建設分野における特定技能ビザ人材活用


*この記事では「建設分野」に特化してお伝えします。他分野では要件などが異なることもありますので、ご注意ください。

建設業界では、職人の高齢化の問題や若年層の建設業離れ等、なかなか安定した人材を確保できずに困っている企業の方も多いと思います。

このように建設分野は国内で人材を十分に確保することが困難である業種ということで、特定技能外国人を受入れることができる「特定産業分野」の一つとなっています。

ここでは、建設分野で特定技能外国人の雇用を検討している企業様向けに、特定技能制度に詳しい行政書士が分かりやすく解説します。

建設業界の現状~深刻な人手不足~

国道交通省は、2025年までに建設現場の生産性を2割向上させるという目標(未来投資会議(2016.9))等を踏まえ、働き方改革や処遇改善等の対策により国内の人材確保を目指してきました。

しかし、建設分野では高齢の技能者の大量引退が始まりつつあり、2023年時点で21万人の人材が不足する見込みであるとして、これらの取り組みを行っても不足する人材については、特定技能外国人を受け入れることにより補うこととしました。

(国土交通省資料「建設業をめぐる最近の状況」参照)

有効求人倍率から見る人手不足の現状

下の表は、「建設・採掘従事者」と産業全体の有効求人倍率を比較したものです。

有効求人倍率 2019年11月 2020年11月 2021年11月 2022年11月 2023年11月
建設・採掘従事者 5.75 5.25 5.20 5.66 5.57
産業全体 1.57 1.06 1.15 1.35 1.28

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」をもとに特定技能ねっとが再構成

2023年11月の有効求人倍率は産業全体で1.28倍でしたが、「建設・採掘従事者」では5.57倍でした。

有効求人倍率が高いといわれる「介護サービス職業従事者」の同時期の有効求人倍率は4.06倍、「接客・給仕職業従事者 」は3.23倍で、この数値が高いほど人手不足であることを表しています。

建設業では5件の求人に対して1人しか求職者がいない状況にあり、他の産業よりも圧倒的に人手が足りないことがわかります。

人材不足の要因

では、どうして建設分野では人手不足が深刻なのでしょうか。

主な要因として「少子高齢化による就業者数の減少」「若者離れ」「需要の拡大」が考えられます。

少子高齢化による就業者数の減少

国土交通省の資料「建設業を巡る現状と課題」によると、建設業における就業者数のピークは1997年の685万人で、2022年には479万人まで減少しています。

また建設業は高齢化が進行しており、2022年の55歳以上の就業者数の割合は、全産業では31.5%ですが建設業では35.9%となっています。

そのなかでも、10年後に引退することが見込まれる60歳以上の技能者が全体の25.7%を占めているのに対し、29歳以下の技能者は11.7%しかいないため、更なる就業者の減少が予想されます。

若者の建設業離れ

建設業では若手の技能者が少ないとお伝えしましたが、新規学卒者の建設業への入職は増加傾向にあります。

ではなぜ、建設業で若手が不足しているのでしょうか。理由は離職率の高さです。

建設業では新規学卒者の3年目までの離職率が他産業に比べて高い傾向にあり、特に就職1年以内の離職率が高くなっています。

若年層の離職者が仕事を辞めた理由として挙げているものの上位は、「雇用が不安定である」「遠方の作業が多い」「休みがとりづらい」でした。

一方で、企業側が若年技能労働者が定着していない理由として挙げているのが「作業がきつい」「若年技能労働者の職業意識が低い」「現場での人間関係が難しい」なので、実際の離職理由を企業側が把握できていないことも若手が定着しない原因と考えられます。

建設需要の拡大

建設需要は、東日本大震災の復興や東京オリンピック・パラリンピック開催により、増加傾向にあります。

その後も大阪万博の開催、リニア新幹線の開業など大きなプロジェクトが進んでおり、建設需要は今後も増加していく見込みです。

国土交通省は、2023年度の建設投資は70兆3,200億円となると見込んでおり、2015年以降は右肩上がりとなっています。

国土交通省と建設業界によって処遇改善、働き方改革、生産性向上が進められていますが、増加する建設需要に反して人材不足が解消されないことから、外国人労働者に頼らざるを得ない状況にあります。

建設分野における外国人の受入れ状況

国土交通省の資料「建設分野における外国人の受入れ」によると、建設分野で活躍する外国人は2011年から2018年の7年間で5倍以上に膨れ上がっています。

このように特定技能制度ができる2019年より以前から多くの外国人が建設分野では働いています。

建設分野で働いている外国人を在留資格別に見てみると、最も多いのが技能実習生です。

2015年以降は、オリンピック・パラリンピック東京大会の関連施設整備などによる一時的な建設需要の増大に対応するために、技能実習修了者を対象として「外国人建設就労者受入事業」が緊急措置的に実施されました。

「外国人建設就労者受入事業」で建設業に携わっている外国人の在留資格は「特定活動32号(外国人建設就労者)」です。

※この制度は2021年3月末で新たな受け入れを終了し、外国人建設就労者として活動できる期間も2023年3月末で終了しました。

「外国人建設就労者受入事業」は時限的措置であったため、建設分野は人材確保が困難であるとして特定技能制度の対象になっています。

建設分野での特定技能1号の受入れ見込数は、制度開始当初は4万人を上限としていました。

しかし、その後の新型コロナウイルス感染症の影響による経済情勢の変化を踏まえ、2023年度末までは最大で3万4,000人に見直されています。

技能実習生と特定技能外国人との違い

2019年に始まった特定技能制度ですが、建設分野では技能実習修了者が在留資格を変更し、特定技能に移行しているパターンが多いです。

2020年度の統計では、技能実習生からの移行が2,472人、特定活動(外国人建設就労者)からの移行が763人となっています。

技能実習制度は、技術移転を目的とした国際協力の一環である一方、特定技能制度は日本の人材不足の解消を目的としています。

したがって、技能実習制度についてはその分野の見習い・未経験者等が対象となる一方で、特定技能制度では「即戦力」となる外国人が求められています。

「技能実習3号」と「特定技能1号」どちらがよい?

既に技能実習生(2号)を受入れており、その実習生の在留期限が迫る中、受入企業が引き続きその実習生を雇用したいと思った場合、「技能実習3号」か「特定技能」の二つの選択肢が出てきます。

「技能実習3号」は、実習生が技能検定3級等の実技試験に合格すること、監理団体及び実習実施者が優良と認定されることが必要で、在留期間は2年以内です。

一方「特定技能」は、建設分野に関する職種で技能実習2号を修了すれば「特定技能1号」に無試験で移行できます。

在留資格の変更手続きをすることで「特定技能」に移行でき、在留期間は通算5年です。

したがって、在留期間の点からみると、既に職場環境に慣れ一定の技術を習得している技能実習生を引き続き雇用したい場合は、「特定技能」に移行した方が「技能実習3号」に移行するよりも3年長く働くことができます。

気になる費用面は、技能実習制度の場合は監理団体への監理費の支払い(相場は月3~6万円/人)があります。

また、技能実習3号開始前または開始後1年以内に1カ月以上一時帰国する必要があり、その往復費用を負担するのは実習実施者です。

特定技能の場合、特定技能1号外国人に対して「特定技能外国人支援計画」に基づいた支援を行う必要があるため、自社で支援をおこなわずに登録支援機関に委託した場合はその費用(委託料の相場は、月3~5万円/人)がかかります。

また建設分野の特定技能に関しては、特定技能外国人受入事業実施法人等(後述)への負担金の納入が加わります。

その他にも「技能実習3号」に移行する場合、要件を満たし「優良な実習実施者」「優良な管理団体」の認定を受けなくてはいけません。

したがって、「技能実習3号」と「特定技能」のどちらに移行するかは、在留期間や費用面、優良要件を満たせるかどうかの検討がポイントになるでしょう。

もちろん、技能実習3号を修了してから特定技能1号に移行することも可能です。

すでに建設分野の技能実習生を受入れている事業者は特定技能1号に移行して引き続き受入れを続けるケースが多く、新規受入の場合は「特定技能1号評価試験」等の合格者を採用するケースが多くなっています。

特定技能2号は在留期間に上限なし

2023年8月31日より、介護分野を除くすべての分野で特定技能2号の受入れが可能になりました。

特定技能2号を取得するための試験は随時開始予定とされており、2024年1月時点でまだ実施されていない分野もあります。

しかし建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分では以前から2号の受け入れ対象となっており、2023年6月末時点ですでに12人の2号外国人が建設分野で就労しています。

特定技能2号の在留期間は3年・1年・6か月ごとの更新で、1号のように通算在留期間の上限がありません。また要件を満たせば家族の帯同も可能となる等、より日本に腰を据えて業務に従事してもらうことが可能になります。

建設分野で受入れ可能な職種と従事できる業務

以前は建設分野の受入れ対象から外れている作業があったり、業務区分が細分化されていたりすることで従事できる業務が限定されていました。

2022年8月の閣議決定により制度か改正され、現在は建設業に係るすべての作業が受入れ対象となり、19あった業務区分は「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に統合されています。

新区分ごとの主な業務内容と従事できる工事の範囲は、下の表をご覧ください。

土木区分 建築区分 ライフライン・設備区分
主な業務 工事の範囲 主な業務 工事の範囲 主な業務 工事の範囲
型枠施工

コンクリート圧送

トンネル推進工

建設機械施工

土工

鉄筋施工

とび

海洋土木

その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕にかかる作業

さく井工事業

舗装工事業

しゅんせつ工事業

造園工事業

大工工事業

とび・土工工事業

鋼構造物工事業

鉄筋工事業

塗装工事業

防水工事業

石工事業

機械器具設置工事業

型枠施工

左官

コンクリート圧送

屋根ふき

土工

鉄筋施工

鉄筋継手

内装仕上げ

表装

とび

建築大工

建築板金

吹付ウレタン断熱

その他、建築物の新築、増築、改築もしくは移転、修繕、模様替または係る作業

大工工事業

とび・土工工事業

鋼構造物工事業

鉄筋工事業

塗装工事業

防水工事業

石工事業

機械器具設置工事業

内装仕上工事業

建具工事業

左官工事業

タイル・れんが・ブロック工事業

清掃施設工事業

屋根工事業

ガラス工事業

解体工事業

板金工事業

熱絶縁工事業

管工事業

電気通信

配管

建築板金

保温保冷

その他、ライフライン・設備の整備、設置、変更または修理にかかる作業

板金工事業

熱絶縁工事業

管工事業

電気工事業

電気通信工事業

水道施設工事業

消防施設工事業

特定技能ビザを取得した業務区分の工事であれば、作業現場の種類に関係なく従事することが可能です。

例えば、土木区分で特定技能を取得した外国人でも、建築現場で造園工事をおこなうことが可能です。

また、業務区分に含まれるすべての作業・工事に従事できるため、以前より業務の範囲が広がっています。

建設分野で働くことができる特定技能外国人の要件とは?

建設分野で特定技能1号外国人として働くには、二つのパターンがあります。

一つは技能実習2号を良好に修了した場合、もう一つは建設分野の技能試験及び日本語試験に合格した場合です。

技能実習2号からの移行

技能実習2号を良好に修了している場合は、技能試験及び日本語試験が免除されます。

無試験で移行できる特定技能の業務区分と技能実習2号の職種・作業の対応関係は、下の表の通りです。

特定技能業務区分 技能実習2号
職種 作業
土木 さく井 パーカッション式さく井工事作業
ロータリー式さく井工事作業
型枠施工 型枠工事作業
鉄筋施工 鉄筋組立て作業
とび とび作業
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事作業
ウェルポイント施工 ウェルポイント工事作業
建設機械施工 押土・整地作業
積込み作業
掘削作業
締固め作業
鉄工 構造物鉄工作業
塗装 建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接 手溶接
半自動溶接
建築 建築板金 内外装板金作業
ダクト板金作業
建具制作 木製建具手加工作業
建築大工 大工工事作業
型枠施工 型枠工事作業
鉄筋施工 鉄筋組立て作業
とび とび作業
石材施工 石材加工作業
石張り作業
タイル張り タイル張り作業
かわらぶき かわらぶき作業
左官 左官作業
内装仕上げ施工 プラスチック系床仕上げ工事作業
カーペット系床仕上げ工事作業
鋼製下地工事作業
ボード仕上工事作業
カーテン工事作業
表装 壁装作業
サッシ施工 ビル用サッシ施工作業
防水施工 シーリング防水工事作業
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事作業
築炉 築炉作業
鉄工 構造物鉄工作業
塗装 建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接 手溶接
半自動溶接
ライフライン・設備 建築板金 内外装板金作業
ダクト板金作業
冷凍空気調和機器施工 冷凍空気調和機器施工作業
配管 建築配管作業
プラント配管作業
熱絶縁施工 保温保冷工事作業
溶接 手溶接
半自動溶接

試験が免除されるのは、技能実習2号の職種・作業に対応している業務区分で特定技能に移行する場合だけです。

例えば、土木にしか対応していない「さく井・パーカッション式さく井工事作業」で技能実習2号を修了した外国人が建築区分で特定技能に移行したい場合は、日本語試験は免除されますが、技能試験には合格する必要があります。

なお、2023年3月で終了した「特定活動32号(外国人建設就労者)」の方が特定技能へ移行する場合も、外国人建設就労者の前に修了した技能実習2号の職種・作業に対応した業務区分に移行することができました。

必要な試験をクリアして特定技能1号へ

技能実習を修了していない・未経験の外国人が特定技能になるには、技能試験と日本語試験に合格しなくてはいけません。

技能試験

技能試験は「建設分野特定技能1号評価試験」または「技能検定3級」に合格する必要があり、業務区分ごとに試験区分も分かれています。

業務区分と試験区分(合格が必要な試験)については、下の表をご覧ください。

業務区分 試験区分
土木 建設分野特定技能1号評価試験 土木
技能検定3級 型枠施工
鉄筋施工
とび
造園
塗装
建築 建設分野特定技能1号評価試験 建築
技能検定3級 型枠施工
左官
かわらぶき
鉄筋施工
内装仕上げ施工
とび
建築大工
建築板金
塗装
ブロック建築
広告美術仕上げ
ライフライン・設備 建設分野特定技能1号評価試験 ライフライン・設備
技能検定3級 配管
建築板金
冷凍空気調和機器施工

業務区分に対応した試験区分内で、いずれかの試験に合格すれば大丈夫です。

試験の詳細は、建設分野特定技能1号評価試験は(一社)建設技能人材機構(JAC)、技能検定は各都道府県職業能力開発協会のホームページで確認できます。

日本語試験

日本語試験は以下のどちらかに合格する必要があります。

・「国際交流基金日本語基礎テスト」(JFT-Basic)

・「日本語能力試験」N4以上(JLPT)

上記2つの日本語試験の他にも、「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるものに合格すれば特定技能1号の日本語能力の要件を満たすことが可能です。

建設分野で特定技能2号になるには

特定技能2号の場合、日本語試験の要件はありませんが、技能試験の合格と一定の実務経験が必要です。

技能試験

業務区分に対応した「建設分野特定技能2号評価試験」「技能検定1級」「技能検定単一等級」のいずれかに合格する必要があります。

試験区分と必要な試験は下の表の通りです。

業務区分 試験区分
土木 建設分野特定技能2号評価試験 土木
技能検定1級 型枠施工
コンクリート圧送施工
鉄筋施工
とび
ウェルポイント施工
鉄工(構造物鉄工作業)
塗装
さく井
造園
技能検定単一等級 路面標示施工
建築 建設分野特定技能2号評価試験 建築
技能検定1級 型枠施工
左官
コンクリート圧送施工
かわらぶき
鉄筋施工
内装仕上げ施工
表装
とび
建築大工
建築板金
熱絶縁施工(吹付硬質ウレタンフォーム断熱工事作業)
石材施工
タイル張り
築炉
鉄工(構造物鉄工作業)
塗装
防水施工
建具制作
カーテンウォール施工
自動ドア施工
サッシ施工
ガラス施工
ブロック建築
樹脂接着剤注入施工
広告美術仕上げ
厨房設備施工
技能検定単一等級 枠組壁建築
エーエルシーパネル
バルコニー施工
ライフライン・設備 建設分野特定技能2号評価試験 ライフライン・設備
技能検定1級 配管
建築板金
熱絶縁施工(保温保冷工事作業)
冷凍空気調和機器施工

 

実務経験

特定技能2号になるために必要な実務経験は「建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理するもの(班長)としての経験」です。

実務経験として必要な日数は、建設キャリアアップシステムの能力評価基準がある職種については、能力評価基準レベル3に必要な就業日数(職長+班長)となります。

能力評価基準がない職種については、3年(勤務日数645日)以上の就業日数(職長+班長)が必要です。

なお、特定技能2号としての技能水準や実務経験を有していると認められれば、特定技能1号を経なくても特定技能2号を取得できます。

特定技能外国人を受入れる機関が満たすべき要件とは?

特定技能外国人を受入れる機関は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 国土交通大臣より建設特定技能受入計画の認定を受けていること
  • 特定技能外国人の全分野共通の要件を満たしていること

「国土交通大臣より建設特定技能受入計画の認定を受けていること」とは?

建設分野は他の分野とは異なり、事前に国土交通大臣より建設特定技能受入計画の認定を受けていること」という分野特有の要件があります。(「建設特定技能受入計画」の詳細は後述します)

受入計画の認定を受けるためには、以下の5つの要件すべてを満たす必要があります。

①受入機関が以下の要件を満たしていること

  • 建設業法第3条の許可を受けていること
  • 建設キャリアアップシステムに登録していること(詳細後述)
  • 特定技能外国人受入事業実施法人等への所属(詳細後述)
  • 申請日の前5年以内又はその申請の日以降に、建設業法に基づく監督処分を受けていないこと
  • 職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内人材確保の取り組みを行っていること

②特定技能外国人に対する報酬等が同等の技能を有する日本人と同等額以上であり、安定的に賃金の支払いがなされること、技能習熟等に応じた昇給が、雇用契約に明記されていること

③雇用契約締結前までに外国人が十分に理解することができる言語で、契約に係る重要事項を説明していること

④特定技能外国人に対して、受入れた後に国土交通大臣が指定する講習又は研修を受講させること

⑤国または適正就労管理機関による受入計画の適正な履行に係る巡回指導を受入れること

建設キャリアアップシステムとは

受入機関の要件である「建設キャリアアップシステム(CCUS)」とは、建設業にかかわる技能者の資格や社会保険加入状況、現場の就業履歴などの情報を登録・蓄積していき、技能者の適正な評価や建設事業者の業務負担軽減に役立てるための仕組みです。

登録完了(事業者ID発行)までは、申請してから1か月程度かかります。

本来、建設特定技能受入計画の認定申請時には、受入機関のCCUSの登録が完了していることが必要です。

しかし現在は、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、CCUSの運営主体が当面の間審査業務を縮小している関係で、CCUSの登録申請を行ったことを証明する書類の提出をもって認定要件を満たすこととされています。

なお、この受入機関のCCUSの登録完了の要件については、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、当面の取扱いとして「CCUSの登録申請を行ったことを証する書類の提出をもって認定要件を満たす」とされていましたが、令和3年8月16日以降は、従来どおり、「CCUSの登録完了」が認定要件となっていますので気を付けてください。

特定技能外国人受入事業実施法人等の所属について

同じく受入機関の要件の一つである「特定技能外国人受入事業実施法人等への所属」とは、特定技能外国人受入事業実施法人である一般社団法人建設技能人材機構(JAC)に間接的に又は直接的に加入しているということです。

JACは、正会員である51の建設業者団体で構成されています。(2023年6月時点)

受入機関がJACの正会員である建設業者団体の会員である場合、JACに間接的に加入していると見なされるため、JACに直接的に加入する必要はありません。

つまりJACの正会員である建設業者団体の会員でない場合は、JACに直接的に加入して賛助会員となることが必要です。

JACへの入会手続きには1カ月半程度要するため、加入手続きを行う場合には、この期間を考慮して準備を進める必要があります。

ちなみにJACは、特定技能外国人の受入機関に代わって外国人の支援計画の実施を担う「登録支援機関」とは異なり、外国人の教育訓練、技能試験の実施、人材紹介、適正な就労環境確保のための措置等を行なう法人です。

「特定技能外国人の全分野共通の要件を満たしていること」とは?

これに加え、他分野とも共通の要件を満たしている必要があります。

例えば、労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること、1年以内に受入れ機関側の事由で行方不明者を発生させていないこと、特定技能外国人の雇用を継続できる体制が整っていること等が挙げられます。(全分野共通の要件については、『特定技能はじめの一歩』のページをご参照ください)

建設特定技能受入計画とは~建設分野特有のもの~

ここで特定技能外国人を受入れる機関の要件である「建設特定技能受入計画」について、もう少し詳しく見てみましょう。

「1号特定技能外国人支援計画」と「建設特定技能受入計画」の違いは?

特定技能外国人を受入れる場合、どの分野であっても「1号特定技能外国人支援計画」を作成しなければなりません。

「1号特定技能外国人支援計画」とは、特定技能外国人が日本で円滑に仕事ができるようにするために受入機関が実施する社会生活上の支援計画書です。

支援計画書は、在留資格「特定技能」を申請する際に出入国在留管理局に提出する必要があります。

支援計画書とは別に、建設分野では「建設特定技能受入計画」を作成しなければなりませんが、これは国土交通省に提出するものです。

受入計画の認定・継続的な状況確認により、劣悪な労働環境で仕事をさせている企業の建設市場への参入を認めないで公正な競争環境を維持すること、また建設分野で働く外国人の失踪や不法就労を防止すること等を目的としています。

記載項目と提出書類

受入計画には、以下の項目に関する記載が求められます。

①認定申請者(=受入機関)に関する事項 前述のとおり、特定技能外国人の受入機関が必要要件を満たしているかどうかという点になります。
②国内人材確保の取組みに関する事項 在留資格「特定技能」の制度設立には、国内で人材確保の取り組みを行ってもなお人材確保が困難であるという状況が背景にあります。したがって国内で人材の確保にかかる相応の努力を行っているかどうかも審査のポイントになります。
③特定技能外国人の適正な就労環境の確保に関する事項 特定技能外国人の処遇(報酬の額、支払い形態、昇給等)に関する記載になります。特定技能外国人が不利にならないよう同等の技能を有する日本人と同等額以上の処遇を設ける必要がある等、留意が必要です。
④特定技能外国人の安全衛生教育及び技能の習得に関する事項 特定技能外国人に従事させる業務に従って、労働安全衛生法に基づく特別教育等の安全衛生っ教育又は技能講習などを記載することが求められています。

そしてこれらの記載項目に加え、主に以下の書類提出が必要となります。

(申請時に、提出書類の詳細について国土交通省HPで確認することをお勧めします)

①登記事項証明書、住民票(原本)
②建設業許可証の写し
③常勤職員数を明らかにする文書
④建設キャリアアップシステムの事業者IDを確認する書類(もしくは登録申請を行った証明書類
⑤JACの会員証又はJACの正会員である建設業者団体の会員であることを証する書類
⑥ハローワークで求人した際の求人票
⑦同様の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書
⑧就業規則及び賃金規定
⑨同等の技能を有する日本人の賃金台帳
⑩同様の技能を有する日本人の実務経験年数を証明する書類
⑪特定技能雇用契約書および雇用条件書
⑫時間外労働・休日労働に関する協定届、変形労働時間に係る協定書、年間カレンダー等
⑬雇用契約に係る重要事項事前説明書の写し
⑭建設キャリアアップカード(建設キャリアアップシステムの技能者 ID を確認する書類)

⑭は、申請時点でキャリアアップシステムに登録済みの場合(技能実習からの移行など)に必要です。

申請手続き

申請は、国土交通省の「外国人就労管理システム」からオンラインで行います。

したがって上述の提出書類は事前にスキャンしてPDF化するか、写真を撮りJPEG化しておくとよいでしょう。

申請から認定されるまでの審査期間は、1カ月半から2カ月程度かかると言われていますので、準備は早めに行いましょう。

追記:2023年10月現在では、申請件数が多いことによって、審査期間に6か月程度かかるケースが散見されています。

建設分野での特定技能外国人雇用の注意点

建設分野で特定技能外国人を雇用する際には、注意する点があります。

受入れ人数

特定技能外国人の受入れ人数は、1号特定技能外国人の総数と外国人建設就労者の総数の合計が、受入機関の常勤職員の総数を超えてはいけません

雇用形態

また雇用形態について、派遣は認められておらず、直接雇用する必要があります

(特定技能の対象業種で、派遣形態が認められているのは、「農業」と「漁業」のみです)

採用方法

新規に特定技能外国人を採用する場合、建設分野では有料職業紹介事業者からの紹介は不可なっています。前出のJACが無料職業紹介を行っていますので、JACから人材紹介を受けることが可能です。

この3点にについて押さえておきましょう。

建設分野での特定技能外国人受入れの流れ

建設分野で特定技能外国人を雇用する場合、他の分野と大きく異なるのが、在留資格の許可・交付申請前に「建設特定技能受入計画」の認定を受けておく必要がある、という点です。

受入れまでの流れ

STEP1:キャリアアップシステムの事業者登録申請、JAC等への加入

STEP2:雇用する外国人に対する特定技能雇用契約にかかる重要事項説明

STEP3:特定技能雇用契約締結

(対象外国人が日本国内に在留している場合には、キャリアアップシステムへの技能者登録手続きも行う)

STEP4:建設特定技能受入計画の認定申請

STEP5:在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更許可申請

STEP6:受入れ

建設分野在留資格「特定技能」の許可・交付を受けるためには、建設特定技能受入計画の認定証の写しの提出が必要となります。

「建設特定技能受入計画」の認定を受けるためには、既に説明したとおり、建設キャリアアップシステムへの登録申請、JACへの加盟等をの手続きが必要となります。これらの審査期間を考慮すると、在留資格の取得手続きに入るまでに3カ月~4カ月かかることを念頭に置いておかなければなりません。

在留資格の審査には2カ月~3カ月かかるため、実際に特定技能外国人の受け入れが完了するまで5カ月~7カ月(約半年)程度かかることを想定して早め早めに準備をすることをお勧めします。

建設分野で特定技能外国人を雇用する際に係る費用

特定技能外国人を雇用する場合の費用について見てみましょう。

建設分野では他の分野と異なり、以下のような費用が別途かかります。

①特定技能外国人受入事業実施法人等への加入費用 ①JACの正会員である建設業者団体に所属する場合

  • 入会金
  • 年会費
    (建設業者団体によって異なる)

②JACの賛助会員になる場合

  • 年会費 24万円
  • 受入負担金 月額12,500〜20,000円(1人あたり)
②建設キャリアアップシステムの登録料 ①事業者登録料(有効期限:5年間)

  • 登録料 0〜240万円(資本金を元に決定)
    例)資本金500万円未満・・・登録料6,000円
  • 管理者ID利用料 11,400円(1IDあたり)

②技能者登録料(有効期限:9年後の最初の誕生日まで)

  1. 簡略型 2,500円(本人情報、所属事業者情報、社会保険情報等を登録)
  2. 詳細型 4,900円(本人情報、所属事業者情報、社会保険情報、保有資格、研修受講履歴等を登録)

これらの費用の他、特定技能外国人の在留資格申請等の手続きを委託する場合、特定技能外国人の支援を登録支援機関に委託する場合にはそれぞれ費用が掛かってきます。

特定技能外国人を受入れた後は?

特定技能外国人を受入れた後にも必要な手続きがあります。必要な手続きを怠ると「建設特定技能受入計画」の認定が取り消されるなどの処分を受ける場合がありますので、注意しましょう。

外国人の建設キャリアアップシステムへの登録

海外にいる特定技能外国人を雇用した場合には、入国後、当該外国人の建設キャリアアップシステムへの登録が必要です。

受入報告書の提出

受入計画が認定された外国人が入国したら、原則として1カ月以内に受入報告を行う必要があります。

受入報告も、国土交通省の「外国人就労管理システム」からオンラインでおこないます。

受入報告の際に外国人のCCUS技能者IDが必要になるため、建設キャリアアップシステムの技能者登録を先に済ませておきましょう。

「受入後講習」の受講

受入れた特定技能外国人に対して、国土交通大臣が指定する「受入後講習」を受講させる必要があります。

この講習は、建設分野の「適正就労監理機関」である一般社団法人国際建設技能振興機構が実施しています。

特定技能外国人の受入れ後、概ね6カ月以内に当該外国人に受講させるようにしなければなりません。

「労働安全衛生法に基づく特別教育又は技能講習等」の受講

労働安全衛生法に基づく特別教育又は技能講習などが必要とされている業務については、受入機関は当該外国人に対して、これらの教育又は講習などを受けさせる必要があります。

また特定技能外国人は、一般的に日本語や日本の労働慣行に習熟していないことから、これらの教育・講習を行う場合には母国語等を用いる、視聴覚教材を用いるなど、その内容を確実に理解できる方法により行うことが求められています。

建設分野のまとめ

  • 建設分野では、最大3万4,000人の特定技能外国人の受入れが見込まれている。(2023年3月末まで)
  • 建設分野では、既に受入れている技能実習生を特定技能1号に移行して引き続き雇用を継続している企業が多い。
  • 特定技能2号になれば、工程管理や指導ができる班長として長く日本で活躍してもらえる。
  • 建設業の全ての作業で特定技能外国人を受入れ可能。
  • 技能実習2号から特定技能1号に移行する場合、試験が免除にならない場合もあるので事前に確認が必要。
  • 特定技能の在留資格を申請するためには、事前に「建設特定技能受入計画」の認定を国土交通大臣から受けている必要がある。
  • 特定技能外国人を雇用する場合には、人数や雇用形態、採用方法に留意する必要あり。
  • 特定技能外国人を受入れるまで、手続きに約半年ほど必要。
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