素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野で特定技能2号になるには?

これまで特定技能2号の受入れは建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分のみが対象でしたが、令和5年6月9日の閣議決定により介護分野を除くすべての分野で受入れ可能になりました。

特定技能2号は熟練した技能を要する業務に従事し現場の作業員を指導・監督する立場なので、より重要な仕事を任せられるようになります。

また在留期間の上限がなくなることから、雇用中の1号特定技能外国人を2号へ移行させたいとお考えの事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは特定技能制度に詳しい行政書士が、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野で特定技能2号を取得するための要件や試験について詳しく解説します。

製造業分野で特定技能2号になるルートは2つ

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野(以下「製造業分野」とします)で特定技能2号になるには、次の2つのルートがあります。

  • 特定技能2号評価試験ルート
  • 技能検定ルート

どちらも技能に関する試験に合格する必要がありますが、製造業分野の特定技能2号には日本語試験の要件はありません。

また、どちらのルートでも実務経験が必要になります。

まずは、それぞれのルートの要件を確認してみましょう。

特定技能2号評価試験ルート

特定技能2号評価試験ルートは、以下の3つすべてを満たす必要があります。

  • ビジネス・キャリア検定3級取得
  • 製造分野特定技能2号評価試験の合格
  • 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること

技能検定ルート

技能検定ルートは、以下の両方を満たす必要があります。

  • 技能検定1級取得
  • 日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること

では、それぞれの試験や実務経験について詳しく解説していきます。

ビジネス・キャリア検定3級

ビジネス・キャリア検定は、厚生労働省が定める職業能力評価基準に準拠した公的な資格試験で、中央職業能力開発協会が実施しています。

特定技能2号評価試験ルートの学科試験という位置付けになります。

職種に応じて試験分野・区分が分かれており、生産管理分野の「生産管理プランニング」または「生産管理オペレーション」の3級の合格が必要です。

実施時期

試験は年に2回実施されます。

2024年度の試験日程と申請期間は以下の通りです。

前期

試験日 2024年10月6日(日)
受検申請受付期間 2024年4月22日(月)〜2024年7月12日(金)

後期

試験日 2025年2月16日(日)
受検申請受付期間 2024年10月7日(月)〜2024年12月6日(金)

試験会場

試験は47都道府県で実施されます。

2023年後期の試験会場は東京都、大阪府、兵庫県、奈良県、福岡県はそれぞれ2カ所、それ以外の道府県は1カ所のみでおこなわれました。

会場・試験地は変更になる場合があります。

出題形式

3級
出題形式 マークシート方式による4肢択一
出題数 40問
試験時間 110分
言語 日本語

学習方法

出題範囲は試験区分ごとに異なり、区分ごとのテキストや過去問題を購入することができます。

詳細は中央職業能力開発協会のホームページで確認してください。

また自主学習の他、認定講座を通学または通信で受講することもできます。

申込方法

受験の申込は、個人で申請する一般申請と企業(法人)で従業員の受験を取りまとめて申請する一括申請があります。

ここでは一般申請の流れを紹介します。

マイページ登録(未登録の場合)
申込フォームから受験申請
必要事項を入力、決済方法を選択・支払い後に申込完了メール送信
受験票到着(試験の1〜2週間前)

申請時期は、前期は2024年4月中旬〜7月中旬、後期は10月上旬〜12月上旬です。

受験料

3級の受験料は7,920円(税込)です。(2024年度前期試験から受験料が改定されました)

支払い方法はクレジットカード、コンビニ決済から選択できます。

試験結果

試験の約1カ月後にホームページ上で合格者番号が発表され(マイページからも確認可能)、1〜2カ月後に通知が届きます。

特定技能2号評価試験

特定技能2号評価試験ルートの実技試験です。

試験区分が「機械金属加工区分」「電気電子機器組立て区分」「金属表面処理区分」の3つに分かれているため、従事する業務区分に応じていずれかを受験します。

実施時期

2023年度は11月、1〜2月の2回実施されました。

2024年度の実施スケジュールは決定次第、製造業分野のポータルサイトで公表されます。

試験会場

試験は日本国内のみで実施されます。

2023年度は以下の10カ所で開催されました。

  • 仙台
  • 水戸
  • 東京
  • 金沢
  • 浜松
  • 名古屋
  • 岐阜
  • 大阪
  • 広島
  • 福岡

試験区分に含まれる技能

それぞれの試験区分に含まれる技能は、下の表の通りです。

試験区分 技能
機械金属加工区分 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、プラスチック成形、機械検査、機械保全、電気機器組立て、塗装、溶接、工業包装
電気電子機器組立て区分 機械加工、仕上げ、プラスチック成形、プリント配線板製造、電子機器組立て、電気機器組立て、機械検査、機械保全、工業包装
金属表面処理区分 めっき、アルミニウム陽極酸化処理

2023年度の1号評価試験は、試験区分の統合に伴う移行措置として試験区分の中でさらに技能を選択する形式で実施されていますが、2号評価試験は技能を選択する形式ではありません。

実施方法・サンプル問題

実施方法 ペーパー試験
時間 60分
言語 日本語

試験区分ごとのサンプル問題は、製造業分野のポータルサイトで見ることができます。

申込方法

試験申込は受験者ごとで、複数人まとめて申込むことはできません。

① マイページ登録(未登録の場合) 受験者ごとにメールアドレスが必要です。
② 受験申込 身分証明書・本人写真の画像が必要です。
③ 受験料の決済(クレジットカード) 受験者の名義以外のカードでも利用可能です。

申込は、試験実施日程の1カ月ほど前から受付開始予定です。(先着順)

受験料

受験料は15,000円です。

試験結果

試験後3カ月以内に、マイページにて結果通知がおこなわれます。

合格証明書の発行は、マイページから申請が必要です。

技能検定1級

技能試験は技能の習得レベルを評価する国家試験で、合格すると合格証書が交付され「技能士」と名乗ることができます。

試験は職種(作業)ごとにおこなわれますが、製造業分野で特定技能2号になるためには以下のいずれかの職種で1級の合格が必要です。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 鉄工
  • 工場板金
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 電子機器組立て
  • 電気機器組立て
  • プリント配線板製造
  • プラスチック成形
  • 塗装
  • 工業包装

技能検定は各都道府県が実施していますが、(製造分野に関する試験の中では)機械保全のみ公益社団法人日本プラントメンテナンス協会によっておこなわれています。

実施時期

都道府県が実施している(機械保全以外の)職種は、職種ごとに前期・後期に分かれて実施されます。

2024年度は、前期は2024年6〜9月、後期は2025年12〜2月に実施予定です。

職種ごとの日程は各都道府県職業能力開発協会ホームページの受検案内に記載されていますが、「後日決定」と書かれているものについては申請後に送付される受検票にて通知されます。

機械保全技能検定は年に2回実施されていますが、1級を受験できるのは12〜2月に実施される第2回試験だけです。

試験会場

試験は各都道府県で実施されますが、会場は申請時点では決まっていません。申請後に送付される受検票で通知されます。

試験概要

技能試験は実技試験と学科試験によっておこなわれ、両方に合格する必要があります。

どちらか片方のみに合格した場合、次回以降は不合格となった試験のみ受検し合格すれば問題ありません。

職業能力開発協会が実施する職種の試験の出題範囲は、厚生労働省ホームページの技能検定職種及び等級区分の「試験基準」の欄から確認することができます。

学科試験の概要

等級 1級
試験の形式 真偽法および四肢択一法
問題数 50題
試験時間 1時間40分

実技試験の概要

都道府県で実施される職種の実技には次の2種類の試験があり、①のみをおこなう職種と①と②の両方をおこなう職種があります。

① 制作等作業試験 制限時間内に物の製作・組立て調整などをおこなう
② 判断等試験、計画立案等作業試験 実際的な対象物または現場の状態、状況などについて説明した設問により、判別・判断・計測・計算などをおこなう

①の製作等作業試験は、長いものだと4〜6時間程度です。

試験問題は事前に公表されるため、中央職業能力開発協会・機械保全技能検定のホームページでそれぞれ確認してください。

都道府県が実施する職種の受験者には、公表日以降に試験問題が送付されます。

2024年度の問題公表日は、前期が5月30日(木)、後期は11月28日(木)です。

過去問題は、中央職業能力開発協会の「技能検定試験問題公開サイト」で見ることができます。

問題集は一般社団法人雇用問題研究会のホームページ、またはアマゾンで購入できます。

機械保全技能検定については、公式ホームページでテキストや過去問題集が公開されています。ただし、機械保全技能検定事務局で内容を保証しているわけではありません。

受検資格

技能検定を受けるには、検定職種に関する実務経験が必要です。

1級の場合は7年の実務経験が必要ですが、職業訓練歴、学歴等により短縮される場合があります。

技能検定の下位級に合格している場合、合格後から必要な実務経験の年数は以下のとおりです。

1級受検資格
実務経験のみ 7年
2級合格後 2年
3級合格後 4年

また以下の職種については技能試験の際、課題の一部に労働安全衛生法関係法令等に基づく就業制限又は特別教育を要する作業を伴うため、免許証の携帯や受講修了証等の提示、自己申告書への署名などが必要です。

(製造業分野に関する職種のみ記載しています)

職種(作業) 該当内容 試験当日の対応
金属プレス加工
(金属プレス作業)
動力プレスの金型取付け等 特別教育受講修了証等の確認または自己申告書への署名
鉄工
(製缶作業)
(構造物鉄工作業)
ガス溶接 ガス溶接作業主任者の免許証、ガス溶接技能講習修了証等の資格証の確認
アーク溶接 特別教育受講修了証等の確認または自己申告書への署名
工場板金
(曲げ板金作業)
(打出し板金作業)
ガス溶接 ガス溶接作業主任者の免許証、ガス溶接技能講習修了証等の資格証の確認
ダイカスト
(コールドチャンバダイカスト作業)
玉掛け作業 技能講習受講修了証等の資格証等の確認または特別教育受講修了証等の確認もしくは自己申告書への署名
クレーン運転 特別教育受講修了証等の確認または自己申告書への署名
電気機器組立て
(変圧器組立て作業)
ガス溶接 ガス溶接作業主任者の免許証、ガス溶接技能講習修了証等の資格証の確認

申込方法

都道府県職業能力開発協会が実施する職種については、受験申請書に必要書類を添付して窓口に持参、または簡易書留で郵送します。

協会によっては窓口申請を受け付けていないこともあるため、受験を希望する都道府県の受験案内を確認してください。

受検申請の流れは以下の通りです。

都道府県職業能力開発協会のホームページで受検案内の内容を確認
受検申請書を入手

  • 各協会や配布施設で直接入手、または郵送による取り寄せができます。
受検申請書に必要事項を記入・本人確認書類を添付
申請書を提出

  • 窓口に提出・または簡易書留で郵送します。
  • 人数制限のある職種については先着順で、定員を超えた日に届いた分は抽選になります。
  • 協会によっては事前エントリーが必要な場合もあります。
受検手数料をの支払い

受付期間終了後に郵送される請求書に基づき、銀行振込等で手数料を支払います。

機械保全技能検定は、個人申請のほか団体申請も可能です。

インターネットまたは郵送で申請をしますが、受付期間はインターネット申請の方が長く設定されています。

また郵送の場合は申請書をダウンロードしA3サイズに印刷する必要があるため、インターネット申請が推奨されています。

受検手数料

都道府県職業能力開発協会が実施する職種の受験手数料は以下の通りです。

学科試験のみ 3,100円
実技試験のみ 18,200円
学科・実技両方 21,300円

上記は目安であって、都道府県によって異なる場合もあります。

機械保全技能検定の受験手数料は以下の通りです。

学科試験のみ 4,600円
実技試験のみ 15,400円
学科・実技両方 20,000円

試験結果

2024年度の合格発表は、前期は2024年10月4日(金)、後期は2025年3月14日(金)におこなわれます。

合格者の受験番号のみ、各協会のホームページ等に掲載される予定です。

また合格者には合格通知が郵送され、後日、合格証書が交付されます。

製造業の現場における3年以上の実務経験とは

製造業分野で特定技能2号を取得するには、どちらのルートでも「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験」が必要です。

「日本国内に拠点を持つ企業」とは、日本国内に登記している本店または主たる事務所がある企業のことです。

「製造業の現場」とは、日本標準産業分類に上げる産業のうち【大分類E-製造業】に掲げるものをおこなっている事業所です

この事業所にて製造品の加工等に従事した経験が3年以上あれば、特定技能1号の対象ではない製造業での従事経験も実務経験と認められます。

ただし、[中分類09-食料品製造業]と[中分類10-飲料・たばこ・飼料製造業]は除きます。

実務経験を有していることは「実務経験証明書」の提出によって証明します。

「実務経験証明書」は特定技能2号評価試験ルートの場合、2号評価試験の申込時に提出します。

技能検定ルートの場合は、在留資格申請時に入管に提出します。

特定技能2号ビザ申請に必要な製造業分野に関する書類

必要な試験に合格した外国人が特定技能2号として働くには、在留資格の申請が必要です。

日本にいる外国人が特定技能1号から移行する場合は「在留資格変更許可申請」を、申請時点で海外にいる外国人を呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」をおこないます。

ここでは製造業分野に関する必要な書類をご紹介しますが、どちらの在留資格申請の場合でも準備するものは同じです。

  1. 資格取得ルートに応じた書類
    a. 特定技能2号評価試験ルートの場合
    ・製造分野特定技能2号評価試験の合格証明書の写し(希望する業務区分に応じたものに限る)
    ・ビジネス・キャリア検定3級の合格証明書の写し(生産管理プランニングまたは生産管理オペレーション)
    b. 技能検定ルートの場合
    ・技能検定1級の合格証明書の写し(希望する業務区分に応じたものに限る)
    ・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野2号特定技能外国人に求められる実務経験に係る証明書(分野参考様式第3-2号)
  2. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約(分野参考様式第3-1号)
  3. 協議会の構成員であることの証明書

まとめ

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野で特定技能2号を取得するための要件と必要な試験の概要を解説しました。

2号になるには、製造業の現場における3年以上の実務経験と技能試験の合格が必要です。

また、技能検定1級を受験する場合は検定職種に関する実務経験が7年必要です。

特定技能2号は1号よりも熟練した技能を求められるため試験に合格することは簡単ではないでしょうし、それぞれの試験を受験できる機会は年に1〜2回しかありません。

2号移行を検討している雇用主の方は、実務経験の要件をクリアしているかを確認し、受験のタイミングに合わせて早めに対策するようにしましょう。

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