【徹底解説】 登録支援機関


特定技能制度について調べていると「登録支援機関」という言葉をよく目にすると思います。

「登録支援機関」とは、どのような機関なのでしょうか? 特定技能制度に特化した行政書士がわかりやすく解説します。

登録支援機関とは?~受入機関の代わりに外国人の支援を行います~

登録支援機関とは、一言でいえば特定技能外国人の受入機関に代わって、雇用する外国人の支援を行う機関です。

1号特定技能外国人を雇用する場合には、受入機関は「1号特定技能外国人支援計画」(注)を策定し、それに基づき様々な支援を外国人に対して行う義務があります

(2号特定技能外国人の場合は支援は義務ではありません)

受入機関に義務付けられている支援

具体的には、以下のような支援を受入機関がしなければなりません。

①事前ガイダンスの提供

②出入国する際の送迎

③住居の確保・生活に必要な契約支援

④生活オリエンテーションの実施

⑤公的手続きなどへの同行

⑥日本語学習の機会の提供

⑦相談又は苦情への対応

⑧日本人との交流促進支援

⑨転職支援

⑩定期的な面談・行政機関への通報

これらの支援は、特定技能外国人が日本で円滑に仕事ができ、かつ生活できるようにするために不可欠なものとされています。

しかしこれらの支援をするのには時間や労力がかかるため、特に規模が小さい会社等で全部を実施するのにはハードルが高いといえます。

そこでこれらの支援業務を代行してくれるのが、「登録支援機関」です。

(注)「1号特定技能外国人支援計画書」は受入機関が作成しなければなりません。しかし登録支援機関から助言を受けることは問題ありません。

登録されている機関は、6,155件 6,849件

登録支援機関は、2021年6月25日現在で、6,155件登録されています。2022年2月2日現在6,849件登録されています。

(登録支援機関の情報は、出入国在留管理庁のHPで公開されていますので、ご参照ください。)

登録支援機関になるためには、地方出入国在留管理庁への登録手続きが必要となります。

つまり登録されている登録支援機関は、地方出入国在留管理庁から「外国人の支援体制が整っており適切な支援を提供できる」と判断された機関となります。

登録支援機関になるための要件

登録を受けるためには、以下の要件を満たしていることが必要となります。

①機関自体が適切であること

法令等を遵守し、「禁錮以上の刑に処せられた者」などの欠格事由に該当していないことが必要となります。

②外国人を支援する体制があること

支援計画の全部を実施できる体制があることが必要となります(支援の一部のみの実施では認められません)

特に②については、例えば、以下のような要件を満たしているかどうかが問われます。

・支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること

・2年以内に中長期在留者(就労資格保持者)の受入れ又は管理の実績があること、もしくは業として外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること等

・外国人が十分理解できる言語で情報提供などの支援を実施することができる体制を有している

登録支援機関の運営主体は、個人から法人と様々

登録支援機関は、上述の基準を満たしていれば法人のみならず個人事業主であっても登録を受けることができます。

技能実習生の受入れ・監理を行っている監理団体が引き続き特定技能外国人の支援をするために登録支援機関になっているのが目立ちますが、その他にも派遣会社や外国人支援を行っているNPO法人、士業(弁護士や行政書士等)も多く登録されています。

技能実習制度では非営利団体しか監理団体になることができませんでしたが、特定技能制度では営利団体も登録支援機関になることができるようになったので、人材紹介会社や派遣会社がこぞって登録支援機関になっています。

登録支援機関が行う業務~「特定技能外国人支援計画」に基づいた支援の全部~

では登録支援機関は具体的にどのようなことをしてくれるのでしょうか。

登録支援機関は、先に説明した受入機関に課せられている必要な支援を「1号特定技能外国人支援計画」に従って行います。

実際に行われる支援を具体的に見てみましょう。

支援項目 内容
事前ガイダンスの提供 ・特定技能外国人に対して、特定技能雇用契約の内容、日本で行う活動の内容、入国・在留のための条件や留意事項等の説明を行います。(事前ガイダンスで情報提供しなければならない事項は決められています)

*事前ガイダンスは、対面又はテレビ電話等により、本人であることの確認を行った上で実施する必要があります。(文書の送付等のみは認められません。)

出入国する際の送迎 ・特定技能外国人が入国する際には、港又は飛行場と受入委機関事業所(もしくは外国人の住居)の間の送迎をします。

・出国する際も同様で港又は飛行場まで送迎をします。

*出国の際は、保安検査場の前まで同行し、入場することを確認する必要があります。

住居の確保・生活に必要な契約支援 ・特定技能外国人が賃借人として賃貸借契約を締結する場合には、不動産仲介業者や賃貸物件に関する情報提供を行い、必要な補助を行います。

受入機関が賃借人として契約する場合や受入機関が所有する社宅等がある場合は、特定技能外国人の合意の下で提供します。

*居室の広さや衛生面な等適切な住居を確保する必要があります。また同等の業務を行う日本人と同等の処遇を確保する必要があります。

銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約などの案内・各手続の補助を行います。

生活オリエンテーションの実施 ・特定技能外国人が入国後(又は在留資格の変更許可を受けた後)、日本における職業生活、日常生活及び社会生活を安定的にかつ円滑に行えるようにするための生活オリエンテーションを遅滞なく実施します。

・当該外国人が十分に理解することができる言語により実施します。

公的手続きなどへの同行 ・必要に応じて社会保障や税等の手続きに同行したり、書類作成の補助を行います。
日本語学習の機会の提供 日本語教室や日本語学習教材等に関する情報提供を行い、利用手続きなどの補助を行います。

*日本語が堪能であっても継続した日本語学習の機会の提供を行うことが必要とされています。

相談又へ苦情への対応 ・特定技能外国人より仕事、日常生活又は社会生活に関する相談や苦情を受けた際には、遅滞なく対応します。また相談内容等に応じ、情報提供や手続きの補助などを行います。

・当該外国人が十分に理解することができる言語で実施します。

日本人との交流促進支援 ・自治体等の地域住民との交流の場に関する情報提供や、各行事等の案内・参加手続きの補助を行います。また行事に参加する場合には、必要に応じて注意事項や実施方法などの説明を行います。
転職支援 ・受入機関の都合により雇用契約を解除する場合は、転職先を探す手伝いや、必要書類の作成などを行います
定期的な面談・行政機関への通報 3か月に1回以上の頻度で定期的に特定技能外国人との面談を行い、労働状況や生活状況などを確認します。

・実施に当たっては、直接対面で行います

・面談時に労働基準法違反等問題が発覚した場合には適切な行政機関に通報します。

具体的な支援の詳細については、「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」に記載されていますので、こちらもご参照ください。

1号特定技能外国人支援に関する運用要領

登録支援機関を活用することのメリット

では、特定技能外国人を雇用したいと考えている企業等にとって、登録支援機関を活用することのメリットは何でしょうか?

受入機関の要件となる「支援計画適正実施確保基準」が満たされる

特定技能外国人を雇用する場合、受入機関には「外国人を支援する体制があり、そして支援する計画が適切であること」つまり「支援計画適正実施確保基準」を満たしていることが求められます。

したがって自社のみで支援が難しい場合、これらの必要な

支援の全部を登録支援機関に委託することで、「支援計画適正実施確保基準」を満たしていると判断されます。

(「全部」であることがポイントです。「一部」を委託する場合には、自社で支援体制を整えておく必要があります。)

 

 

労力・時間を節約できる

前述の通り、特定技能外国人に対する支援内容は多岐にわたります。これらの支援を自社で実施するには、この業務を行う人材と時間を確保する必要があります。

特に初めて外国人を雇用しようとする場合には、この支援体制を構築するまでにも時間・労力を要します。

登録支援機関にすべてを委託すれば、必要な支援を確実に履行してくれるので、受入機関は自社の事業に専念することができます。

支援実施状況に係る届出提出が不要となる

受入機関は、定期的に①特定技能外国人の受入れ状況に係る届出、②活動状況に関する届出、③支援計画の実施状況に関する届出を出す必要があります。

しかし登録支援機関に委託した場合、③支援計画の実施状況に関する届出は、登録支援機関が提出するため受入機関による提出は不要となります。

登録支援機関をどうやって選ぶ?~対応言語、分野、エリアをベースに~

実際に登録支援機関を探したいと思ったとき、6千以上もある登録支援機関からどうやって選べばいいのでしょうか。

ポイントは、「言語」「分野」「エリア」です。

対応可能言語

特定技能外国人への支援は、当該外国人が十分理解できる言葉で実施する必要があります。特に生活オリエンテーションの提供や当該外国人からの相談・苦情対応では、当該外国人が「十分に理解できる」言語でコミュニケーションを取る必要があります。

特定技能外国人は日本語検定N4以上を持っていることが前提になっています。しかし日本語で「十分な理解」を得られるかどうかは人によって異なります。

したがって、雇用する特定技能外国人が理解できる言語で支援を提供してくれる登録支援機関を選ぶことが大切になってきます。

登録支援機関登録簿に「対応可能言語」の項目があるので、ここを参考に選ぶとよいでしょう。

対応可能分野

特定技能外国人を受け入れられる業種は14業種となっていますが、多くの登録支援機関は業種(分野)にかかわらず支援を行っています。

しかし中には分野を限定している場合があるので、事前に確認することをお勧めします。

また特定技能外国人の受入機関は、該当する業種の分野別協議会(注)に加入することが必要となりますが、業種によっては登録支援機関の加入を義務付けています。

登録支援機関の分野別協議会への加入が義務付けられている分野の場合には、この点も確認しておくとよいでしょう。

残念ながら、登録支援機関登録簿には「対応可能分野」の記載はないので、直接登録支援機関に問い合わせてみてください。

(注)分野別協議会とは、特定技能外国人を受け入れているそれぞれの業種ごとに特定技能制度の適切な運用を図るために、所管省庁・受入れ企業・業界団体・関係省庁等で構成される機関です。

対応可能エリア

登録支援機関によって対応可能エリアは異なっています。

全国対応可能という機関もありますが、「支援を行う事務所」があるエリアに限定されている場合もありますので、こちらについても事前に確認するとよいでしょう。

対応可能エリアについても、登録支援機関登録簿には記載がありません。したがって、まずは「支援を行う事務所」の所在地を目安に探すとよいです。

その他、組織の特徴なども考慮

登録支援機関の母体がどういった組織かによって特徴があります。

例えば、技能実習生の監理団体である場合は、既に多くの外国人技能実習生の受入れ・監理の実績があるため、技能実習からそのまま特定技能に移行するケースに強みがあります。

一方、外国人の雇用にあたっては様々な専門知識、特に法令に関する知識等も必要となってきます。そのため行政書士や弁護士事務所などが母体となっている登録支援機関は、外国人の雇用に必要な知識や法令遵守、在留資格に関する手続のノウハウに強みがあります。

登録支援機関に委託する「特定技能外国人の支援業務」のみならず、自社が「どのような支援を必要としているのか」という観点から登録支援機関を選ぶのも一つではないでしょうか。

登録支援機関の利用方法は?

登録支援機関を利用したい場合は、直接登録支援機関に問合せすることになります。

登録支援機関への問合せ

 まずは、出入国在留管理庁HPで公開されている「登録支援機関登録簿」を見て、地域や対応可能言語等から候補を選び、①対応可能言語、②対応可能分野、③対応可能エリア、④料金等を確認するとよいです。またこれまでの支援実績などを聞くとよいでしょう。

支援委託料の料金相場は?

外国人一人当たりの支援金額として、平均20,000円~50,000円(月額)程度で支援を行っているところが多いようです。

料金体系は各社様々です。

月額料金を安く設定している支援機関は月額料金とは別にオリエンテーションや面談の費用を徴収していることもあります。

それに対して月額料金のみを徴収している支援機関は月額料金が比較的高めに設定されている傾向があります。

上記以外にも費用がかかる場合があります。

例えば全国対応の場合、定期的な面談は直接対面で行う必要があるため、その際の支援要員の出張費用が生じます。このような費用はどちらが何を負担するのか等、詳細を確認しておくとよいでしょう。

登録支援機関 まとめ

最後に、これまで述べてきた登録支援機関についてポイントを整理しておきましょう。

 

・登録支援機関とは、受入機関の代わりに特定技能外国人の支援を実施

・登録支援機関は、出入国在留管理庁の審査を経て登録された機関

・特定技能外国人の支援体制が整っていない場合、登録支援機関に支援を全部委託することで、要件となる「支援計画定期性実施確保基準」が満たされる。

・登録支援機関を選ぶときは、まずは対応可能言語・分野・エリアから。

そして登録支援機関の母体の主たる業務によって組織の特徴を見るとよい。

・気になる登録支援機関が見つかったら、直接詳細を問い合わせる。

 

これらのポイントを押さえ、特定技能外国人の雇用を検討する場合、外国人の支援を自社で行うのか、それとも委託するのがよいのか、その判断をする上でのヒントにして頂ければと思います。

行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)

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