【工業製品製造業分野】特定技能2号試験の概要・受験対策

2023年8月31日に関係省令が改正され、特定技能 工業製品製造業分野でも特定技能2号になることができるようになりました。(一部業務区分を除く)

これによって、特定技能2号を希望する事業者や外国人が増えています。

とはいえ、特定技能2号になるための試験は難しく、まだまだ人数が少ないのが現状です。

・1号特定技能外国人を受入れ中だが、1号終了後も、特定技能2号として働いてもらいたい。

・特定技能2号には関心あるが、試験に合格できるか心配。

・何を勉強したらいいかわからない。受験対策が知りたい。

このように感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、工業製品製造業分野での特定機能2号試験の概要、受験対策など、特定技能2号になるための方法について、特定技能に精通した行政書士が。わかりやすく解説します。

※「工業製品製造業分野」に限定した内容です。他分野での特定技能2号試験については、別の記事で解説します。

特定技能2号とは

2019年4月に創設された「特定技能制度」には、特定技能1号と特定技能2号の2種類の在留資格が設定されています。

特定技能1号が合計で就労可能な通算在留期間が5年と上限が決まっているのに対して、特定技能2号では通算在留期間に上限がありません。在留期間更新許可申請で許可を得ることができれば、ずっと日本で就労することができます。

他にも特定技能2号には様々なメリットがあります。以下が特定技能2号の主なメリットです。

特定技能2号のメリット

  • 在留期間に上限がない(更新申請は必要)
  • 家族帯同が可能
  • 永住許可申請の要件である「10年以上本邦に在留」の在留に算入される。
  • 支援の義務がない(支援委託料がかからない)

特定技能2号になれる業務区分(工業製品製造業分野)

メリットについて確認したところで、次は特定技能2号になれる業務区分について見てみましょう。

このように魅力的な特定技能2号ではありますが、特定技能の全ての分野または業務区分で特定技能2号になれるわけではありません。

まず前提として、工業製品製造業分野の特定技能1号には、10種類の業務区分があります。

このうち、特定技能2号になれるのは、以下の3つの業務区分のみです。

  • 機械金属加工区分
  • 電気電子機器組立て区分
  • 金属表面処理区分
実務上のポイント!
工業製品製造業分野(旧「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」)では、以前は上記3つの業務区分だけが存在しました。 その後、2024年に下記7つの業務区分が追加されましたが、追加された業務区分には特定技能1号のみが設定されていて、特定技能2号は設定されていません。(2025年7月時点) したがって、下記7つの業務区分については、現時点では特定技能2号になることはできません。

・紙器・段ボール箱製造区分

・コンクリート製品製造区分

・RPF製造区分

・陶磁器製品製造区分

・印刷・製本区分

・紡織製品製造区分

・縫製区分

特定技能2号試験の概要(工業製品製造業分野)

工業製品製造業分野で特定技能2号になるためには、以下の1または2のルートのどちらかのルートの要件を満たす必要があります。

1 特定技能2号評価試験ルート

・「製造分野特定技能2号評価試験」合格

・「ビジネスキャリア検定3級」合格

・日本に拠点を持つ企業の製造業の現場での3年以上の実務経験

このルートを選択した場合、上記3項目全てを満たす必要があります。

 

2 技能検定ルート

・「技能検定1級」の合格

・日本に拠点を持つ企業の製造業の現場での3年以上の実務経験

このルートを選択した場合、上記2項目全てを満たす必要があります。

 

それぞれの内容について、詳しくみてゆきましょう。

特定技能2号評価試験ルート

特定技能2号評価試験ルートの特徴は、2種類の試験に合格する必要があることです。

次の2つの試験の両方に合格する必要があります。

1.製造分野特定技能2号評価試験

経済産業省が主催する、特定技能2号専用の試験です。日本で就業する意思のある外国人のみが受験することができ、日本人は受験することができません。

出題傾向は、複数の作業員への指示や監督、品質問題への対応、安全対策の立案など、管理者としての判断力が問われる内容です。出題内容は実務に即しており、現場の管理者として求められる能力を評価される点が特徴です。

試験は年1〜2回の頻度で実施され、CBT(Computer Based Testing)方式(画面上で解答する形式)が採用されています。

2.ビジネスキャリア検定3級

中央職業能力開発協会が実施する試験です。以前は受験資格として国籍は不問で日本人も外国人も共通の検定を受験することができましたが、2025年9月から、特定技能外国人専用の試験が実施されることとなりました。

これに伴って、回答方式は従前のマークシート方式からCBT方式に変更となります。

また、特定技能外国人専用のビジネスキャリア検定は、外国人のみが受験可能となります。(通常のビジネスキャリア検定は、従来通り日本人が受験できます)

ビジネスキャリア検定は1級から3級まであり、経理、労務管理、生産管理など様々な試験区分があります。このうち、特定技能2号になるために必要なのは以下の試験です。

  • 3級生産管理プランニング
  • 3級生産管理オペレーション

この検定では、製造現場の作業手順や品質管理、工程設計など、管理業務に必要な知識を中心に出題され、「指示された作業をこなす力」ではなく、「作業そのものを管理・改善する力」が問われます。

外国人材にとってはやや高難度ですが、企業が計画的に支援することで、受験対策は十分可能です。

3.「3年以上の実務経験」

上記2つの試験の他に、3年以上の実務経験が必要となります。

実務上のポイント!
特定技能2号評価試験ルートも技能検定ルートも、どちらも「3年以上の実務経験」が必要ですが、実務経験証明書の提出の時期が異なります。技能検定ルートは、試験合格後の入管へのビザ申請の時に実務経験証明書を提出するのに対して、特定技能2号評価試験ルートの場合は、ビジネスキャリア検定3級の申込時に提出する必要があります。 したがって、ビジネスキャリア検定3級の申込み時点で、実務経験が3年に達している必要があります。

技能検定ルート

技能検定1級の合格と、3年以上の実務経験によって、特定技能2号の技能水準を有するものと認められます。

特定技能2号評価試験ルートの試験の受験対象が外国人のみなのに対して、技能検定1級は、国籍を問わず誰でも受験することができます。

このルートの特徴は、試験区分の選択肢が多いことです。

特定技能2号評価試験は、従事する業務区分ごとに試験区分も決められていますが、技能検定1級は従事する業務区分に対して複数の試験区分を選択することができます。

例えば「機械金属加工」の業務区分だと、以下の試験区分が選択可能です。

業務区分:機械金属加工

選択可能な技能検定1級試験区分:鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、機械検査、機械保全、電気機器組立、プラスチック成形、塗装、工業包装、金属熱処理

 

試験問題は日本語で出題され、漢字にルビは付されません。試験の難易度は高いです。

すでに技能検定1級を保有している人材はこのルートを利用しますが、一般的には、特定技能2号評価試験ルートで特定技能2号になるケースが多いです。

実務経験の証明方法

特定技能2号に移行するためには、単に試験に合格するだけでなく、「3年以上の実務経験」が必要です。3年という年数は、特定技能1号での在籍期間や、それ以前の技能実習での就労期間を合算して数えることができます。

一方、実務経験を証明するためには、雇用主が作成する「実務経験証明書」が必要になります。実務経験証明書は所定の書式に基づき、外国人が実際に従事していた業務内容や期間を明記した書類で、現在もしくは過去に該当する外国人を雇用していた企業だけが作成可能です。他者による作成や、口頭証明は認められていません。

業務区分に対応する試験一覧表

評価試験ルートと技能検定ルートについて、それぞれの試験ごとに対応する試験区分を一覧表にしました。

業務区分 試験区分
評価試験ルート 技能検定ルート
機械金属加工

(特定技能2号)

製造分野特定技能2号評価試験(機械金属加工)

及び

ビジネス・キャリア検定3級(生産管理プランニング又は生産管理オペレーション)

※いずれか1つを選択可

技能検定1級(鋳造)

技能検定1級(鍛造)

技能検定1級(ダイカスト)

技能検定1級(機械加工)

技能検定1級(金属プレス加工)

技能検定1級(鉄工)

技能検定1級(工場板金)

技能検定1級(仕上げ)

技能検定1級(機械検査)

技能検定1級(機械保全)

技能検定1級(電気機器組立て)

技能検定1級(プラスチック成形)

技能検定1級(塗装)

技能検定1級(工業包装)

技能検定1級(金属熱処理)

電気電子機器組立

(特定技能2号)

製造分野特定技能2号評価試験

(電気電子機器組立て)

及び

ビジネス・キャリア検定3級

(生産管理プランニング

又は

生産管理オペレーション)

技能検定1級(機械加工)

技能検定1級(仕上げ)

技能検定1級(機械検査)

技能検定1級(機械保全)

技能検定1級(電子機器組立て)

技能検定1級(電気機器組立て)

技能検定1級(プリント配線板製造)

技能検定1級(プラスチック成形)

技能検定1級(工業包装)

金属表面処理

(特定技能2号)

製造分野特定技能2号評価試験(金属表面処理) 技能検定1級(めっき)

各試験の比較表

特定技能2号評価試験ルート、技能検定ルートそれぞれの試験の詳細を、比較表にしました。

評価試験ルート 技能検定1級ルート
ビジネス・キャリア検定 製造分野特定技能2号評価試験 技能検定 1級
試験区分 ・生産管理プランニング
・生産管理オペレーション
・機械金属加工区分
・電気電子機器組立て区分
・金属表面処理区分
・鋳造・鍛造・ダイカスト・機械加工・金属プレス加工・鉄工・工場板金・仕上げ・機械検査・機械保全・電気機器組立・プラスチック成形・塗装・金属熱処理etc
受験資格 2025年9月からは特定技能外国人向けの試験が実施。それに伴って外国人のみが受験可能となる。 ・原則3年以上の実務経験

・17歳以上の外国人(インドネシア国籍者は18歳以上)

実務経験7年以上または2級+実務2年以上

受験者の国籍は不問

試験方式 CBT(試験会場に設置されたパソコンを利用する試験) CBT(試験会場に設置されたパソコンを利用する試験、30問/80分程度) 学科(択一)+実技(数時間)
実施時期 年2回程度 年1〜2回 年1回
受験料(目安) 3級7,920円 15,000円 実技:約18,200円+学科:約3,100円 ※、都道府県によって異なる場合がある
申込方法 オンライン/郵送(個人・企業) PrometricのWebサイトでID作成→CBT予約 都道府県協会に申請書提出(郵送・窓口)

受験対策

特定技能2号試験について、大体のポイントはつかんでいただけたでしょうか。

次に、もっとも気になるであろう受験対策についてご説明いたします。

ここでは、工業製品製造業分野の特定技能2号評価試験とビジネスキャリア検定3級の受験対策について説明します。

特定技能2号評価試験の受験対策

特定技能2号評価試験には、「学習用参考資料」があり、公式ホームページからダウンロードすることができます。

学習用参考書(機械金属加工区分)https://www.sswm.go.jp/assets2/files/exam/ssw2/material_01.pdf

見て頂くとわかりますが、この学習用参考資料は、試験範囲を網羅した参考書というより、10問のサンプル問題と解答・解説が記載されたもので、これだけを勉強しても合格することは難しい印象です。

この学習用参考資料と併用して、独自に参考書・テキストを準備して学習することをお勧めします。

ビジネスキャリア検定3級の受験対策

ビジネスキャリア検定3級には、試験範囲を網羅した参考書や過去問題が公表されています。

これらの参考書や過去問題を繰り返し学習することで合格に近づくことができると思います。

ただし、参考書や過去問題は日本語で書かれています。受験者の国籍に合わせた各国の言語で書かれた参考書や過去問題があると、より学習しやすいところですが、現状ではまだそういう書籍はありません。(漢字にルビが付された参考書は市販されています。)

母国語に比べて日本語の参考書で学習する分時間がかかりますので、学習計画を立てて計画的に学習を進めてゆくことが、合格への近道だと思います。

まとめ

特定技能2号の試験対策として大切なポイントをまとめました。

  • 学習計画をしっかりと立てること。
  • 充分な学習時間を確保すること。

特定技能外国人を受入れている所属機関が協力することで、学習効果は高まります。

専門家のサービスなども活用しながら、早い段階から準備を進めてゆきましょう。

 

ご参考になれば幸いです。

 

執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367)

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