建設分野で特定技能外国人を受入れるためには、入管へのビザ申請の他に、国土交通省への手続きなど、沢山の手続きが必要です。
その中の一つに、「建設キャリアアップシステム」の事業者登録と技能者登録があります。
建設キャリアアップシステム登録申請の手続き方法や費用など、建設分野で特定技能外国人受入れを検討されている事業者様向けに、特定技能を専門とする行政書士がわかりやすく解説します。
特定技能に建設キャリアアップシステム登録が必要な理由
建設キャリアアップシステムが必要な理由を理解するために、まずは特定技能建設分野に必要な主な手続きについて簡単に説明します。
- 建設特定技能受入計画オンライン申請:国交省に対して受入れる特定技能外国人に係る登録申請(受入計画等を審査後、認定証が発行されます。認定証は在留資格申請の必要書類となります。)
- 建設業許可を受ける(許可を受けていない場合)
- 建設技能人材機構(JAC)の会員となる
- 入管への在留資格変更許可申請(または在留資格認定証明書)
ざっとこんな感じです。
上記の手続き中に、「建設キャリアアップシステム」は入っていませんね。では、「建設キャリアアップシステム」の登録申請はしなくても特定技能外国人は受入れできるのでははないでしょうか?
だとよいのですが、ちゃんと入っているんです。
以下は、国交省オンライン申請に必要な書類の一部です。
- 履歴事項全部証明書(会社謄本)
- 建設業許可証
- ハローワークの求人票
- 建設キャリアアップカードの写し
「建設キャリアアップシステムの写し」とあります。国交省オンライン申請で発行される認定証は、建設キャリアアップシステムを登録申請した結果、発行されるものです。
つまり、認定証を得るためには建設キャリアアップシステムの登録申請は必須ということです。
そもそも建設キャリアアップシステムとは?
順番が前後してしまいましたが、建設キャリアアップシステムについても簡単に押さえておきましょう。
そもそも「建設キャリアアップシステム」とは、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、技能や経験が客観的に評価されることで、技能者の適切な処遇につなげるための仕組みです。
つまり、技能者の能力や経験を「見える化」し、技能者が適正に評価されることにより、結果、処遇改善につながる、ということですね。
「建設キャリアアップシステム」の目的は、技能者の処遇改善です。今まで技能者個々の能力を統一的に評価する仕組みがなく、処遇向上につながっていかないという問題がありました。これを解決するために「建設キャリアアップシステム」が導入されました。
ですが、実は建設事業者さんの建設キャリアアップシステムへの登録は任意なんです。任意だからなのか、国の想定よりもはるかに低い普及率のようです。運用に苦戦していますね。
このように任意であるのに、特定技能受入には建設キャリアアップシステムへの登録は必須です。処遇向上を目的とするシステムが特定技能外国人の報酬の確保(日本人と同等以上の報酬)へと結果つながります。国の普及させたいという思惑が見えてきますよね。
本来任意なのに、納得いかないと感じられる方もいるかもしれません。ですが、特定技能受入には必要なので、登録申請するしかありません。
建設キャリアアップシステムにかかる費用
ここまで「建設キャリアアップシステム」が必要な理由や目的などについてお話してきましたが、一番気になるのが費用面ではないでしょうか?
簡単に説明しますと、建設キャリアアップシステムの費用には登録料とID利用料があります。登録料は2種類あり、事業者登録料と技能者登録料です。ID利用料というのは、管理者ID利用料のことです。
また、それぞれの支払い時期は、事業者登録料と技能者登録料は登録申請した後、比較的すぐにです。登録申請すると運営の方からメールが届き、支払い手続きをします。注意が必要なのは、技能者登録料の方は支払った後に、申込内容の審査に入ることです。登録し、すみやかに支払い手続きをします。
次に、管理者ID利用料の支払い時期ですが、当初登録月の翌々月10日です(例:4月登録の場合は6月10日が期限)。
登録料の方は登録する時に1度だけかかる費用ですが、管理者ID利用料は年1回、毎年かかる費用です。
以上の費用について、わかりやすく整理したのが以下の表です。
事業者登録料は資本金により、技能者登録料は申請方法により変わります。利用者ID利用料は、1IDあたりの費用です。
【事業者登録料】
資本金 | 登録料(税込) |
一人親方 | 0円 |
500万円未満(個人事業主含む) | 6,000円 |
500万円以上1,000万円未満 | 12,000円 |
1,000万円以上2,000万円未満 | 24,000円 |
2,000万円以上5,000万円未満 | 48,800円 |
5,000万円以上1億円未満 | 60,000円 |
1億円以上3億円未満 | 120,000円 |
*一部抜粋
以上が事業者登録料です。資本金によってかなり金額が違いますね。次に技能者登録料です。
【技能者登録料】
申請方法 | 登録料(税込) |
インターネット | 簡略型:2,500円
詳細型:4,900円 |
認定登録機関 | 詳細型:4,900円 |
技能者登録料は、簡略型か詳細型によっても違います。なお、簡略型で登録しても、あとから詳細型への変更も可能です。費用は変わりません(差額を支払うことになります)。
【管理者ID利用料】
1IDあたり | 11,400円(税込)/年 |
まとめると、資本金500万円以上1,000万円未満の事業者さんの場合、詳細型登録をすると、初年度は全部で28,300円かかります。費用の中には毎年かかるものもありますので、継続して費用がかかることになります。
建設キャリアアップシステムの登録手続き
では、ここからは実際にどのように登録していくのか、一緒に登録するつもりで見ていきましょう。
申請方法は、窓口(認定登録機関)申請とインターネット申請の2つの方法があります。さらにインターネット申請には、外国人受入れ事業者(所属事業者)自らが申請する場合のほか、事前に事業者登録をした事業者に、インターネット申請を依頼する方法もあります。
ここでは、インターネット申請の所属事業者自らが申請する場合について紹介します。
はじめに簡単な流れを。
【事業者登録】
【技能者登録】
このように登録には、事業者登録と技能者登録があります。登録の順番は決まっていませんが、所属事業者が技能者登録を代行して申請する場合、所属事業者名と事業者IDの入力が必要となりますので、事業者登録を先にした方がスムーズに登録できます。
なお、技能者登録は技能者本人が申請するものですが、入力が難しい箇所もあるため、所属事業者が代行申請することを建設キャリアアップシステム本部では推奨しています。
事業者登録
それでは、事業者登録から見ていきましょう。インターネットで事業者登録の申請をする際のポイントもお伝えします。
ポイント1
会社の中で登録責任者を決めます。支払いに関するメールや事業者IDの通知メールが登録責任者あてに届きます。メールの受信ができるようにしておきましょう。
ポイント2
申請内容を証明するための「事業者確認書類」を集めます。準備する書類は次の通りです。
□事業者証明書類
[建設業許可がある場合]・「建設業許可通知書」または「建設業許可証明書」
[建設業許可がない場合]・(法人)「事業税の確定申告書」または「納税通知書+会社謄本」
・(個人・一人親方)「納税証明書」か「所得税の確定申告書」か「個人事業の開始届」
□社会保険等の加入証明書類
・健康保健(社保もしくは国保)
・年金保険(厚生年金もしくは国民基礎年金)
・雇用保険
・建退共(該当あれば)
・中退共(該当あれば)
・労災保険特別加入(個人事業主、一人親方の方で該当あれば)
ポイント3
集めた「事業者確認書類」をJPEG(JPGファイル)に変換します。カメラで撮影したり、スキャニングした書類データを複合機やパソコンなどでJPEGに変換します。このとき、ファイル名を分かりやすくしておくことも重要です。
ここまで3つのポイントをお伝えしましたが、これらのポイントを押さえることで、事業者登録がスムーズに行えます。以下の①から⑤の手順が登録の流れです。
①事業者登録ははじめに、申請用ログインIDを取得します。
②建設キャリアアップシステムホームページを開き、「登録する」・事業者登録をするの「インターネットで申請する」・「申込み」ボタンを順番にクリックしていくと、「事業者新規利用申込み画面」が出てきます。
③この申込画面に必要事項を入力して、最後に「利用申込み」ボタンを押すと、「申請用ログインID・パスワードのお知らせメール」が届きます。
④次に、建設キャリアアップシステムに申請用IDでログインします。初回ログイン時はパスワード変更画面がでてきますので、パスワードを変更します。
⑤新しいパスワードで再ログインし、トップ画面左側「200_新規登録」「10_登録申請」をクリックします。この画面に必須項目を入力していき、JPEG化した「事業者確認書類」を必要に応じて添付することで申込完了です。
※PC上での作業イメージ
技能者登録
事業者登録の次は、技能者登録です。建設キャリアアップシステム本部で推奨している、所属事業者が技能者登録の代行申請をするケースについて紹介します。①から③が登録の手順です。
①申請内容を証明するための書類を集めます。準備する書類は次の通りです。
□同意書
・代行申請同意書
・システム利用規約同意書
・個人情報取り扱い同意書
□顔写真:撮影6カ月以内のカラー写真
□本人確認書類
・日本国籍の方:「運転免許証写し」または「マイナンバーカード写し」
・外国籍の方:「在留カード写し」または「特別永住者証明書写し」
□健康保険:「健康保険証」
□年金保険
・厚生年金加入:「健康保険・厚生年金保険標準報酬決定通知書写し」
・国民年金加入:「ねんきん定期便」「領収証書」
□雇用保険
・「雇用保険被保険者証写し」または「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書写し」
□退職金制度確認書類(加入の場合)
・「建設業退職金共済手帳写し」「中小企業退職金共済手帳写し」
□労災保険特別加入(加入の場合)
・「労災保険加入証明証」「労働者災害補償保険特別加入証明証」
□各種資格等確認書類(ある場合)
・「登録基幹技能者講習修了証写し」「保有資格証明書類写し」
「研修受講・修了証明書類写し」「表彰証明書類写し」
②集めた書類をJPEG(JPGファイル)に変換します。やり方は事業者登録のポイント3と同様です。カメラで撮影したり、スキャニングした書類データを複合機やパソコンなどでJPEGに変換します。ファイル名も分かりやすくしておきます。
③ここまで準備が整ったら、登録申請です。建設キャリアアップシステムホームページを開き、事業者IDでログインします。トップ画面左側「710_代行申請」「20_技能者の新規代行」をクリックします。
この画面に必須項目を入力していき、JPEG化した書類を必要に応じて添付することで申込完了です。
※トップ画面イメージ
入力をする際に気を付けることは、はじめに同意書を取込むことです。取込まないと先へすすめません。
さらに登録には簡略型と詳細型があります。違いは料金、登録項目、レベル判定の申請可否です。ちなみに詳細型登録の入力必須項目は、労働保険特別加入の有無のみです。
登録申請(インターネット申請)は、必要書類等の準備さえできてしまえば、インターネットで完結できます。ですので、あまり難しくないのでは、と思われる方もいるかもしれませんが、電話での問合せができませんので、この点、少しわずらわしさがあります(メールでの問合せのみ)。
以上が事業者登録と技能者登録の簡単なご紹介です。なんとなくでも登録のイメージができたでしょうか?
建設キャリアアップシステム まとめ
ここまで「建設キャリアアップシステム」の目的や費用、登録方法についてお話してきました。最後にポイントをまとめますね。
- 「建設キャリアアップシステム」は任意。特定技能外国人を受入れる場合は義務。
- 登録するには一定の費用がかかる。
- 事業者登録と技能者登録があり、さらに技能者登録には簡略型と詳細型がある。
- 登録はインターネットで完結できるが、問合せはメールのみ。
これらのポイントを押さえ、「建設キャリアアップシステム」の導入を検討する際の参考にしていただければ幸いです。
執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)