飲食料品製造業分野では深刻な人材不足が続いており、特定技能外国人の就業人数が最も多い分野となっています。
特定技能制度について知り雇用を検討したいと思いつつも、実際雇用するとなるといろいろと心配事や疑問が出てきていらっしゃる方も多いと思います。
ここでは、特定技能外国人の受入れサポートの実績を持つ入管業務の専門家行政書士が、特定技能「飲食料品製造業」分野でおこなえる具体的な業務内容や実務上の注意点について、ポイントを絞って解説いたします。
Table of Contents
特定技能「飲食料品製造業分野」では、外国人にどんな業務をさせられるの?
まず最初に気になるのは、どんな業務を特定技能外国人に任せられるのか、という点ではないでしょうか。
飲食料品製造業分野では、「飲食料品の製造・加工、安全衛生にかかわる業務」を任せることができます。
この「飲食料品の製造・加工」とは、具体的に言うと原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥などの一連の生産行為をいいます。
この「飲食料品」にはお酒は含まれませんので注意してくださいね。
また単なる選別作業や、包装の作業もここでいう「製造・加工」とは見なされませんので、気を付けましょう。
また通常日本人の従業員が担当している原料の調達や受入れ、製品の納品、清掃、事務所の管理の作業などに付随的に携わることは可能です。
これらの通常日本人の従業員が担当している業務を「関連業務」と言いますが、「関連業務」を特定技能外国人にお願いする時には注意が必要です。
「関連業務」に携わるときにポイントとなるのが、「付随的に」という点です。
この「付随的に」というのは、「関連業務」が特定技能外国人に任せるメイン業務になってはいけないということです。
つまり特定技能外国人のメイン業務はあくまでも「製造・加工、安全衛生にかかわる業務」。これらと合わせて「関連業務」を行うのであれば問題ないですよ、ということです。
特定技能外国人に任せられる業務と受入れ場所を合わせてみる必要あり
特定技能外国人に「飲食料品の製造・加工、安全衛生にかかわる業務」であれば任せられるということはお分かりいただいたと思いますが、ではそれらの業務は具体的にどのようなものなのか?と気になりますよね。
飲食料品製造業分野では、特定技能外国人に任せられる業務とその業務をどこでやるかという点がポイントになってきます。
そこで、具体的な業務内容の話を進める前に、飲食料品製造業分野の中で、どのような業種で特定技能外国人を受入れることができるのかをご説明します。
飲食料品製造業分野で特定技能外国人を受入れられる業種
業種としてみると、食料品製造業、清涼飲料製造業、茶・コーヒー製造業、製氷業、菓子小売業、パン小売業、豆腐・かまぼこ等加工食品小売業の7業種が対象となっています。
これは日本標準産業分類に基づく業種分類になっています。
つまり、食料品や飲料(酒類を除く)を製造加工し、卸売している事業所が対象となります。
ただし注意が必要なのは、酒類製造業や飲食料品の小売業、飲食料品卸売業、塩製造業、医療品製造業、香料製造業、ペットフードの製造は対象にならないということです。
では、ここから具体的な例を挙げてご説明します。
精肉加工や水産加工は?
例えばお肉やお魚等の加工。どちらとも小売業者や卸売事業者等に向けて納品する加工事業所であれば、特定技能外国人を受入れ、業務に従事してもらうことができます。
ただし事業所がこの精肉加工業務や水産加工業務に占める売上げ等が全体の2分の1を超えていることが条件となっています。
鶏卵の選別や包装工場での業務は?
続いて卵の選別や包装工場であるGPセンターのような工場での受入れについてです。
結論は、受入れ可能です。
鶏卵を洗浄や消毒した後に選別、包装(パック詰めし、小売業者や卸事業者向けに納品する事業所(いわゆるGPセンター)は対象です。
こちらは冒頭にお伝えした「単なる選別作業・包装作業」とみなされやすいですが、この業務での売り上げ等が全体の2分の1を超えているという条件をクリアしていれば対象となります。
野菜のカットは?
私たちの生活に身近になったカット野菜。このカット野菜を作るのはどうでしょうか?
野菜を仕入れて、すぐに調理に使用できるように炒め物用やサラダ用にカットしたり、山芋の皮むき等の加工をしたものを小売業者や卸事業者等に向けて納品する事業所であれば、受入れ・業務は可能になります。
ただしこちらでも、売上等が全体の2分の1を超えているという条件がありますが。
もう一つ注意が必要なのは、例えばキャベツを半分にカットするだけ、シイタケの石づきをカットするだけといった軽微な加工を行う場合は「卸売業」とみなされるので対象外になります。
また野菜を栽培していて、そこでシイタケの石づきを切るといったような場合は「農業」分野での業務とみなされ、「飲食料品製造業分野」では対象外となります。
弁当、総菜の製造は?
コロナ禍で外食を控える人が増え、お弁当やお惣菜の需要は高まって言いますが、これらの製造はどうでしょうか?
弁当や総菜は、その製造を行っている事業所がどういうところなのかで、変わってきます。
もしお弁当や総菜などを製造して、小売業者や卸業者等に向けて卸売しているのであれば、特定技能外国人をやとって製造業務に携わってもらうことができます。
また例えばレストラン等の店舗での調理の代わりに、料理品や原材料の製造・加工をしているセントラルキッチンのように、接客をせずに調理に特化している事業所は「飲食料品製造業」の対象となります。
しかし、持ち帰り弁当のように、お客様の注文に応じてその場で調理した飲食料品を持ち帰る状態で提供している場合は、「外食業」分野の持ち帰り飲食サービスに該当するため、「飲食料品製造業」分野の対象外となります。
少し例を挙げて説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
特定技能外国人を受入れたいと考えられている事業者様の主たる業務が何なのか、特定技能外国人に任せたいと思っている業務はその業務で得る売上げ等の条件があるのか、といったように「どこで何を任せるか」が飲食料品製造業分野で特定技能外国人を雇用するために重要なポイントとなってきます。
もし皆様の事業所が「飲食料品製造業」に該当するのか、それとも他の分野なのか等、判断がつかない場合は、事前に確認をしましょう。
特定技能外国人は即戦力として期待できるの?
特定技能外国人ができる業務や働ける場所について説明しましたが、でも実際にこれらの業務をお願いするにしても、仕事内容を一から教えるのは大変、そもそも日本語はできるの?といった点も気になるのではないでしょうか。
どんな外国人が特定技能制度の対象となっているのか、この点については事前によく知っておきたいポイントだと思います。
そもそも特定技能制度は、人材不足の解消のために、一定の技能・日本語能力を持った外国人の受入れを促進するために設立されました。
したがって受け入れてから「即戦力」として期待できる技能や日本語でのコミュニケーション能力をあらかじめ持っている外国人が対象となっています。
冒頭で、飲食料品製造業分野で働く特定技能外国人は他の分野より圧倒的に多いとお伝えしましたが、実は技能実習生として業務をしていた外国人を引き続き特定技能外国人として雇用しているケースが多いです。
既にいる技能実習生を、引き続き特定技能外国人として雇用を継続できれば、人間関係も既にできており、技術等も習得しているので安心できますよね。
飲食料品の衛生的な取扱いや製造・加工作業に関する基本的な知識を持っている人
技能実習の経験者でない場合は、同分野で特定技能外国人として働こうとする外国人は、飲食料品製造業分野で定められている試験を合格していることが条件となっています。
この試験で、食品などを衛生的に取扱い基本的な知識を持っていること、飲食料品の製造・加工作業について、特段の育成・訓練を受けることなく、直ちにHACCP※に従って衛生管理に対応できる能力があるかみられます。
また日本語のコミュニケーション能力としても、試験で基本的な日本語を理解することができるレベルを証明しなければならないので、言葉の面も安心できますね。
※HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品等事業者が食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全行程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。
雇用の際に注意しなければならない点は?
では実際に特定技能外国人を雇用する際に、特に注意しなければならない点について説明します。
外国人の要件の確認
人選の際には、雇用したいと思う外国人が飲食料品製造業分野で定められた試験に合格しているか、もしくは技能実習2号を良好に修了している(修了予定)か等、要件を満たしているか確認しましょう。
雇用形態はフルタイムの直接雇用
また雇用形態は、直接雇用でなければなりません。派遣は認められていないので注意しましょう。
また「フルタイム」である必要があります。
このフルタイムとは、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であること、そして週の労働時間が30時間以上であることとされています。
おわりに
飲食料品製造業分野で特定技能外国人を雇用する場合のポイントをいくつかご説明しました。
大きなポイントとしては、特定技能外国人に任せられる仕事とそれをどこでするかという点がありましたね。
雇用を検討する際には、この点を事前にチェックしておきましょう。
飲食料品製造業分野で受入れができるのか、それとも違う分野に該当するのか、そもそも特定技能外国人受入れの対象とはならないのか、事業所の状況に応じてしっかり見極めておく必要があります。
当事務所では事業者様の個別の状況に応じて、最適な方法で特定技能外国人雇用のサポートを承っております。
特定技能飲食料品製造業分野についての要件調査、ビザ申請、支援委託、コンサル等のご依頼は下記のお問い合わせフォーム(電話またはメール)からご連絡ください。
ここでは飲食料品製造業分野で特定技能外国人を雇用する際のポイントを絞ってお伝えしましたが、もっと詳しく知りたい方は、「飲食料品製造業分野における特定技能ビザ人材活用」のページもご参照ください。
執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)