特定技能外国人の受入れ機関は、適切な支援を実施するために支援責任者と支援担当者を選任していないと1号特定技能外国人を雇用できません。
ですが、選任するにあたって「支援責任者と支援担当者の違いは?」「誰でも選任していいの?」と疑問をもつ事業者の方も少なくないでしょう。
ここでは、支援責任者と支援担当者のそれぞれの職務や選任するための要件について、特定技能外国人の支援実績のある行政書士がわかりやすく解説します。
支援責任者とは
まずは支援責任者の職務と要件について説明していきましょう。
支援責任者とは、受入れ機関の役員または職員であって、支援担当者を監督する立場にある者のことです。
支援責任者は常勤であることは問われないため、非常勤の役員や非正規雇用の職員であっても選任することが可能です。
これは、登録支援機関において選任する場合も同じです。
支援責任者の職務
支援責任者の具体的な職務は、以下の事項について統括管理をおこなうことです。
- 1号特定技能外国人支援計画の作成に関すること
- 支援担当者その他支援業務に従事する職員の管理に関すること
- 支援の進捗状況の確認に関すること
- 支援状況の届出に関すること
- 支援状況に関する帳簿の作成及び保管に関すること
- 制度所管省庁、業所管省庁その他関係機関との連絡調整に関すること
- その他支援に必要な一切の事項に関すること
たまに、「支援責任者は管理だけで直接支援業務には従事できない?」とご質問をいただくことがあります。
特定技能外国人との面談や公的手続きに同行するなど、支援責任者が支援担当者と同じように直接必要な支援を実施することは可能です。
支援責任者になるための要件
支援責任者は誰でも選任できるわけではありません。選任するときの要件は受入れ機関と登録支援機関で少し異なるため、それぞれ説明していきましょう。
受入れ機関が支援責任者を選任するときの要件
受入れ機関が自社で支援を実施する場合(支援の一部を委託する場合も)は、以下のいずれかに該当しなくてはいけません。
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- 過去2年間に就労系ビザで在留する外国人の受入れ・管理を行なった実績がある受入れ機関が、役職員のなかから選任していること
- 受入れ機関の役職員であって、過去2年間に就労系ビザで在留する外国人の生活相談業務に従事した経験がある者のなかから選任していること
- 1・2と同程度に適切に支援を実施することができると出入国在留管理理庁長官が認めたもので、受入れ機関の役職員のなかから選任していること
わかりやすくいうと、1は受入れ機関に受入れ・管理の実績があれば役職員のなかから選任できます。
2は、役職員のなかから生活相談業務に従事した経験がある者を選任できます。
つまり「受け入れ機関に実績があるか」「役職員に実績があるか」という違いですね。
ですから、受入れ機関に実績がない(1に該当しない)場合、生活相談の経験がある人を役職員として雇用して支援責任者に選任すれば、2に該当することになります。
さらに、支援の中立性を確保するため、支援対象の外国人に対して指揮命令をする立場にない、例えば異なる部署の職員などを支援責任者として選任しなくてはいけません。
部署が異なっていても、対象者に指揮命令できる立場の者は選任できないので注意が必要です。
登録支援機関が支援責任者を選任するときの要件
受入れ機関から支援の委託を受けるには、以下の全てを満たしている支援責任者を役職員から選任しなくてはいけません。
- 登録支援機関としての登録拒否事由に該当しない
- 受入れ機関の役員の配偶者、二親等以内の親族、その他受入れ機関の役員と社会生活において密接な関係にない
- 過去5年以内、受入れ機関の役職員ではない
そもそも、登録支援機関はこれらの要件を満たした支援責任者を選任していないと、登録支援機関としての登録を受けることができません。
また、登録支援機関が登録を受けるための要件のなかに、以下の項目があります。
以下のいずれかに該当すること
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この要件のCに該当するとして登録申請をする登録支援機関は、当然、過去5年間に2年以上、中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある支援責任者を選任しなくてはいけません
支援担当者とは
つづいて、支援担当者について説明します。
支援担当者とは、受入れ機関の役員または職員で、1号特定技能外国人支援計画書に記載した支援を実施する者のことです。
支援責任者は常勤かどうか問われませんが、支援担当者は必要に応じて実際に外国人を支援する必要があるため、常勤であることが望まれます。
支援担当者の職務
支援担当者の職務は支援計画書に沿った支援をおこなうことで、支援内容は以下のとおり10項目におよびます。
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- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居の確保や生活に必要な契約の支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続き等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(受入れ側の都合により離職する場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
支援担当者になるための要件
支援担当者を選任する場合にも要件があります。
受入れ機関が支援担当者を選任するときの要件
受入れ機関が支援担当者を選任する場合、以下のいずれかに該当しなくてはいけません。
- 過去2年間に就労系ビザで在留する外国人の受入れ・管理を行なった実績がある受入れ機関が、役職員のなかから事業所ごとに1名以上選任していること
- 受入れ機関の役職員であって、過去2年間に就労系ビザで在留する外国人の生活相談業務に従事した経験がある者のなかから事業所ごとに1名以上選任していること
- 1・2と同程度に適切に支援を実施することができると出入国在留管理理庁長官が認めたもので、受入れ機関の役職員のなかから事業所ごとに1名以上選任していること
支援責任者の要件とほぼ一緒ですが、違うのは支援担当者は支援を実施する事業所ごとに1名以上を選任しなくてはいけないということです。
事業所ごとに1名の支援担当者を選任していれば、複数の1号特定技能外国人の支援をおこなうこともできます。
また支援責任者と同様、支援対象者に指揮命令できる立場にある者は支援担当者に選任できません。
登録支援機関が支援担当者を選任するときの要件
登録支援機関が支援担当者を選任する場合は、登録支援機関の登録拒否事由に該当していない者を、事業所ごとに1名以上選任しなくてはいけません。
また、支援責任者の要件でも説明しましたが、登録支援機関の登録を受けるために支援責任者・支援担当者に相談の経験があるとして登録申請する場合は、過去5年間に2年以上、中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある支援担当者を選任する必要があります。
支援責任者は支援担当者を兼任できる?
中小企業や個人事業の場合、支援責任者と支援担当者をそれぞれ選任するのが難しいこともあると思います。
そのような場合、受入れ機関でも登録支援機関でも、支援責任者が支援担当者を兼任することができます。(事業規模に関係なく兼任できます)
ただし支援責任者と支援担当者、両方の要件を満たす者を選任しなくてはいけません。
また支援担当者として、業務をおこなう事業所に所属する必要があります。
支援責任者・支援担当者を選任できない場合
支援対象者を指揮命令する立場の役職員しかいない、外国人の受入れや相談等の経験がないなど、受入れ機関が支援責任者や支援担当者を選任する要件を満たせないこともあります。
受入れ機関が支援責任者や支援担当者を選任できない場合、適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係る基準を満たしていないことになってしまいます。
その場合、登録支援機関に支援計画の全てを委託しなくては外国人を受入れできません。
ですが、中小企業などの場合は、支援のノウハウがある登録支援機関に委託してしまったほうが安心して事業に専念できるなどのメリットもあるでしょう。
登録支援機関の場合は、支援責任者・支援担当者を選任していないと登録支援機関としての登録を受けることができません。
支援責任者・支援担当者を変更した場合
支援責任者や支援担当者を選任したあとに変更があった場合は、変更から14日以内に地方出入国在留管理局に届け出る必要があります。
受入れ機関で変更があった場合に、届出が必要な事項と提出書類は下の表のとおりです。(支援責任者・支援担当者に関するもののみ記載しています)
届出が必要な変更事項 | 届出書/添付書類 |
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支援責任者の変更
新たな支援責任者の選任 支援責任者の退任 支援責任者・支援担当者の役職変更 支援担当者の減少 支援担当者の変更・追加 |
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登録支援機関に支援を委託している場合も、登録支援機関で変更があった場合は届出が必要です。
届出が必要な変更事項と提出書類は、下の表のとおりです。
届出が必要な変更事項 | 届出書 | 添付書類 |
---|---|---|
支援責任者の変更
新たな支援責任者の選任 |
支援計画変更に係る届出書 |
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支援責任者の退任
支援責任者の役職変更 支援担当者の減少 |
支援責任者の役職変更の場合は+支援責任者の履歴書 |
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支援担当者の変更・追加
支援担当者の役職変更 |
|
注意が必要なのは、委託している登録支援機関で支援責任者や支援担当者に変更があった場合でも、受入れ機関の責任において届け出なくてはいけないということです。
届出が適正に履行されていないと、特定技能外国人の受入れができなくなってしまうこともあるため、変更があったら期限内に必ず届け出るようにしましょう。
まとめ
1号特定技能外国人のサポートを担う、支援責任者と支援担当者について解説しました。
支援責任者・支援担当者についてのポイントは以下の4つです。
- 受入れ機関でも登録支援機関でも、要件を満たす役職員のなかから支援責任者と支援担当者を選任すること
- 支援担当者は常勤が望まれるが、支援責任者は常勤かどうかを問われないため、非常勤や非正規雇用の職員でも選任することができる
- 支援責任者の職務は支援担当者の監督・統括管理、支援担当者の職務は支援計画書に沿った外国人の支援
- 支援責任者は、両方の要件を満たしていれば支援担当者を兼任できる
1号特定技能外国人を監督する立場の役職員しかいない中小企業や、事業を始めたばかりで外国人の受入れや相談実績がない事業者の方は、まずは支援を委託してノウハウを積むのもよいかもしれません。
以上、ご参考になれば幸いです。
執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)