特定技能【自動車整備】のよくある質問

自動車の定期点検や車検は法律で定められた義務ですが、自動車整備業界では人材不足が深刻化しています。

近年の電子技術の導入により電気装置に対応できる整備士も求められているなか、少子化や若者層のクルマ離れもあり、自動車整備要員の有効求人倍率は2021年度には4.78倍にまで達しました。

そのため、人材不足を解消することを目的として作られた特定技能制度を利用し、外国人労働者を即戦力として受入れている企業も少なくありません。

ここでは、特定技能の受入れサポートの実績を持つ行政書士が、自動車整備分野のよくある質問についてわかりやすく回答します。

従事できる業務

Q:特定技能外国人が従事できる業務を教えてください。

A:特定技能外国人を受入れる前に確認しておきたいのが、どんな仕事を任せられるのか、ですね。

特定技能外国人は、「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」に従事する必要があります。

では、どのような業務が、「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」なのでしょうか。

自動車整備分野では、日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する業務などが、「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」に該当します。

ですので、特定技能外国人は、これらの業務に従事することができます。

それぞれを簡単に解説すると、次のような内容になります。

日常点検整備

  • 冷却水量
  • エンジン・オイル
  • タイヤの空気圧、ホイール、ホイールナット等の状態
  • タイヤの溝の深さ・損傷、異物の有無
  • バッテリ液量
  • ブレーキ液量
  • パーキング・ブレーキ・レバーの引きしろ
  • ウインド・ウォッシャの液量・噴射状態

走行距離や運行時の状態などから判断しておこなうもので、マイカーユーザーが自分自身でできる点検内容でもあります。

定期点検整備

  • ステアリング装置
  • ブレーキ装置
  • ホイール
  • サスペンション
  • 電気装置
  • 原動機等

運行によって部品や装置の損傷、緩み、劣化等が生じていないか、故障や事故を防ぐためにおこなう定期的な点検です。

自動車の区分によって実施時期や点検基準が異なり、日常点検よりも専門的な知識や技術が必要なので、整備工場に依頼されることが多いですね。

特定整備

  • エンジン
  • ドライブシャフト、プロペラシャフト
  • ロアアーム
  • ギアボックス
  • ブレーキドラム
  • リーフスプリング
  • 連結装置
  • 自動運行装置

定期点検の際に取り外さなければ実施できない、あるいは点検の結果により取り外しが必要となる整備・改造のことです。

特定整備に付随する業務

電子制御装置の整備や板金塗装など

 

このように、自動車整備分野で特定技能外国人が従事できる業務には、一般的な整備・点検業務のほとんどが含まれています。

Q:特定整備とはなんですか?

A:2020年4月に施行された、新たな自動車整備制度です。これまでおこなわれていた分解整備(前述の特定整備の1〜6)に電子制御装置整備(7・8)が加わりました。

電子制御装置整備とは、自動車の安全な運行に直結するものや整備要領書やスキャンツールの活用が必要な以下にあげる作業のことです。

  • 自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼすおそれのある整備・改造
  • 衝突被害軽減ブレーキ、レーンキープ機能に用いられる、前方をセンシングするためのカメラ等の取り外しや機能調整
  • 上記に係るカメラ、レーダー等が取り付けられている車体前部(バンパ、グリル)、窓ガラスの脱着

特定整備には従来の分解整備も含まれますが、自動車特定整備事業者として地方運輸局長の認証を受けるには3つのパターンがあります。

    1. 分解整備のみをおこなう
    2. 電子制御装置の整備のみをおこなう
    3. 両方をおこなう

Q:納車や洗車作業はできますか?

A:前述した「従事できる業務」には含まれていませんでしたが、同じ業務に従事する日本人が通常業務としておこなっていれば、特定技能外国人も(関連業務として)納車や洗車作業に従事することが可能です。

特定技能外国人は主に点検整備作業に従事し、これに関連する業務として「付随的に」納車や洗車をおこなうことができます。

ただし外国人が納車をおこなう場合は、日本で運転が可能な免許証を所持していなくてはいけません。

また、納車や洗車以外にも次のような作業が関連業務として想定され、付随的に従事することが可能です。

  • 整備内容の説明および関連部品の販売
  • 商品番号検索・部内発注作業
  • ナビ・ETC等の電装品の取付作業
  • 下廻り塗装作業
  • 車内清掃作業
  • 構内清掃作業
  • 部品等運搬作業
  • 設備機器等清掃作業

自動車整備の仕事に就くには

Q:特定技能外国人として自動車整備に従事するにはどうすればよいですか?

A:自動車整備分野では、試験に合格するか技能実習から移行する方法で特定技能を取得できます。

それぞれを簡単に解説しましょう。

試験に合格

以下の技能試験と日本語試験に合格すると、特定技能を取得することができます。

技能試験:「自動車整備分野特定技能1号評価試験」または「自動車整備士技能検定試験3級」
日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」

技能実習から移行

自動車整備職種・自動車整備作業で技能実習2号を良好に修了すると、上記の試験が免除になり特定技能へ移行することができます。

自動車整備職種以外で技能実習2号を良好に修了した外国人が自動車整備で特定技能を取得する場合、日本語試験は免除されますが、技能試験については別途受験して合格しなくてはいけません。

Q:特定技能や技能実習の他に、自動車整備に従事できる在留資格はありますか?

A:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格でも自動車整備に従事することができます。

「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」とします)というのは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」をおこなう在留資格です。

簡単にいうと、「学術上の知識・技術が必用とされる業務」をおこなう在留資格です。

「技人国」の在留資格を取得するには、次の3つのうちいずれかに該当する必要があります。

  • 当該技術に関連する科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと
  • 当該技術に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと
  • 10年以上の実務経験を有すること

また、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが認められないと許可されません。

実際には、日本の専門学校の自動車整備科を卒業し専門士(2級整備士)資格を取得、自動車点検整備を業務内容とする事業者との契約に基づき点検・整備・分解等の業務に従事するとともに自動車検査員としての業務に従事することが許可された事例があります。

Q:特定技能・技能実習・技人国の違いはなんですか?

A:3つの在留資格には、在留期間や取得要件などさまざまな違いがあります。

それぞれの在留資格を比較できるよう表にまとめたのでご覧ください。

在留資格 特定技能(1号) 技能実習 技人国
在留期間 最長5年 技能実習1号:1年
技能実習2号:2年
技能実習3号:2年
5年、3年、1年、3ヵ月(更新可能)
取得要件 ・技能試験と日本語試験に合格
または
・技能実習からの移行
技能実習と同種の業務に従事した経験等 ・学歴要件
・専攻科目と従事する業務の関連性
・日本人と同等額以上の報酬
家族帯同 不可 不可
技能レベル 定期点検整備、分解整備を1人で実施できる
(3級自動車整備士と同等)
1号:定期点検整備の補助作業ができる
2号:定期点検整備、分解整備を1人で実施できる
3号:定期点検整備、分解整備、一般的な装置の故障診断・整備を1人で実施できる
2級自動車整備士、1級自動車整備士、自動車車体整備士など
受入れ人数 制限なし 制限あり 制限なし

また、技能実習は対象とする自動車の種類や業務の範囲が限定されていない事業場でないと受入れできないのに対し、特定技能や技人国は自動車の種類や業務の範囲が限定された事業場でも受入れが可能です。

受入れ機関の要件

Q:特定技能外国人を受入れるための要件はありますか?

A:特定技能外国人の受入れ機関となるには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

    1. 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第78条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けた事業場であること
    2. 国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員になること
    3. 協議会に対し必要な協力をおこなうこと
    4. 国土交通省またはその委託を受けた者がおこなう調査または指導に対し、必要な協力をおこなうこと
    5. 登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合、条件を満たす登録支援機関に委託すること

1の地方運輸局長の認証については、特定技能外国人を受入れる場合に限らず、自動車整備事業を経営する事業所は必ず認証を受ける必要があります。

2の協議会は、特定技能制度の周知、適正な受入れや保護をおこなうために設置されたもので、初めて特定技能外国人を受入れた日から4ヵ月以内に加入しなくてはいけません。

自動車整備分野の場合、特定技能外国人を受入れる事業場を管轄する地方運輸局(沖縄県は沖縄総合事務局)へ加入の届出をおこないます。

5については、受入れ機関は特定技能外国人への支援を実施する必要がありますが、登録支援機関に支援計画の全部または一部を委託することができます。

ただし、支援を委託する場合には、登録支援機関が以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 自動車整備分野特定技能協議会の構成員となり必要な協力をおこなう
  • 国土交通省またはその委託を受けた者がおこなう調査または指導に対し必要な協力をおこなう
  • 自動車整備士1級もしくは2級の資格を有する者、または自動車整備士の養成施設において5年以上の指導に係る実務の経験を有する者を置くこと

Q:指定工場でないと特定技能外国人を受入れできませんか?

A:「指定工場」でなくても「認証工場」であれば特定技能外国人を受入れできます。

地方運輸局長の認証を受けた「認証工場」のうち、設備、技術、管理組織等について一定の基準に適合している工場に対して、地方運輸局長が指定自動車整備事業の指定をした工場を「指定工場」といいます。

指定工場は工場内で車検が可能なため、一般的には民間車検場、民間車検工場と呼ばれています。

指定を受けるには申請が必要ですが、指定工場でなくても特定技能外国人の受入れが可能です。

Q:自動車特定整備事業の認証を受けるときの整備要員の基準には特定技能外国人も含まれますか?

A:整備士が不足している事業場では外国人も含めてカウントしたいところですが、特定技能外国人は「整備士」としてはカウントできません。ただし、「従業員」数にはカウントできます。

自動車特定整備事業の認証には次の3つの基準があります。

  • 作業面積・・・車両整備作業場等
  • 設備・・・・・・工具・作業機械等
  • 要員・・・・・・整備主任者等の要員

この3つ目の「要員」については、次のようにそれぞれの基準があります。

  • 事業場における「従業員」数
  • 分解整備をおこなう事業場について定める自動車「整備士」有資格者の数
  • 電子制御装置整備をおこなう事業場について定める自動車「整備士」等の有資格者、講習修了者の数
  • 分解整備および電子制御装置整備をおこなう事業場について定める自動車「整備士」等の有資格者、講習修了者の数

従業員数には技能実習生、特定技能外国人、日本人従業員が含まれますが、整備士等の有資格者、講習修了者に特定技能外国人を含めることはできません。

受入れ可能な事業者

Q:バイクを専門に整備をおこなっていますが、特定技能外国人を受入れできますか?

A:バイク専門の整備工場でも受入れできます。

技能実習の場合は、対象とする自動車の種類が二輪自動車のみの自動車特定整備事業場は除くと定められていますが、特定技能の場合は異なります。

特定技能の場合は、地方運輸局長からの認証を受けた「認証工場」であれば、対象とする装置の種類が限定された事業場や自動車の種類が二輪自動車のみの事業場であっても、自動車整備分野の業務に該当するため受入れが可能です。

Q:ガソリンスタンドでも特定技能外国人を受入れできますか?

A:受入れできます。

ガソリンスタンドだけでなく、カー用品店、中古車販売店などでも自動車の点検・整備サービスをおこなっているところがありますね。

これらのお店でも地方運輸局長からの認証を受けた「認証工場」であれば、特定技能外国人を受入れることが可能です。

ただし、特定技能外国人が従事しなくてはいけない主な業務は日常点検整備、定期点検整備、特定整備ですから、ガソリンスタンドで給油や洗車ばかりに従事させることはできません。

また、自動車整備分野の特定技能外国人との雇用契約については、フルタイムの直接雇用と定められています。

点検・整備よりも洗車や部品の販売等が多いお店などでは受入れられない可能性もあるため、受入れ前に業務内容について確認することをおすすめします。

 

以上、自動車整備分野のよくある質問について回答しました。

ご参考になれば幸いです。

回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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