こんにちは。特定技能ねっと 運営行政書士の小澤です。
特定技能とは、日本国内の人手不足を解消することを目的として2019年に始まった、一定の技能を持った外国人を受入れるための制度です。
特定技能が始まる前の「就労ビザ」では、調理や接客などの業務をおこなうことは認められていませんでしたので、外食業界では「永住者」など就労制限のないビザを除くと「留学ビザ」のアルバイトや「専門的・技術分野のビザ」など、業務内容や就労時間に制限のある外国人材に頼っている状況でした。
ところが、特定技能制度が始まったことで、今までできなかった調理や接客などの業務についたり、日本人と同じ時間働くことができたり、より即戦力として外国人材を受入れることができるようになりました。
しかし、特定技能は制度が複雑でわかりにくい部分も多いため「外国人の受入れを考えているけどハードルが高い」と感じている事業者の方も多いのではないでしょうか。
ここでは、特定技能外食分野の中でも問い合わせが多い、「よくある質問」について、専門家行政書士がわかりやすく回答します。
Table of Contents
特定技能「外食業」の職種(事業所)と業務内容
Q:特定技能外食業分野では、対象になる職種とならない職種があると聞きました。外食業分野の対象となる職種を教えてください。
A:ご質問ありがとうございます。
「職種」つまり、どういう業態の事業所が対象になるかということですね。
ご指摘の通り、特定技能外食業分野では、すべての業態が対象となるわけではありません。
では、外食業分野で受入れの対象になるのはどんな業態でしょうか。
一言で言うと、「飲食サービス業」をおこなっている事業所が、外食業分野の受入れ対象になります。
「飲食サービス業」は、主に以下の4種類にわけられます。
①飲食サービス業
②持ち帰り飲食サービス業
③配達飲食サービス業
④ケータリング・給食事業等
わかりやすくまとめると、次の表のようになります。
①飲食サービス業 | レストラン
喫茶店 ファーストフード店 居酒屋など |
お客さんの注文に応じて調理した飲食料品などが、その場で食べられるお店
|
---|---|---|
②持ち帰り飲食サービス業 | テイクアウト専門店 | お客さんの注文に応じて調理した料理を持ち帰る、飲食スペースのないお店 |
③配達飲食サービス業 | 仕出し料理
弁当屋 宅配専門店 |
お客さんの注文に応じて調理した料理や飲物を、お客さんが指定した場所に届ける配達サービス |
④ケータリング・給食事業等 | ケータリング
給食事業 |
お客さんが指定する場所で調理した料理の提供をするサービス |
Q:お弁当屋は外食業の受入れ対象ですか?
A:お弁当屋さんの場合は、業態によって、外食業以外の分野が対象になる場合があります。
まず、お弁当屋・お惣菜屋・持ち帰りすし屋など、お客さんの注文に応じてお弁当などを調理・販売している場合は受入れ対象です。
ただし、次のような場合は受入対象外となります。
- お弁当を製造し、小売業者や卸事業者向けに納品する場合、その売上が全体の1/2を超えていれば飲食料品製造業に該当
- できあがったお弁当を仕入れて店舗で販売している場合は小売業に該当
簡単にいうと、お客さん(消費者)の注文に応じてその場で製造し販売する、あるいは配達する「持ち帰り飲食や配達飲食サービス」が外食業の対象ということですね。
Q:特定技能外国人は、外食業でどのような業務につくことができますか?
A:飲食物調理・接客・店舗管理など、外食業全般の業務をメインにおこなうことができます。
特定技能外国人ができる外食業全般の業務はとても幅広いため、ここでは一部をご紹介します。
飲食物調理 | 食材の仕込み、加熱・非加熱調理、調味、盛り付け、調整など |
---|---|
接客 | 席への案内、注文受け、配膳、下膳、会計、テーブルセッティングなど |
店舗管理 | 衛生管理、従業員のシフト管理、発注、会計事務管理、メニュー開発、マニュアルの作成など |
例えば「今週はホールの人手が足りないから接客を、来週は〇〇さんがお休みだから厨房で仕込みを」というように、店舗の人員の状況に応じてさまざまな仕事につくこともできますし、一定期間であれば調理だけなど、特定の担当として働くことも可能です。
また、同じ職場で働く日本人が通常おこなっている関連業務は、付随的に行うだけなら問題はありません。
関連業務には以下の2つが当てはまりますが、この業務をメインとして働くことはできません。
- 店舗で原材料として使用する農水産物の生産
- 店舗で調理品以外の物品を販売
Q:ホテルのレストラン業務は対象ですか?
A:レストラン業務であれば、受入れ対象です。
正確には、旅館やホテル直営のレストランサービスの場合は、外食業でも宿泊業でも受入れ対象になります。
ただし、それぞれの分野でおこなう業務に決まりや制限があるので、外国人にやってもらいたい仕事に応じて受入れ分野を考える必要があります。
- 外食業で受入れる場合:外食業全般の業務をおこなうことが前提
- 宿泊業分野で受入れる場合:宿泊業分野において求められる業務を幅広くおこなう必要があるため、レストラン業務だけに従事させることはできない
ところで、飲食料品製造業分野では、対象となるか否かを判断する際に「全体の売上に占めるその業務の売上が1/2を超えていること」という条件が付くことがありますが、外食業の場合はそのような条件はありません。
また、ホテルとホテルのレストランで経営する事業者が異なる場合には、レストランのメイン業務が飲食店・持ち帰り飲食サービス業・配達飲食サービス業に該当していれば、外食業の受入れ対象となります。
Q:給食センターは外食業と飲食料品製造業、どちらの対象ですか?
A:給食センターの場合も、状況によって異なるため、判断に迷う方が多いのではないでしょうか。
病院・福祉施設・学校・社員食堂などの給食サービスは、外食業の対象になります。
ですが、接客・店舗管理・給食事業管理をおこなわず、調理に特化した調理センター・給食センターは飲食物製造分野でも受入れができます。
ただし、その場合は盛り付け・接客・店舗管理業務をおこなうことはできません。
わかりやすく解説すると、
- 「調理する場所」と「提供する場所」が同じところにあると外食業
- 「調理する場所」と「提供する場所」が違うところにあると飲食料品製造業
となることが多いです。
また似たような例で、レストラン事業のセントラルキッチンの場合は飲食店とは別の場所にあり飲食サービス業には当たらないため、受入れ対象外になります。
ただし、飲食店舗で働く日本人が関連業務として一時的にセントラルキッチンで働いている場合は、外食業の外国人も関連業務としてセントラルキッチンで働くことが可能です。
少しややこしいですね。
外食業で受入れた外国人でも、関連業務としてなら一時的に飲食料品製造業であるセントラルキッチンの仕事をおこなっても問題ないということですが、理解していただけたでしょうか。
Q:飲食物を調理・提供していても、特定技能で受入れできない業種はありますか?
A:風俗営業法第2条第1項に規定する「風俗営業」及び同条第5項に規定する「性風俗関連特殊営業」を営む営業所に特定技能外国人を就労させることはできません。
また、風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」をおこなわせることもできません。
総務省 e-GOV 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」
つまり、キャバクラ・スナック・ホストクラブなど、風俗営業の許可が必要な店舗に就労すること、歓楽的雰囲気を醸し出す方法でお客さんをもてなすことは禁止されています。
業務内容が調理・接客・店舗管理であったとしても、このような店舗に就労することはできません。
Q:同じ会社の別店舗で働くことはできますか?
A:複数の店舗を経営する企業様の場合、人手が足りなくなった店舗に外国人を配置転換したいと考えることもあると思います。
特定技能外国人を雇用する場合、出入国管理局に活動内容や就労場所を届け出る必要がありますので、就労場所が変わった場合ことを届出ていれば別店舗で働くことができます。
Q:保健所の営業許可証の名義が自社ではない場合でも、受入れできますか。
A:会社と保健所の営業許可証の名義が異なる場合は、受入れがスムーズにいかないこともあります。
まず、外食業で特定技能ビザを申請する場合、保健所の営業許可証の写しの提出が必要です。
受入れ事業者と営業許可証の名義が異なる場合、名義貸しや外食業で認められていない派遣雇用を疑われることもあります。
一方で、営業許可を取得している施設オーナーと、テナント契約をするという場合もあるため、状況に応じて判断するための追加書類が必要になる場合があります。
受入れできるか心配がある場合は、農林水産省に問い合わせてるみるのがおすすめです。
特定技能外国人の基準と技能試験
Q:外国人が、外食業で特定技能ビザを取得するにはどうしたらいいですか?
A:特定技能の在留資格を取得するには、どの分野でも共通して「技能実習からの移行」か「技能試験・日本語能力試験に合格する」の2つの方法があります。
外食業についての詳細は以下のとおりです。
- 技能実習からの移行
医療・福祉施設給食製造の技能実習2号を良好に修了すると、無試験で外食業の特定技能1号に移行することができる
- 技能試験・日本語能力試験に合格
外食業特定技能1号技能測定試験と日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要がある
技能実習からの移行の場合ですが、外食業の対象となる医療・福祉施設給食製造は2018年11月に技能実習に追加されたため、2号修了者数はまだ多くはありません。
そのため現状では、アルバイトの留学生が卒業後に試験を受けて特定技能に変更し、そのまま同じ職場で働くケースが多いのです。
Q:外食業の技能試験の内容を教えてください。
A:外食業特定技能1号技能測定試験は、一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しています。
試験科目は学科試験と実技試験の2科目、80分のペーパーテスト方式です。
項目 | 主な内容 | 【学科】問題数/配点 | 【実技】問題数/配点 |
---|---|---|---|
衛生管理 | ・一般衛生管理に関する知識
・HACCPに関する知識 ・食中毒に関する知識など |
10問/40点満点 | ・判断試験3問
・計画立案2問 合計5問/40点満点 |
飲食物調理 | ・調理に関する知識
・食材に関する知識 ・調理機器に関する知識など |
10問/30点満点 | ・判断試験3問
・計画立案2問 合計5問/30点満点 |
接客全般 | ・接客サービスに関する知識
・食の多様化に関する知識 ・クレーム対応に関する知識など |
10問/30点満点 | ・判断試験3問
・計画立案2問 合計5問/30点満点 |
合計 | 30問/100点 | 15問/100点 |
学科は3項目「衛生管理・飲食物調理・接客全般」の知識と仕事で必要な日本語能力のテスト、実技は学科と同じ3つの項目ごのに判断・計画立案の問題が出ます。
判断・計画とは、具体的にいうと次のような試験です。
- 判断試験:図やイラストなどを見て、正しい行動を判断する
- 計画立案:計算式を使って、作業の計画を立てる
総得点の65%以上で合格ですが、調理と接客で配点割合が変わる、3タイプの配点方式から選んで受験することができるので、得意分野に合わせて選択するとよいでしょう。
2022年度の技能試験は、国外ではインドネシア・フィリピン・スリランカ・カンボジア・タイ・ネパール・ミャンマーの7カ国で、毎月おこなわれました。
国内では年に3回実施されており、2023年1月に13都道府県でおこなわれた試験の合格率は61.7%です。
技能試験のテキストは一般社団法人日本フードサービス協会のホームページに、日本語・英語のほか6ヵ国語で掲載されています。
受入機関に求められること
Q:外食業で特定技能外国人を受入れるための条件はありますか?
A:とても重要なご質問ですね。
特定技能外国人を受入れるには、企業側も定められた基準を満たす必要があります。
はじめにお話しした対象業種であること、風営法で規定する接待飲食等営業を営む営業所に就労させない・接待をさせないこと、の他に以下の3つの基準を満たす必要があります。
雇用契約の基準を満たす
報酬や労働時間など、特定技能外国人と適切な雇用契約を結ばなくてはいけません。
雇用形態については、外食業では派遣形態は認められていないため、直接雇用する必要があります。
労働時間や賃金については、日本人を雇用する場合と同じ水準でなければいけません。
農林水産省が定める基準を満たす
- 農林水産省とその他関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」の構成員になること
- 協議会に対し、必要な協力をおこなうこと
- 農林水産省又はその委託を受けた者が行う調査等に対し、 必要な協力をおこなうこと
- 外国人支援計画を委託する場合は、上記3項目を満たす登録支援機関に委託すること
外国人を支援する体制があること
外国人が日本で安定して就労・生活できるように、支援をおこなわなくてはいけません。
外国人へおこなう支援については10項目が定められていますが、各項目でどのように支援をしていくのか計画書を作成して提出する必要があります。
計画書の作成や実際に支援を行うことが難しい場合は、上記の農林水産省が定めた基準を満たす登録支援機関に委託することが可能です。
具体的な支援内容や支援委託については、「特定技能外国人の支援(支援委託)」のページで解説していますが、当事務所では支援のサポートや委託もお受けしておりますので、一度お問い合わせください。
Q:食品産業特定技能協議会にはいつ加入すればいいですか?
A:協議会は、外国人を受入れてから4ヵ月以内に農林水産省のホームページから加入申請します。
外国人を受入れるために、事前に加入しておく必要はありませんが、在留カードを受け取った日から4ヵ月以内に加入しないと、特定技能外国人の受け入れができなくなるので注意してください。
受入れ事業者と、支援を委託する場合には登録支援機関にも加入義務があります。
2人目以降の受入れの際に、あらためて加入申請したり届け出たりする必要はありません。
また、当面の間、入会費や年会費は不要です。
Q:個人事業主でも受け入れできますか?
A:もちろん、先ほどお伝えした基準を満たしていれば受入れ可能です。
ただし、法人と個人事業主では、出入国在留管理庁に提出する書類が異なるので、間違えないよう注意が必要です。
新型コロナウイルスによってダメージを受けた外食業ですが、現在はコロナ前のように売上も回復傾向にあります。
もともと人材が不足している外食業ですから、一時的に減った求人が完全に復活する前に人材確保の一手を打つチャンスかもしれませんね。
回答者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)