〜1月15日まで |
定期届出の内容は2つ
定期届出には次の2種類がありますが、どの届出を誰がおこなうのか間違えないよう確認しましょう。
- 受入れ・活動状況に係る届出
- 特定技能所属機関の責任において実施
- 支援実施状況に係る届出
- 自社支援または一部委託・・・特定技能所属機関の責任において実施
- 全部委託・・・登録支援機関の責任において実施
登録支援機関は、支援の全部の委託を受けている場合のみ「支援実施状況に係る届出」をおこなう必要があります。
自社支援をおこなう受入れ企業や支援の一部を委託する受入れ企業の場合、1と2の届出を全て自社で実施しなくてはいけません。
届出書の提出方法
届出書を提出するには、次の3つの方法があります。
- インターネット
- 窓口
- 郵送
インターネットで届け出る場合、事前に「出入国在留管理庁電子届出システムポータルサイト」の利用者情報登録が必要です。
窓口で提出する場合は提出者の身分を証明する文書等を提示、郵送の場合は身分を証明する文書等の写しを同封する必要があります。
身分を証明する文書とは、日本の機関が発行した身分証明書や健康保険証の他、申請等取次者証明書などのことです。
届出書の提出先
届出書の提出先は、支援委託契約の相手方である特定技能所属機関の住所を管轄する地方出入国在留管理局です。
法人で複数の事業所がある場合は、登記上の本店所在地を管轄する管理局に提出します。
地方出入国在留管理局・支局の管轄地域と住所は下の表で確認してください。
地方局・支局名 | 担当部門/住所 | 管轄する都道府県 |
---|---|---|
札幌出入国在留管理局 | 【持参による提出先】 〒060-0042 札幌市中央区大通西12丁目 札幌第3合同庁舎 【郵送による提出先】 〒062-0931 札幌市豊平区平岸1条22丁目2-25 |
北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 審査第一部門 〒983-0842 仙台市宮城野区五輪1-3-20 仙台第二法務合同庁舎 |
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
東京出入国在留管理局 | 就労審査第三部門 〒108-8255 東京都港区港南5-5-30 |
茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県 東京都、新潟県、山梨県、長野県 |
東京出入国在留管理局 横浜支局 | 就労・永住審査部門 〒236-0002 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7 |
神奈川県 |
名古屋出入国在留管理局 | 就労審査第二部門 〒455-8601 愛知県名古屋市港区正保町5-18 |
富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
大阪出入国在留管理局 | 就労審査部門 〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北 一丁目29番53号 |
滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県 |
大阪出入国在留管理局 神戸支局 | 審査部門 〒650-0024 兵庫県神戸市中央区海岸通り29 神戸地方合同庁舎 |
兵庫県 |
広島出入国在留管理局 | 就労・永住審査部門 〒730-0012 広島県広島市中区上八丁堀2-31 広島法務総合庁舎内 |
鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
高松出入国在留管理局 | 審査部門 〒760-0011 香川県高松市浜ノ町72-9 高松出入国在留管理局浜ノ町分庁舎 |
徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
福岡出入国在留管理局 | 就労・永住審査部門 【持参による提出先】 〒810-0073 福岡県福岡市中央区舞鶴3-5-25 福岡第1法務総合庁舎 【郵送による提出先】 〒814-0005 福岡県福岡市早良区祖原14-15 |
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 |
福岡出入国在留管理局 那覇支局 | 審査部門 〒900-0022 沖縄県那覇市樋川1-15-15 那覇第一地方合同庁舎 |
沖縄県 |
定期届出に必要な書類
定期届出で提出する書類で書式が決まっているものは、出入国在留管理庁のホームページの参考様式一覧からダウンロード可能です。
窓口・郵送の場合は、全てA4サイズで片面印刷して提出します。
では、届出に必要な書類を、登録支援機関の場合と特定技能所属機関の場合にわけて説明します。
登録支援機関が提出する書類
特定技能所属機関から支援の全部の委託を受けている登録支援機関が定期届出をおこなう場合に、提出する書類は以下のとおりです。
必ず提出する書類
-
- 支援実施状況に係る届出書(参考様式第4-3号)
- 1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第4-3号(別紙))
状況に応じて提出する書類
-
- 相談記録書(参考様式第5-4号)
- 定期面談報告書(特定技能外国人用)(参考様式第5-5)
- 定期面談報告書(監督者用)(参考様式第5-6号)
- 生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8)※
- 転職支援実施報告書(参考様式第5-12号)
- 支援未実施に係る理由書(参考様式第5-13号)
- 理由書(任意様式)
※「生活オリエンテーションの確認書」は提出する必要がないため、登録支援機関が保管します。(自社支援の場合は所属機関が保管)
自社支援をおこなう特定技能所属機関が提出する書類
登録支援機関に支援の全部を委託せずに、特定技能所属機関が自社支援をおこなう場合は、所属機関自身が「支援実施状況に係る届出書」と「1号特定技能外国人支援対象者名簿」を作成して提出する必要があります。
一方で、登録支援機関に支援の全部を委託した場合は、登録支援機関が「支援実施状況に係る届出書」と「1号特定技能外国人支援対象者名簿」を作成して提出します。
どちらの場合でも「支援実施状況に係る届出書」と「1号特定技能外国人支援対象者名簿」と、書類の名前は同じですが、登録支援機関用と特定技能所属機関用で書式が異なります。
登録支援機関用は、参考様式第4-3号と4-3号別紙を使用して作成・提出します。
特定技能所属機関用は、参考様式第3-7号と参考様式第3-7号別紙を使用して作成・提出します。
紛らわしいので、間違えないように注意してください。
自社支援の場合に提出する書類
-
- 支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号)
- 1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第3-7号(別紙))
自社支援、または支援の一部を委託している特定技能所属機関の場合、「支援実施状況に係る届出」に加えて「受入・活動状況に係る届出」もおこなわなくてはいけません。
「受入れ・活動状況に係る届出」で提出する書類は以下のとおりです。
必ず提出する書類
-
- 受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3—6号)
- 特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3—6号(別紙))
- 賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの)
- 賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの)
状況に応じて提出する書類
-
- 報酬支払証明書(参考様式第5-7号)
「受入れ・活動状況に係る届出」に関する書類の書き方については「【解説】「定期届出」の書き方(特定技能所属機関)」で解説しているのでそちらの記事をご覧ください。
提出書類の書き方
ここからは、「支援実施状況に係る届出」に関する提出書類の書き方を解説していきます。
登録支援機関が提出する書類を例に説明しますが、特定技能所属機関の場合でも書き方は同じですので参考にしてください。
1 支援実施状況に係る届出書
支援実施状況に係る届出書の3枚目は記載要領なので提出する必要はありません。
☆2「法人番号」は法人のみ記入し、法人でない場合は空欄にします。
☆3登録支援機関・特定所属機関の「住所」は、法人の場合は登記上の本店の所在地を、個人事業主の場合は事業主の住民票の住所を記入します。
☆4「1号特定技能外国人支援対象者名簿」の書き方については、このあと解説します。
☆5「1号特定技能外国人の支援」については、1号特定技能外国人支援計画書に記入した支援で対象期間中に実施予定だったものについて「全て実施した」「実施していない支援がある」のどちらかにチェックを入れます。
対象期間に実施する予定がないものについては、ここでは報告の対象外です。
また、任意的支援について記入している場合は、任意的支援についても対象になります。
支援項目の「相談・苦情への対応」については、対象期間中に相談や苦情がなかった場合は「全て実施した」にチェックを入れてください。
支援項目「非自発的離職時の転職支援」についても、対象期間中に非自発的離職者が出なかった場合は「全て実施した」にチェックを入れてください。
「実施していない支援がある」にチェックを入れた場合、実施していない支援項目と実施していない理由を記載した「支援未実施に係る理由書」を添付する必要があります。
その他、「生活オリエンテーション」「相談・苦情への対応」「定期面談」「転職支援」などの支援を実施した場合には添付書類が必要です。添付書類の書き方については、このあとそれぞれの節で解説します。
☆6「支援対象1号特定技能外国人に関する出入国又は労働関係法令違反等」は、対象期間中、支援対象の特定技能外国人に対して特定技能所属機関や登録支援機関が、出入国又は労働に関する法令に違反する行為をおこなった場合、その内容について記入します。
また、出入国又は労働に関する法令に関し不正や著しく不当な行為があったことを知ったときは、特定技能所属機関が「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為に係る届出書(参考様式第3-5号)」を届け出る必要があります。
「6 1号特定技能外国人の行方不明その他の問題発生状況」については、①②は特定技能所属機関に所属する特定技能外国人について記入しますが、③(☆7)は、登録支援機関が特定技能所属機関として特定技能外国人を雇用している場合について記入します。
☆8「雇用又は実習監理する技能実習生の行方不明者数」は、登録支援機関が技能実習の監理団体として実習監理している場合に記入します。
☆9「その他登録支援機関の適格性に関すること」は、対象期間中に行政機関から登録支援機関に対して登録支援機関の適格性に関する指導があった場合に、その内容や対応の詳細を記入します。
また、立証資料の添付も必要です。
☆10「作成責任者の氏名」については、登録支援機関の役職員であって、「届出書の作成について責任を負う人」の氏名を記入します。
☆11「本届出書作成者の署名」は、登録支援機関の役職員であって、「実際に届出書を作成した人」が署名をします。(印字のみ、または社判の押印のみでは不可です。必ず直筆で署名をしてください。
「作成責任者」と、「本届出書作成者」は、同じ人が両者を兼ねても問題ありません。
一般的には、支援責任者や支援担当者が、「作成責任者」と「本届出書作成者」になるケースが多いようです。
2 1号特定技能外国人支援対象者名簿
この名簿には、対象期間中に特定技能所属機関に在籍していた1号特定技能外国人について記入します。
以前から在籍している方だけでなく、期間中に在留資格認定・在留資格変更許可を受けていても未就労の方や、期間中に退職した方など、1日でも在籍していた場合は対象となります。(在留資格認定を受けていても入国していない場合は対象外)
また、支援実施状況に係る届出書やその他の添付書類についても、基本的にはこの名簿に記入した1号特定技能外国人が報告の対象です。
☆1「在留カード番号」は、届出をおこなう時点で外国人が所持している、最新のカードの番号を記入します。
☆2「支援実施状況」の項目については、届出書の「4 1号特定技能外国人の支援」(☆5)で「実施していない支援がある」にチェックを入れた場合に、支援を実施しなかった外国人の「未実施の支援項目がある」にチェックを入れます。
ここまでが、支援実施の全部を委託されている、全ての登録支援機関が作成・提出する書類です。
ここから先は、支援の実施状況等によって提出(作成)する書類の書き方を説明していきます。
3 相談記録書
相談記録書は、対象期間中に特定技能外国人から相談や苦情を受けた場合に提出するものです。
☆1「相談受理日は」相談や苦情の申し出があった日付を記入します。
☆2「対応結果」には相談・苦情にどのように対応したか内容を記入しますが、労働基準監督署に通報をおこなったりハローワークに相談したりした場合には、その日付と行政機関の名称を記入しなくてはいけません。
記入欄が足りない場合は、2枚目を適宜編集して使用します。
4・5 定期面談報告書
定期面談報告書は、対象期間中に1号特定技能外国人やその監督者と定期面談をおこなった場合に提出する書類です。
外国人用と監督者用で書式が異なるためそれぞれに作成する必要がありますが、報告書の書き方は同じです。
☆1「対応者の氏名」は、定期面談を実施した方の氏名を記入します。なお、定期面談は支援計画書に記入した支援責任者または支援担当者が実施しなくてはいけません。
支援責任者・支援担当者に変更があった場合は「支援計画変更に係る届出書」の提出が必要です。
☆2の面談結果の「問題の有無」については、法令違反の疑いや不適切な処遇など問題があった場合にチェックを入れ、問題の内容を記入します。
☆3「法令違反等への対応」は、出入国又は労働に関する法令に関し、不正又は著しく不当な行為の発生があった場合に不正の内容やどのように対応したかを記入します。
また、面談の結果不正等の発生を知った場合、特定技能外国人の保護を図るための措置や関係行政機関への通報をおこなわなくてはいけません。
不正又は著しく不当な行為をおこなった特定技能所属機関は、「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為に係る届出書」を提出する必要があります。
☆4「面談実施者の氏名」は、この報告書を作成した日付、面談を実施した方の氏名を記入します。
6 生活オリエンテーションの確認書
生活オリエンテーションの確認書は、対象期間中に生活オリエンテーションを実施した場合に作成するものですが、この書類は提出する必要がないため登録支援機関が保管します。(自社支援の場合は所属機関が保管)
☆2の時間を記入する欄は、生活オリエンテーションを実施した日付と時間を記入します。
なお、特定技能外国人が生活オリエンテーションの内容を十分に理解するためには、少なくとも8時間以上オリエンテーションを実施する必要があります。
技能実習2号を良好に修了した外国人や留学生が特定技能に移行した場合でも、生活オリエンテーションの時間が4時間に満たない場合は適切に実施したとは認められません。
転職した特定技能外国人の場合でも、転職先の環境に応じて生活オリエンテーションを実施する必要があります。
☆3「説明者の氏名」は、生活オリエンテーションを実施した者の氏名を記入します。「特定技能所属機関(又は登録支援機関)の氏名又は名称」については、登録支援機関に支援の全部を委託した場合は登録支援期間の名称を、自社支援・一部委託の場合は特定技能所属期間の名称を記入します。
☆4「特定技能外国人の署名」は、生活オリエンテーションを実施した特定技能外国人にこの確認書を見せて確認をしてもらったうえで外国人に署名をしてもらいます。
7 転職支援実施報告書
期間中に、特定技能外国人の非自発的な理由で雇用契約を解除することになり転職支援を実施した場合は、転職支援実施報告書を提出しなくてはいけません。
☆2「在留カード番号」は、届出の時点で外国人が所持している最新のカードの番号を記入します。
☆3「非自発的離職時の転職支援の内容及び対応結果」は、実施した転職支援の内容を記入します。ハローワーク等に相談に行った場合は、その行政機関の名称や結果なども記入します。
8 支援未実施に係る理由書
対象期間中に実施する予定として支援計画書に記入した支援内容を実施しなかった場合、支援未実施に係る理由書を提出しなくてはいけません。
☆2「在留カード番号」は、届出時に外国人が所持している最新のカードの番号を記入します。
☆3「未実施となった支援内容及びその理由」は、実施する予定で実施しなかった支援項目全てにチェックを入れ、チェックを入れた項目ごとに未実施の理由を記入します。
9 理由書
届出期間中に定期届出ができなかった場合には、その理由を任意の書式で記入した理由書の提出が必要です。
定期届出をおこなわなかった場合は登録支援機関の登録取消など罰則の対象となるため、届出期間を過ぎてしまった場合でも、理由書を添付して速やかに定期届出をおこなうようにしましょう。
まとめ
登録支援機関や特定技能所属機関が実施する、定期届出の書き方を解説しました。
登録支援機関の責任においておこなう定期届出は「支援実施状況に係る届出」です。
自社支援・支援を一部委託する特定技能所属機関の場合は「受入れ・活動状況に係る届出」と「支援実施状況に係る届出」の両方をおこないます。
また、相談・苦情を受けたり定期面談を実施したりした場合には、支援実施状に係る届出書に加えて記録書や報告書を提出する必要があります。
定期届出は対象期間が終了した翌日から14日以内に提出しなくてはいけないので、初めて届出をおこなう場合は事前に内容を確認しておくことをおすすめします。
以上、ご参考になれば幸いです。
執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)