特定技能ビザの申請に必要な書類の中に、外国人本人の「健康診断個人票」があります。
外国人が病院で検査をして健康に異常がないかどうかを確認するための書類ですが、検査の結果に問題があると、健康診断個人票にその旨が記載されます。
この場合、ビザ申請の審査にはどう影響するのでしょうか?
この点について、特定技能の実務経験が豊富な行政書士が、わかりやすく回答します。
Q:健康診断個人票の「医師の診断」の欄に、「心電図異常 要再検査」と書かれていました。このように検査結果に異常があると、特定技能ビザは許可にならないのでしょうか?(製造業D社)
A:D社さん、ご質問ありがとうございます。検査結果に異常が出たとのこと、心配ですね。
ご本人の健康を考えれば、まずは病院できちんと再検査をするのが先決だと思いますが、ご質問の趣旨は、「ビザ申請に与える影響」だと思いますので、ここではビザ申請の観点にしぼってご説明します。
まずは、「健康診断個人票」について、簡単に整理しておきましょう。
「健康診断個人票」は、特定技能ビザ申請をする時に必要になる書類です。
特定技能ビザ申請には大きく分けて3つの種類があります。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
このうち、健康診断個人票が必要になるのは、1と2の申請です。3の申請には現時点では必要ありません。(入管はよく運用の変更をするので、今後はわかりませんが、、、)
なぜ健康診断個人票を提出しなくてはいけないのかというと、「特定技能外国人として業務をおこなうことが可能な健康状態にあるか」を確認するためです。
そういう目的なら、3の更新申請の時も提出させるべきだと思いますが、、、今回の論点とズレるので、ここでは置いておきます。
さて、健康診断個人票には、必ず記載しなくてはいけない検査項目があります。
これらの記載事項は、入管が用意している「参考様式第1−3号」に全て記載されています。
ですので、参考様式を印刷して病院に持って行き、検査結果を直接参考様式に記載してもらえばOKです。
参考様式を使わずに、病院独自の様式を使うことも可能です。
ただしその場合、参考様式1−3に記載されている検査項目を全て網羅している必要があります。
もし、1つでも項目が抜けていたら、再度書類を提出しなくてはいけません。
ですので、病院独自の様式を使うことも可能は可能ですが、間違いを防ぐためには、参考様式を使った方が確実です。
健康診断個人票を、外国の病院で発行する場合は、少し注意が必要です。
まず、病院が発行した健康診断個人票が、外国語のみで書かれている場合は、日本語の翻訳もあわせて提出する必要があります。
日本語と外国語が併記されている場合は、日本語翻訳は不要です。
日本語と外国語が併記されている参考様式が入管のホームページからダウンロードできますので、最初からそれを使うのが良いでしょう。
以上が、健康診断個人票についての概要です。ここまでは大丈夫でしょうか。
お待たせしました。いよいよD社さんのご質問の核心に入りましょう。
ご質問は、健康診断個人票に検査結果として「異常」とか「要再検査」とか記載された場合、特定技能ビザの申請にどういう影響があるのか、というご質問でしたね。
検査結果に「要再検査」と書かれている場合、原則として再検査をおこない、再検査の結果問題が無かったことの証明書を医師に発行してもらう必要があります。
しかし、それ以外にも方法はあります。
先ほどお伝えしたように、健康診断個人票を提出する趣旨は、「特定技能として業務をおこなことが可能な健康状態にあるか」を確認するためです。
ということは、裏を返せば、検査結果に異常があったとしても、再検査が必要であっても、「業務をおこなうことが可能」なら、なんら問題は無いわけです。
でも、「異常があるのに業務が可能」なんてことがあり得るのでしょうか。
あり得ます。
そもそも、どこかしら健康に不調がある人は珍しくありません。それでも問題なく仕事をしている人はたくさんいます。
健康のどこかに不調、異常があっても、それが業務に差し支えない程度であれば、特定技能の仕事はできます。
ですので、検査結果に異常や再検査必要と書かれていても、業務をおこなうことは可能である、ということを健康診断個人票で証明すれば、他に再検査の結果などを提出する必要はありません。
では、検査結果に異常や再検査必要の記載はあるけど、業務は可能であることを、どうやって証明すればいいのでしょうか。
簡単です。
健康診断個人票の備考欄に、医師が「就業可能」とか「就業には差し支えない」とか書けば証明になります。
逆に、健康診断個人票には「就業可能」とか「就業に差し支えない」などの記載が何も無く、ただ「○○異常」とか「要再検査」とだけ書かれている場合もあります。
この場合は、健康診断個人票とは別に、医師が発行した就業可能である証明書や、再検査をおこなって問題がなかったことを証明する書類の提出などが必要です。
D社さんの健康診断個人票に、もし「就業可能」とか書いていないようであれば、もう一度病院に行って就業可能な状態か確認し、可能な状態ならその旨を備考欄に追記してもらってください。
以上が、D社さんのご質問への回答になります。参考になれば幸いです。
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執筆者:行政書士 小澤道明(東京都行政書士会所属 登録番号:第16080367号)