登録支援機関として受入れ・協議連絡会に加入が必要な分野

特定技能所属機関は外国人を受け入れると、協議会に加入し必要な協力をおこなわなくてはいけません。

では、特定技能所属機関は外国人に対しておこなう支援を登録支援機関に委託することができますが、その場合は登録支援機関も協議会に加入しなくてはいけないのでしょうか。

ここでは、登録支援機関の協議会への加入義務、加入のタイミングや費用について、特定技能の専門家である行政書士がわかりやすく解説します。

登録支援機関も分野別の協議会に加入義務がある?

特定技能の12分野すべてに分野別の協議会が設置されており、受入れ機関は必ず加入する義務があります。

では、受入れ機関から支援の委託を受けている登録支援機関も協議会に加入義務があるのかというと、それは分野によって異なります。

では、どの分野で登録支援機関にも加入義務があるのかお伝えする前に、協議会とはどのような組織で、加入しなかった場合はどうなるのかを解説します。

協議会とは?加入しないとどうなる?

協議会とは、特定技能制度を適切に運用するために特定技能の分野ごとに所管省庁によって設置されたものです。

主な活動内容は制度の周知や法令遵守の啓発、人手不足状況の把握や地域差の調整で、業界団体や関係省庁、受入れ機関、登録支援機関などで組織されています。

受入れ機関は特定技能外国人を初めて受入れたら協議会へ加入し、構成員として協議会の求めに応じて指導や調査に協力しなくてはいけません。

協議会へ加入しなかったり、構成員としての要件を満たさず加入を拒否されたりした場合は、特定技能外国人の受入れができなくなります。

これは、すでに受入れている外国人の雇用を継続することも、新たな外国人を受入れることもできなくなるということです。

登録支援機関が、加入義務のある分野の受入れ機関から委託を受けているのに加入しなかった場合、委託した受入れ機関で特定技能外国人の受入れができなくなってしまいます。

登録支援機関にも協議会への加入義務がある分野

登録支援機関も協議会へ加入しなくてはいけない分野は、下の表の通りです。

登録支援機関の加入義務は、

  • 加入が必要=〇
  • 加入は不要=×
  • 加入は任意=△

で表しています。

所管省庁 分野 登録支援機関の加入義務
厚生労働省 介護 ×
ビルクリーニング ×
経済産業省 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
国土交通省 建設
造船・舶用工業
自動車整備
航空
宿泊
農林水産省 農業 ×
漁業 ×
飲食料品製造業
外食業

登録支援機関も協議会へ加入しなくてはいけないのは以下の6分野です。

  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

登録支援機関には協議会への加入義務がない分野

登録支援機関が協議会へ加入する必要がない分野は以下の4つです。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 農業
  • 漁業

製造業・建設分野については登録支援機関も加入することができますが、あくまで任意です。

また農業・漁業分野については、登録支援機関には加入義務がなくても協議会に対して必要な協力をおこなわなくてはいけません。(在留資格申請の際、協議会に対して必要な協力をおこなうことを誓約する書類を提出します)

協議会へ加入するタイミングと費用

協議会に加入するタイミングは製造業・建設分野を除き、初めて特定技能外国人を受入れた日から4カ月以内です。

造船・舶用工業分野については初めての受入れから4カ月以内に加入すれば問題ありませんが、在留資格申請前に協議会への加入申請をおこなうことができます。

また費用については、建設・漁業以外の分野では、当面の間(2023年度)は入会金や年会費等は不要としています。

在留資格申請前に協議会加入が必要な分野

これから解説する分野では、在留資格申請前に協議会に加入する必要があります。

在留資格申請時に「協議会の構成員であることの証明書」が必要な分野もあるので、しっかり確認しておきましょう。

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

特定技能制度開始当初は、初めて受入れた日から4カ月以内に協議会の構成員となることとされていましたが、2021年3月に加入手続きが一部改正され、在留資格申請の前に構成員とならなければいけなくなりました。

外国人受入れ後に協議会の入会手続きをする際、在留資格申請時に申請した業種と事業内容の適合性が確認できずに、協議会の入会要件を満たすことができない事例が生じたためです。

現在は在留資格申請時に「協議会の構成員であることの証明書」として、構成員名簿を提出する必要があります。(証明書を発行していないため)

建設

建設分野は12分野のなかでも特殊で、協議会の構成員である特定技能外国人受入事業実施法人の「一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)」に、間接的または直接的に加入する必要があります。

また、建設分野で特定技能外国人を受入れるには、国土交通大臣による「建設特定技能受入計画」の認定を受けなくてはいけません。

JACへの加入は受入計画の認定基準の一つとなっており、認定を受けて交付された「建設特定技能受入計画の認定証」の写しは在留資格申請時に提出する書類でもあります。

つまり、JACに加入して受入計画の認定を受けないと、在留資格申請ができないのです。

造船・舶用工業

「在留資格申請前に協議会に加入する必要がある」というわけではないのですが、「造船・舶用工業分野」は他と少し違う特徴があります。

造船・舶用工業分野では、受入れ機関も委託を受けた登録支援機関も、受入れ機関が初めて特定技能外国人を受入れた日から4カ月以内に協議会に加入すれば問題ありません。

この点は、他の多くの分野と同じです。

しかし造船・舶用工業分野では、在留資格申請前に受入機関が「造船・舶用工業分野に係る事業を営む者であることの確認」を受けたうえで、「造船・舶用工業事業者の確認通知書」を在留資格申請時に提出する必要があります。

「造船・舶用工業事業者の確認申請書」と「協議会の加入申請書(造船・舶用工業事業者用)」は、どちらも国土交通省船舶産業課に提出する書類なので同時に申請することが可能です。

ですから受入れ機関は、在留資格申請前に「事業者の確認申請」と「協議会の加入申請」を同時におこなうことができます。

もちろん、事業者の確認申請や在留資格申請後に(受入れから4カ月以内に)、別途、協議会の加入申請をおこなうこともできます。

つまり、協議会への加入手続きを、在留資格申請前にやるか、在留資格申請後にやるか、好きなほうを選べるということですね。

もっともこれは、「事業者の確認申請」がまだ済んでおらず、これからおこなう場合の話です。

すでに「事業者の確認申請」が済んでいる場合は、通常通り、在留資格申請の後に、協議会への加入申請をおこなえばいいでしょう。

以上は受入れ機関の場合ですが、登録支援機関の場合は、受入れ機関が「造船・舶用工業事業者の確認通知書」の交付を受けてからでないと協議会の加入申請ができません。

協議会加入に費用がかかる分野

ほとんどの分野では、協議会に加入するための入会金や年会費は、当面の間は不要です。(2023年11月現在)

しかし、中には協議会加入に費用がかかる分野もあります。それが建設分野と漁業分野です。

建設分野では例外なく費用がかかり、漁業分野では所属する団体によって費用がかかることがあります。

建設

建設分野は、協議会の構成員であるJACに加入するにあたり、年会費と1号特定技能外国人を受入れた場合の受入負担金がかかります。

受入負担金は1人あたり1カ月12,500〜20,000円ですが、年会費は間接的に加入するか直接的に加入するかで異なります。

JACの正会員団体(51の建設業者団体)の会員になる(間接的に加入)場合、加入する団体が定める会費の負担が必要です。

JACの賛助会員になる(直接的に加入)場合、受入れ機関は24万円の年会費が必要です。

登録支援機関が加入する場合は契約建設企業の数により、3万〜24万円の年会費がかかります。

漁業

漁業分野で特定技能外国人を受入れる場合、営む漁業や養殖業について必要な指導・助言がおこなえる2号構成員である団体(またはその傘下団体)に所属して1号構成員となる必要があります。

2号構成員は漁業や養殖業の種類によってさまざまな団体があり、団体によって費用を徴収している場合があります。

協議会の加入方法

協議会への加入申請の方法を、分野ごとに見ていきましょう。

厚生労働省所管の分野の加入手続き

厚生労働省所管の「介護」と「ビルクリーニング」分野の加入手続きを解説します。

介護分野における特定技能協議会

厚生労働省ホームページの申請システムからオンラインで加入申請をおこないます。

  1. アカウント発行申請
    入会申請のためのアカウントを取得します。
  2. 入会申請登録
    必要情報を入力、書類をアップロードして手続き完了です。
  3. 入会審査(1〜2週間)
  4. 会員登録の完了
    法人担当者との連絡(電話・メール)が確認された場合に協議会の加入が認められます。
    入会証明書をダンロードします。

ビルクリーニング分野特定技能協議会

厚生労働省ホームページの加入申請ページからオンラインで申請をおこないます。

  1. 申請
    申請ページで必要事項を入力して申請します。
  2. 必要書類を提出
    厚生労働省からのメールに従い、オンラインで書類を提出します。
  3. 構成員資格証明書を送付
    厚生労働省で手続きが完了すると、メールで証明書が送付されます。

※登録支援機関の代行による手続きは認められていません。

経済産業省所管の分野の加入手続き

「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の加入手続きを解説します。

登録支援機関の加入は任意です。

製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会

経済産業省ホームページ「特定技能外国人制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)のポータルサイト」からオンラインで入会手続きをおこないます。

【特定技能所属機関の場合
  1. 入会申請システムの「受入れ機関(企業)」から、特定技能外国人が従事する予定の日本標準産業分類の番号(細分類)を確認
  2. 該当するすべての産業の日本標準産業分類(細分類)の証明書を準備
  3. 申込みページへ進み、必要事項を入力して申請
  4. 入会となれば、経済産業省ホームページの会員名簿に掲載

初めての受入れ時から、在留資格申請の前に加入する必要があります。

※協議・連絡会の構成員であることの証明書の発行はおこなっていないため、在留資格申請時は会員名簿を利用します。

登録支援機関の場合

入会申請システムの「関係機関」から、必要事項を入力して申請、入会となれば会員名簿に掲載されます。

申請から名簿掲載まで通常2カ月程度かかりますが、申請が混み合っていてさらに時間がかかることもあるようです。

国土交通省所管の分野の加入手続き

「建設」「造船・舶用工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」の5分野について、加入手続きを解説します。

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)

登録支援機関の加入は任意です。

【賛助会員(JACに直接加入)の場合】
  1. 資料をダウンロードし、入会申請
    JACホームページからダウンロードした資料を読み、エントリーフォームから入会申込みをします。
  2. 必要書類を送付
    ダウンロード資料に同封の書類に必要事項を記入し、送付します。
  3. 入会審査・承認
    毎月25日までの受付分が翌月第2営業日に承認されます。
  4. 会員証発行
    案内メールに従って、会員証発行手続きを完了させます。

※登録支援機関や行政書士が代理で申請することはできません。

【正会員団体に加入する場合】

JACホームページに掲載の正会員団体一覧から加入を希望する団体へ問い合わせ、加入手続きをおこないます。

 

JACの会員(正会員団体の会員または賛助会員)でないと受入計画の認定申請ができません。

在留資格申請の際に受入計画の認定証の写しを提出しますが、認定まで1カ月半〜2カ月程度かかるため、JACへの加入手続きは早めにおこなうことをおすすめします。

造船・舶用工業分野に係る特定技能外国人に関する協議会

国土交通省海事局船舶産業課宛に郵送で申請します。

  1. 国土交通省のホームページから加入申請書をダウンロード
  2. 必要事項を記入し、郵送
  3. 造船・舶用工業事業者であることが確認されると、加入通知書を交付

※「造船・舶用工業事業者の確認申請書」と同時に申請できます。

登録支援機関は、受入れ機関に事業者の確認通知書が交付されてから申請します。

自動車整備分野特定技能協議会

特定技能外国人を受入れる事業場を管轄する地方運輸局に届け出ます。

受入れ機関も登録支援機関も、入会の届出方法は同じです。

  1. 国土交通省のホームページから「協議会入会届出書 兼 構成員資格証明書(特定技能所属機関または登録支援機関)」をダウンロードし、必要事項を記入
  2. 持参、または郵送で届出
  3. 構成員資格証明書をその場で交付、または郵送

航空分野特定技能協議会

国土交通省航空局に電子メールで届け出ます。

受入れ機関も登録支援機関も、加入の方法は同じです。

  1. 国土交通省のホームページから「航空分野特定技能協議会加入届出書 兼 構成員資格証明書」をダウンロードし、必要事項を入力
  2. 電子メール(困難な場合は郵送)で届出
  3. 届出が受理されると、構成員資格証明書を発行

宿泊分野特定技能協議会

従前の郵送での申請に加え、2023年5月よりオンライン申請が可能になりました。

受入れ機関も登録支援機関も、入会の方法は同じです。

【郵送の場合】
  1. 国土交通省観光庁ホームページから「宿泊分野特定技能協議会入会届出書 兼 構成員資格証明書(特定技能所属機関:入会、または登録支援機関:入会)」をダウンロードし、必要事項を記入
  2. 観光庁観光産業課宛に郵送
【オンラインの場合】

観光庁「宿泊技能人材ポータル」の申込フォーム「特定技能所属機関の方へ」または「登録支援機関の方へ」から、必要事項を入力し申請。

 

入会申請後、入会通知書が観光庁より送付されます。

農林水産省所管の分野の加入手続き

「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」の加入手続きを解説します。

農業特定技能協議会

農林水産省のホームページからオンライン申請をおこないます。

  1. 入会申込みフォーム(個人用または法人用)に必要事項を入力し申請
  2. メールで加入通知書を送付
    通常、申請日から1〜2週間程度かかります。

協議会に加入すると、同時に所在の都道府県を管轄する地域協議会の構成員にもなります。

漁業特定技能協議会

所属する2号構成員に申請書を提出します。

  1. 農林水産省水産庁のホームページから「漁業特定技能協議会1号構成員加入申請書」「漁業分野特定技能1号構成員申請内容」をダウンロードし、必要事項を記入
  2. 添付書類を添えて2号構成員に提出
  3. 構成員であることの要件を満たすことが確認されれば、資格証明書を交付

※申請書類の提出方法は2号構成員によって異なるため、直接団体に問い合わせる必要があります。

食品産業特定技能協議会

「飲食料品製造業」と「外食業」分野共通の協議会です。

農林水産省ホームページからオンライン申請をおこないます。

  1. 「特定技能所属機関」または「登録支援機関」の加入申請フォームに必要事項を入力して申請
  2. 事務局からメールが届いたら「特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の写しをPDFで添付し返信
  3. 審査・承認後、加入証をメールで送付
    審査には通常、2週間〜1カ月程度かかります。

登録支援機関による加入申請の入力代行は容認されています。

 

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業は1人目から、その他の分野(建設以外)は2人目(2回目)の在留資格申請から「協議会の構成員であることの証明書」の提出が必要です。

交付された証明書は無くさないように保管しましょう。

(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業は名簿をダウンロードして利用)

2人目以降の受入れの際に手続きが必要な分野

協議会への加入手続きは、通常は初めて特定技能外国人を受入れるときにのみおこなうものですが、2人目(2回目)の受入れ時にも手続きが必要な分野があります。(前から移動してきた)

それは「介護」分野、「造船・舶用工業」分野、「飲食料品製造業/外食業」分野です。

介護

介護分野で2回目以降を受入れる場合(すでに協議会入会証明書を保有している場合)、受入れた日から4カ月以内に特定技能外国人の追加手続きが必要です。

追加の手続きも厚生労働省ホームページからオンラインでおこないます。

  1. 申請システムから追加する外国人の情報を入力し、書類をアップロード
  2. 審査後、変更審査が完了したことをメールで通知

造船・舶用工業

造船・舶用工業分野で協議会に加入した受入れ機関は、毎月受入れ状況報告をおこなわなくてはいけません。

月末時点で受入れている特定技能外国人の情報を「造船・舶用工業事業者特定技能外国人受入れ状況報告・別紙」に入力してメールに添付し、翌月15日までに船舶産業課に提出します。

前月から変更がない場合でも、報告をおこなう必要があります。

飲食料品製造業/外食業

すでに食品産業特定技能協議会に加入している受入れ機関や登録支援機関で受入れ分野を追加する場合は、協議会に連絡しなくてはいけません。

飲食料品製造業で受入れていて新たに外食業でも受入れることになった場合や、外食業で受入れていて新たに飲食料品製造業でも受入れることになった場合、事務局のデータを更新する必要があるため協議会へメールで連絡します。

まとめ

登録支援機関が協議会に加入しなくてはいけない分野と加入の方法、その他注意点を解説しました。

登録支援機関も協議会に加入しなくてはいけないのは、以下の6分野です。

  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

受入れ機関が、在留資格申請の前に協議会に加入しなくてはいけないのは以下の2分野です。

  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設

造船・舶用工業分野は「造船・舶用工業事業者の確認申請書」と協議会の加入申請が同時にできるので、その場合は在留資格申請の前に加入することができます。

登録支援機関が加入申請をおこなうタイミングは、特定技能所属機関で外国人を受入れた日から4カ月以内です。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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